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Salesforce、年次イベント「Dreamforce」において新UX層「AIforce」やNVIDIAとの協業によるCRM向けAIモデル「Koa」を発表
2026年9月16日 00:00
Salesforceは、9月15日から9月17日までの3日間にわたり、米国カリフォルニア州サンフランシスコにおいて同社の年次イベント「Dreamforce」を開催している。Dreamforceは、例年同社の新戦略や新製品などが発表される場として活用されており、本年もそうした戦略や製品などが多数発表される見通しだ。
この開催に先立って、同社は9月15日早朝(米国時間)に報道発表を行い、同社の新戦略を象徴する新製品となる「AIforce」(エーアイフォース)を発表した。AIforceは、従来Salesforce自身が提供してきたユーザーインターフェイスをAIに置きかえるもので、同社が提供するSlackforce、Agentforce Coworkerなどのエージェント型AIだけでなく、Anthropicとの協業で実現した「Claudeforce」なども利用できる。SlackやAnthropicのユーザーやAIエージェントなどが、Salesforceのアプリケーションやデータなどにシームレスにアクセスできるようになるという。
また、同社はNVIDIAとの協業により、NVIDIAが提供するオープンソースの推論モデル「Nemotron」をベースに、CRM向けリーズニングモデル「Koa(コア)」を提供していく計画を明らかにした。
CRMからスタートしたSalesforce、Slackの買収などで規模もソリューションも拡大
Salesforceは、1999年に米国で現CEOのマーク・ベニオフ氏らにより設立されたエンタープライズ向けソフトウェアサービス企業であり、クラウドベースのCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)を提供する企業として成長してきた。
かつては「salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)」の名称で運営されてきたが、2022年に現社名となる「Salesforce(セールスフォース)」へ変更し、現在に至る。日本法人は(本社の)設立直後である2000年に設立され、株式会社セールスフォース・ジャパンとして東京にオフィスを構えて運営されている。
直近の決算報告書(会計年度2027年第2四半期、26年5月~7月期)では、売上高が113億ドル(直近に買収したInformaticaの4億5600万ドルを含む)で、昨年同時期と比べて11%の成長となっている。会計年度2027年度時点での従業員数は8万3000人超、IDCによれば、AI CRM市場で13年間市場トップのシェアを継続しており、エンタープライズ向けITのサービスを提供する企業としてはトップベンダーの1つだ。
Salesforceの強みが祖業でもあるCRMであることは説明するまでもない。営業管理システムのAgentforce Sales(従来はSales Cloudと呼ばれていたサービス)、顧客サービスシステムのAgentforce Service(従来はService Cloudと呼ばれていたサービス)、EC管理システムのAgentforce Commerce(従来はCommerce Cloudと呼ばれていたサービス)など、企業と顧客を結びつけるCRMの機能を、さまざまな産業向けに提供している。
近年のSalesforceは、さまざまな企業を買収することで、CRMだけでなくエンタープライズ向けのITサービスを拡充してきた。最もよく知られているのは、2020年末に発表され、2021年半ばに買収が完了したSlack Technologies社(以下、Slack)だ。チャットツールとして急成長してきたSlackは、エンタープライズグレードのコミュニケーションツールとして評価されてきた。このSlackは、今も従来のSlack(すなわちコミュニケーションツール)としても利用されているが、ここ数年、SlackとSalesforceの統合が進められてきたことで、エンタープライズ企業がSalesforceのサービスを利用する時の新しい「入り口」としても利活用が進んでいる。
「確率論的」だったAIアプリに「決定論的」なエンタープライズIT基盤を提供する「Headless 360」
ここ数年のSalesforceが力を入れている事業が、従来の事業のAI化だ。その代表的な取り組みとして、AIエージェントの開発・実行環境となる「Agentforce」の導入、AI機能が多数導入されたSlack、2019年に買収したBIツールTableauのAI化などがあり、こうした取り組みが続けられてきた。
また、先ほど紹介した通りSalesforceの祖業であるCRMも「Agentforce Sales」「Agentforce Service」「Agentforce Commerce」の名称に変更されるなど、こちらでもAI化が訴求されている。こうしたCRMなどのサービスは「Customer 360」という名称に統合されており、SaaSとして単体での利用ももちろん可能だが、SalesforceのAIサービスの1ピースとしても利用できるという形になっている。
