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富士通の2026年度上期連結業績、Uvanceの牽引などで増収 前年の反動で当期利益は69%減
2026年10月30日 00:00
富士通株式会社は29日、2026年度上期(2026年4月~9月)連結業績を発表した。それによると、売上収益は前年同期比3.8%増の1兆6263億円、営業利益は同2.1%増の1076億円、調整後営業利益は同6.1%減の1139億円、税引前利益は同23.8%減の1180億円、当期利益は同68.5%減の825億円、調整後当期利益は前年並みの878億円となった。
前年同期には、新光電気工業の売却益(非継続事業からの当期利益)と、ゼネラルの売却益を計上しており、その反動で当期利益が大きく減少している。
富士通の磯部武司副社長 CFOは、「サービスソリューションにおいては、事業成長の要であるUvanceが牽引。エンタープライズでは製造業向け、パブリックは官公庁・自治体、防衛、金融、公営競技と幅広い領域で増収となった」と述べる。一方、「AIデリバリ開発基盤の拡充、FDEやコンサル強化などの投資費用が増加したほか、次世代CPUであるMONAKAや、量子コンピュータなどの先端テクノロジー開発への投資が増加している」と総括した。
セグメント別業績では、サービスソリューションの売上収益が前年同期比5.9%増の1兆1294億円、調整後営業利益は同11.8%増の1337億円となった。調整後営業利益率は0.6ポイント改善し、11.8%となっている。
サービスソリューションにおける採算性改善による利益増は69億円となり、2026年度上期のグロスマージン率は前年比0.6ポイント改善して37.7%となった。
だが、富士通では年間2ポイントの採算性改善を継続しており、上期の改善率は小幅にとどまったといえる。
磯部CFOは、「第2四半期に一過性のものを中心にマイナス要因が相次いだ」と説明。生産性向上(通常分)によるグロスマージン率は、1.6ポイント改善し、38.7%になっており、AIドリブンデリバリによる生産性向上の効果が表れていることを示す一方で、前年同期に高採算性のソフトウェアのロット商談があった反動や、上期に就業日数が少ない傾向があり、SEの稼働が低下したこと、国内および海外、パブリックの領域で複数の不採算プロジェクトが発生し、納期延伸やコスト悪化の見込みとなり、将来コストの引き当てを行ったことを、マイナスの理由に挙げた。これらにより、上期に100億円規模のネガティブ要因が発生することになったという。
「2026年度は、高採算性のソフトウェアのロット商談が下期にある。また、上期に就業日数が少なく、SEの稼働が低下したことで約20億円のマイナスが発生したが、これは下期の稼働日数の増加につながり、プラスに働くことになる。不採算案件もすでに対策済みで、これ以上の悪化はない。いずれも上期だけの要因であり、下期には解消あるいはプラス方向に転じる」と説明した。
なお、「生産性向上のアクセル」と位置づける「AIドリブンデリバリ」への取り組みについては、「AI活用開発のすそ野拡大はほぼ完了しており、現在は深掘りを進めているところである。個々の作業やタスクの効率化を目指すレベル1から、AIエージェントを活用して工程内の自動化を図るレベル2、マルチAIエージェントにより複数工程をまとめて自動化するレベル3へと移行を進めている。大規模で、高い効果が見込まれるプロジェクトを『トップガンプロジェクト』として選定し、AI活用の高度人材を集中的に投下している。2026年度下期以降もAI活用の高度化を進めることで、生産性向上効果を持続的に拡大することを目論んでいる」とした。
サービスソリューションのうち、Uvanceの売上収益は前年同期比26.5%増の3934億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は、前年同期の29%から35%に拡大した。2026年度通期では前年比18%増の8400億円を目指しているが、「これを上回る一段の伸長を期待している」と述べた。
内訳は、Verticalの売上収益が前年同期比26%増の1541億円(前年同期実績は1226億円)、Horizontalの売上収益は同27%増の2393億円(同1883億円)。また、Uvanceの受注高は、前年同期比22%増の3887億円となった。
「2025年度にリリースしたUvance for FinanceやUvance for Retailなど好調で、力強く伸長した」という。
また、「UvanceのVerticalにおける利益率は約40%。Uvance for Financeも40%程度である。SIとほぼ同等になってきた。だが、利益率は、オファリングによって変動があり、Dynamic SCMでは40%後半になる。30~50%という振れ幅の中にあるのが実態だ。いまは、採算性を押し上げるというよりも、良質なビジネスを増やし、売り上げを拡大するエンジンになっている。今後は、Uvanceの拡大によって、売り上げも採算性も高めていく必要がある。リカーリングを増やすことで、利益率も高めることができる」などと述べた。
モダナイゼーションの売上収益は前年同期比20.3%増の1941億円となった。そのうち、Uvanceとの重複部分を除いたサービスでは、同2.4%増の1126億円となった。受注高は同56%増の2399億円となっている。2026年度通期では前年比20%増の4700億円を目指している。「通期計画に向けてオントラックで進捗している。AIドリブンのモダナイゼーションを拡大し、さらなる品質向上や移行期間の短縮を図ることで、自社モダナイゼーションにとどまることなく、ビジネス拡大を実現する」と語った。
