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「AIによってサイバー攻撃が民主化され、産業化されている」――チェック・ポイントが警告
2026年7月31日 06:00
チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社(以下、チェック・ポイント)は29日、Check Point Software Technologies Ltd.の脅威インテリジェンス部門であるCheck Point Research(CPR)が発表した「2026年版AIセキュリティレポート」をベースに、生成AI時代のセキュリティ状況について説明会を開催した。
チェック・ポイント 日本法人社長の佐賀文宣氏は、「従来の高度なサイバー攻撃には専門的な知見が不可欠だったが、専門性の壁が低くなる大きな変化が起きている」と指摘する。攻撃者が生成AIを活用することで、文章作成やプログラム開発、事前調査などの支援を即座に得られるようになり、その結果、少人数でも大規模な攻撃を即座に繰り返すことが可能になったというのだ。
また、佐賀氏は「攻撃が民主化されているだけでなく、標準化され、分業化され、自動化されている。これはサイバー犯罪の産業化だ」と強調する。フィッシングやマルウェア、脆弱性の悪用といった攻撃手法そのものが変化したわけではなく、ソーシャルエンジニアリングや攻撃ツールの開発、リアルタイムの支援など、攻撃ライフサイクル全体に生成AIが組み込まれたことで生産性が爆発的に上がったという。
「攻撃者の生産性がけた違いに上がったことで、サイバー犯罪の参入障壁が劇的に下がっている。守る側が手作業で対応している間に、攻撃側は数千~数万の攻撃を同時に仕掛けられる。この非対称性を人海戦術で乗り越えるのはもう不可能だ」と佐賀氏は語り、従来の人的努力に依存した防御からの脱却を呼びかけた。
2026年版AIセキュリティレポートによると、AIは単なる攻撃の補佐ツールにとどまらず、自ら攻撃を主導する実行役へと進化を遂げている。システムへ侵入してコマンドを実行するだけでなく、盗み出したデータの分析、次の攻撃指示、さらには被害者との交渉に至るまでの一連のプロセスが、ほぼ人手を介さずに自動実行された事例も確認されているという。
攻撃と通常業務との境界も不鮮明になっている。佐賀氏は「自然な日本語で書かれた取引先からのメールや、オンライン会議に出席する上司や同僚のフェイク映像、採用活動における求職者の偽プロフィールなど、単体のコンテンツだけでは本物かどうか見破れなくなっている」と警告。今後はコンテンツ単体ではなく、「誰がどこからどんな権限を使って何をしているか」という行動全体のコンテキストを見て判断するセキュリティ運用が不可欠だとした。
さらに佐賀氏は、生成AI時代のセキュリティリスクとして、攻撃の巧妙化や高速化に加え、AIモデルやエージェントの動く環境そのものが脆弱性を抱えていること、そして社員が無許可でAIを利用するシャドーAIも挙げ、守るべき領域が急速に広がっている状況を指摘した。
攻撃者よりも先に自社製品を検証
こうした新時代に対応するため、チェック・ポイントでは「フロンティアAIモデル準備プログラム」を推進している。その中核となるのが、自社製品やコードを大規模に検査する独自のテストシステム「BLAST(Business Logic Application Security Testing)」だ。佐賀氏によるとBLASTは、単にコードの間違いを探すだけではなく、複数の製品やサービスをまたいでデータの流れや認証の権限、サービス間の信頼関係を分析し、実際に攻撃される危険度や被害の影響度を見極め、優先順位付けして修正するという。
BLASTにより、チェック・ポイントの製品でも脆弱性の数が昨年より多く見つかったと佐賀氏。この点について同氏は、「発見される脆弱性の数自体よりも、見つかった問題に対してどれだけ早く、安全に修復対応を提供できるかという、対応の質とスピードの方がはるかに重要だ」としている。
佐賀氏は、セキュリティの歴史を3つのパラダイムに分類して解説する。第1のパラダイムが、社内と社外を分けて境界線を守る境界型防御で、第2のパラダイムが、アクセスごとに認証と認可を繰り返すゼロトラストだ。そして現在は第3のパラダイムとして、マシンスピードの脅威に対しマシンスピードで対応する自律防衛型へとシフトしているという。
「防衛も人手から自律化へと進化する必要があるということだ」と佐賀氏は強調する。ゼロトラストの概念は今後も重要であるとしつつも、「アクセス権限の管理だけでは、AIエージェントが不正な指示にだまされて実行してしまうような攻撃を防ぎきれない。何を実行するのかというアウトプットまでリアルタイムで守り、人間が定めた方針に従ってシステムがマシンスピードで防御を実行する自律型防衛へのシフトが必要だ」と主張した。
基礎を徹底し、新時代に対応する
佐賀氏は「新しい脅威が登場しても、資産の把握やパッチ適用、アクセス権限の最小化といったセキュリティの基本が変わるわけではない。変わるべきなのはその運用サイクルだ」と話す。年に1回の資産把握や月1回のパッチ適用といった旧来の運用では不十分で、「大量に生まれるAIエージェントも含め、継続的に把握できるような体制が求められる。また、パッチはより短いサイクルで適用し、見つかった脆弱性には優先順位を付け、時間がかかる場合は仮想パッチなどでタイムリーに対応することも必要だ」としている。
最後に佐賀氏は、AIセキュリティへの取り組みは情報システム部だけの問題ではなく、経営課題であるとした。
「AIを事業に生かしていくためには、AIを導入することによる売上増や生産性向上とともに、新たに登場したリスクを適切に管理することも経営指標としてとらえなくてはならない。経営者自身がゲームに参加し、小さく試して効果を測りながらセキュリティを組み込んでいくサイクルを回すことが、経営者にも求められている」(佐賀氏)。