そして近年では、CDP(Customer Data Platform)のためのデータレイクである「Data 360」も導入されている。これらに、近年Salesforceが買収したMuleSoftによるオーケストレーション機能、Informaticaによるデータマネジメント機能が有機的に統合され、データ管理をより高品質に、高い安全性で行えるようになっているというのがSalesforceの主張だ。
SalesforceはこうしたAIサービス(Agentforce、Slack、Tableau)、Agentforce SalesやAgentforce Serviceなどから構成されるCustomer 360、そしてData 360などを1つの統合的な基盤として提供していくと説明。その名称を「Headless 360」として訴求している。このようなAIに最適なデータ管理の環境や、各種サービスなどを統合的に提供することで、顧客が安心してAIを実行できる環境を実現するのがHeadless 360だ。
Salesforceは、AIアプリが登場したことにより、ITサービスは決定論的なサービス(同じ指示をすれば同じ答えが返ってくるサービス)と、確率論的なサービス(同じ指示をしても同じ答えが返ってくるとは限らないサービス)にそれぞれ分類しており、同社のHeadless 360は「決定論的サービス」であり、OpenAIのChatGPTや同社のAIチャットボットになるSlackbotのようなAIアプリケーションを「確率論的サービス」と分類。エンタープライズIT環境下で、そうした確率論的なサービスを入り口にした場合でも、決定論的に利用できるようにHeadless 360が必要だと説明している。
Claude、Slackforce、Agentforce Coworkerを決定論的なITサービスとして利用できるAIforce
今回のDreamforceにおいてSalesforceが発表した「AIforce」は、同社が定義するところの「確率論的なサービス」となる。そして、そのAIforceの下側ではHeadless 360が動作しており、AIforceからリクエストを受けると、エンタープライズが所有するデータなどから「決定論的な答え」を導き出し、AIforceに返せるようにする。つまり、AIアプリを「決定論的」に運用することが可能になる。
AIforceでは、Anthropicとの協業として発表された「Claudeforce」(すでに8月末に発表済み)、従来はSlackbotと呼ばれていたSlackのAI機能「Slackforce」、そしてSalesforceがすでに提供しているエージェント型AI「Agentforce Coworker」の3つが、新しいSalesforceの入り口(ユーザーインターフェイス:UI)となる。
例えばClaudeforceを利用する場合には、ClaudeのUI(プロンプトや音声認識など)を利用してSalesforceのエージェントに答えを求めると、どのユーザーに対してもHeadless 360が決定論的な同じ答えを返せるようにする。
このように、AIアプリにITが安定して決定論的に使える機能を付加する、それがAIforceの狙いと言える。これまで「AIは確率論的で安心して利用できない」と考えていたエンタープライズIT担当者にとっては、注目に値する発表だといえる。
なお、発表時点のAIforceで使えるのは、Claudeforce、Slackforce、Agentforce Coworkerとなっているが、今後、ほかのAIベンダーのAIアプリがそこに含まれるようになる可能性も高い。
今回のDreamforceには、OpenAIのサム・アルトマンCEOがゲストとして登壇し、マーク・ベニオフCEOと対談する予定が明らかにされており、そこで何らかの追加発表が行われる可能性はあるだろう。
また、SalesforceはNVIDIAとの提携で、CRM向けリーズニング推論モデル「Koa」を開発し、間もなく提供を開始することを明らかにした。KoaはNVIDIAの推論モデル「Nemotron」をベースに開発されたCRM特化型AI推論モデルで、Salesforceが27年間のCRM事業で培ったノウハウが学習データ(顧客データは利用されず、合成データのみを利用)として利用されており、実社会の業務を反映した推論モデルになっているという。
すでにKoaは、Salesforce自身のAIエージェントやSlackで活用されており、今後顧客企業でのクローズドベータや、政府向け・規制産業向けの製品にも展開される予定。Koaは2026年冬から米国リージョンで展開される予定となっている。
ほかにも、Amazon Web Services(AWS)とSalesforceの協業(SalesforceデータのAmazon Quickへの統合やSalesforceとAWSの間でゼロコピーのデータアクセスの実現)、Google CloudとSalesforceの協業(Google Cloud上でHyperforceの展開、Gemini EnterpriseとSalesforceのエージェントが相互に接続、GeminiにSalesforceのデータと機能を直接統合)なども合わせて発表されている。
なお、Dreamforceのメイン基調講演は、マーク・ベニオフCEOなどのSalesforce幹部が登壇し、現地時間9月15日 午前10時(日本時間9月16日 午前2時)から開催される予定。そこでは、前出のAIforceやKoaなどSalesforceの新しいサービスに関する詳細な説明やデモなどが行われる予定だ。