サービスソリューションのサブセグメント別内訳では、エンタープライズ(自動車、製造、流通、小売など)の売上収益は前年同期比7.3%増の4399億円、調整後営業利益は同3.0%増の423億円。そのうち、国内の売上収益は同4.1%増の3470億円、海外の売上収益は同21.2%増の929億円となった。
「自動車や組立、化学などの製造分野を中心に伸長した。ブレインパッドやGK Softwareの統合効果も寄与している」とする一方、「エンタープライズでは投資を増やしている。FDEの強化や、ブレインパッドでのデータサイエンティストの育成などを進めている」と語った。
パブリック(官公庁、自治体、防衛、金融、ヘルスケアなど)の売上収益は前年同期比5.1%増の6894億円、調整後営業利益は同16.5%増の914億円。そのうち、国内の売上収益は同8.8%増の5025億円、海外の売上収益は同3.9%減の1869億円となった。「国内は官公庁・自治体、防衛、金融、公営競技と、ほぼ全方位で増収になった」という。
国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年同期比9%増となった。そのうち、契約期間が複数年に及び、1件あたり25億円以上の大型商談受注額を直近12カ月の引き渡し額に置き換えた「引き渡しベース」では同3%増となった。「DX関連を中心に、幅広い業種で、デマンドの拡大傾向が続いている」としている。
分野別では、エンタープライズが前年同期比7%増、引き渡しベースでも同5%増となった。そのうち、製造(自動車、組立、化学ほか)が同11%増となり、流通(小売、商社、食品ほか)が同3%増となった。「エンタープライズでは第2四半期に大型商談を獲得した。製造分野では広い範囲でデマンドがあり、DXやモダナイゼーションに対する需要が高い。中でもAI組み込み型の付加価値が高い案件が増加している。また、次世代システム基盤として、ソブリンクラウドの受注があった」という。
パブリックは、前年同期比10%増、引き渡しベースでは2%増。そのうち、金融(銀行、証券、保険ほか)は同5%減、パブリック&ヘルスケアは同4%増、ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティは、同43%増となっている。「金融は、前年同期のメガバンク向け基幹システム商談の反動が影響した。自治体システム標準化や大学向け教育DX、AI組み込んだ医療DXなどのデマンドが高い。また、防衛関連を中心に大型案件を獲得した」という。
なお、売上収益および2026年売上予定の下期受注残高の合計額は1兆5572億円となっており、通期見通しの1兆9600億円に対して、79%をカバー。残りの要獲得額は4027億円となる。下期に獲得確度が高い商談パイプラインの総額は7000億円強であり、「確実なクロージングにより、計画達成につなげる」と意気込んだ。
ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比5.7%増の4491億円、調整後営業利益は同64.0%減の45億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同5.4%増の3652億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同7.2%増の838億円となった。
「システムプロダクトは、海外向けの所要増に加えて、為替影響もあり伸長したが、メモリなどの部材コスト上昇の影響により減益となった。約80%は前年度に受注済みの案件であり、契約時点以降のコスト上昇分を遡及して売値に転嫁しきることができなかった。2026年度の受注からは、直近のコスト変動に合わせて価格を決定できる契約に変更している。今後、部材コスト上昇による影響はなくなる。下期は87%の案件が、2026年度の新規契約になると見ている」とした。
ネットワークプロダクトは、国内向け基地局が増収になったという。
また、下期の需要に対応するために、メモリやCPUなどの戦略在庫を積み増していることも明らかにした。
「お客さまからは、なにをやるにしても、コンピューティング基盤が必要であるとの声があり、サーバーの価格が高いという懸念よりも、早く手に入れたいというデマンドが強い。富士通に求められているのは、部材を早く集め、たくさんのサーバーを供給するというスピードである」とした。
ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比20.6%減の898億円、調整後営業利益は同38.3%減の134億円となった。前年にあったWindows 10更新需要の反動が影響した。
なお、消去・全社は、調整後営業利益が前年同期から51億円の費用増となり、マイナス377億円となった。次世代CPUである「FUJITSU-MONAKA」、フィジカルAI、量子コンピュータなどの先端テクノロジー開発投資の増加が影響している。
通期業績見通しは据え置き
一方で、2026年度(2026年4月~2027年3月)の業績見通しは据え置いた。期初計画通り、売上収益は前年比0.2%増の3兆5100億円、営業利益は同19.1%増の4150億円、調整後営業利益は同8.8%増の4250億円、当期純利益が同31.0%減の3100億円、調整後当期利益は同7.3%増の3200億円とした。
「過去最高益の更新に向けて、しっかりと歩んでいく」と述べた。
2026年度下期以降に向けた4つのトピックス
2026年度下期以降に向けたトピックスとして、4つのポイントについて触れた。
ひとめは、サイバーセキュリティである。2026年8月には、サイバー防衛ライフサイクルを実現するサイバーセキュリティ戦略を策定したほか、2026年10月に、サイバー防衛能力の向上を支援するソリューションの提供開始を発表。「富士通がカスタマゼロとして蓄積してきた知見をもとに、研究開発、コンサル、システム構築、運用監視、インシデント対応まで一貫して提供する。発表したソリューションは、実践知や先端テクノロジーをもとにしたものである。サイバー防衛能力と、サイバーレジリエンスの継続的な向上に貢献する」と語った。
なお、富士通では、サイバーセキュリティ関連ビジネスの年間事業規模が約600億円となっていることを公表。「前年度は約400億円であり、今年度は1.5倍の受注になっている。商談件数も増えており、第2四半期は前年度の約2倍となる1000件程度に達している」とした。
2つめは「FUJITSU-MONAKA」である。AI時代のソブリニティを支える高性能、省電力CPUと位置づけており、「コンフィデンシャルコンピューティングの機能を合わせ持つことで、ハードウェアレベルから信頼性を支えるコンピューティング基盤を実現する」とした。
2026年8月末から、FUJITSU-MONAKAを搭載したテストサーバーの貸し出しを開始しており、国内外の約45社と先行検証を進めているところだ。
正式リリースは2026年11月の予定であり、「いよいよマーケットに投入する。提供形態は、プロセッサ単体とサーバーに組み込んだものになる。日本だけでなく、米国、欧州、APACにも展開する」と述べた。
FUJITSU-MONAKAは2026年度第4四半期から順次提供を開始し、Fujitsu MONAKA Serverは2027年度第1四半期から順次出荷を開始する。
また富士通では、2029年度には富岳NEXTに搭載予定のFUJITSU-MONAKA-Xを、2031年度には最先端プロセスを採用したFUJITSU-MONAKA-XXをそれぞれ投入するロードマップを公表しており、CPUの売上目標は、2027年度に350億円、2027年度から2030年度までの累計で2500億円を計画している。
「独自技術により、将来のAIモデルを見据えた高いコスト性能比を実現し、ソブリンプラットフォームの進化を支える。FUJITSU-MONAKAは、チップも、サーバーも新たな事業の柱になり、チップの利益率では30~40%程度を期待し、サーバーではもう少し高い利益率を想定している。引き合いも多く、2027年度の350億円の達成に向けた勝算もある。2030年度までの2500億円について、上回ることができるのではないという議論も出ている」とし、「富士通がプロセッサビジネスにもう一度入ってきた。このビジネスを持続的にしっかりと育てていく覚悟を持って取り組んでいる。必ず成功させなくてはいけない事業である」と、事業成長に強い意志を示した。
3つめが、フィジカルAIである。
2026年7月に、ファナック、安川電機、川崎重工業と、フィジカルAIの早期社会実装に向けた事業検討を開始。マルチロボットの協調制御基盤となる「Fujitsu Kozuchi Physical OS」のプロトタイプを活用したAIファクトリーの実装を、石川県の富士通ITプロダクツ笠島工場で推進していることを紹介。「フィジカルAIによって、現実の空間にもAIの有効性を広げることになる。フィジカルAIを実践し、開発から製造までを一貫管理することで、ソブリニティのあるAIプラットフォームを提供する」と述べた。
Fujitsu Kozuchi Physical OSは、笠島工場で得た知見を活かし、2026年度下期にV1.0として協業各社とのモデルプロジェクトに実装。このフィードバックを受けて、2027年度にはV2.0をリリースする予定だ。
最後が、量子コンピューティングである。富士通では、量子コンピュータとHPC、AIを融合したハイブリッド量子コンピューティングプラットフォームの構築を進めており、複数方式の量子コンピュータの開発に取り組んでいる。
超伝導方式は、2026年中に、世界最大級の1024量子ビットの量子コンピュータを稼働する予定であるほか、ダイヤモンドスピン方式では、プロトタイプを開発済みであり、中性原子型では、Yaqumoと実機による量子計算アーキテクチャーや基本ソフトウェアの検証を開始している。さらに、Open Quantum Application Research Packageを、オープンソースソフトウェアとして一般公開した例も示した。
「特定の方式に限定しない技術開発の推進と、量子技術の社会実装を加速させるための取り組みを進めている。今後、ソブリニティを兼ね備えたセキュアなコンピューティング基盤の構築を進め、金融、創薬、材料、防衛など、幅広い産業に提供していく」とした。
また、磯部CFOは、「ここで紹介した4つのトピックスは、明日の事業に直接つながる段階にある。アプリケーションを組み合わせることで、ソブリンオーケストレーションを実現。社会に信頼できる価値を提供し、富士通の持続的な成長につなげる」と語った。














