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日本の生成AI活用、9割普及も効果は足踏み――PwC Japan調査

 PwC Japanグループは10日、同社が実施した「生成AIに関する実態調査2026年 春 6カ国比較」について説明会を開催した。

 同調査は、PwC Japanグループが2023年5月より定期的に実施している。今回は、これまでの日本、米国、英国、ドイツ、中国に加えて韓国も調査対象とし、生成AIの活用や効果の状況を比較した。各国での調査人数は、日本が932人、米国が670人、英国が412人、中国が412人、ドイツが309人、韓国が309人。売上高500億円(日本円換算)以上の企業や組織に所属する課長職以上の従業員のうち、生成AIの導入に何らかの形で関与している人を対象に調査を行った。

 PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナーの三善心平氏はまず、現在の生成AI活用のフェーズについて、「LLM自体の性能向上に加え、単純なアシスタントというより自律的に業務を遂行するAIエージェントが登場するなど、技術革新が起きている」と指摘。また、企業戦略の観点からも「AIは経営資源のひとつで、人間の従業員と平等なワークフォースと考えられており、それをどう企業戦略に組み込んでいくかというレイヤーにまで話題が及んでいる」と述べた。

PwCコンサルティング 執行役員 パートナー 三善心平氏

 今回の調査では、生成AIに対する「脅威」と「チャンス」の捉え方で国ごとの違いが明らかになった。三善氏は「日本はビジネスの存在意義が失われるのではないかという脅威の方向に、昨年から大きく動いている」と説明。一方、米国や英国は「根本変革のチャンス」と捉える方向に大きくシフトしており、約50%の企業が業界変革のチャンスとしてポジティブに受け止めているという。

生成AI活用によるビジネス消失脅威・根本変革チャンスの認識

 日本企業における生成AIの導入自体は大きく進歩している。自社の推進度合いにおいて「活用中・推進中」と答えた割合は87%に達し、「未着手・断念」は4%と昨年より半減した。三善氏は、「2023年の春は8割の企業が未着手だった状態から段階的に増え、今や9割近くの企業が何らかの形でビジネスに活用するようになった」と評価する。

生成AI活用の推進度合い

 その一方で、「効果が出ているか」という問いに対しては、期待を大きく上回る効果を実感している企業の割合はこの3年間でほとんど変わらないという。

 特に他国と比較した場合、日本は「期待を大きく上回った」と答えた割合が著しく低く、「まだ効果を評価できていない」と答えた企業の割合が1カ国だけ突出して高い。「9割方が使っているが効果があまり出ていない、あるいは評価すらできていないという比率が高いのが日本の現状だ」と、三善氏は明かす。

生成AIの活用・推進状況と期待効果の発現状況

 今回から新たに追加された「生成AIで得た成果を従業員や顧客に還元しているか」という調査においても、日本の課題が浮き彫りになった。生成AIによる効果を、給与の引き上げなどで従業員に還元したり、商品・サービスの値下げといった形で顧客に還元したりといった「財務的還元」につなげている割合は、日本が40%と6カ国中最も低く、7割を超える米国や英国との差が顕著だった。また、「還元を一切実施していない」と答えた割合も19%と突出して高かった。

生成AI活用・推進により創出した効果の還元状況

 さらに、生成AIと物理的な仕組みを組み合わせる「フィジカルAI」の理解と導入状況についても、日本は6カ国中で最も低い結果となった。導入の障壁について三善氏は、「想定外の動きをした結果、人や設備に損害や危害を加えるリスクを、日本はいちばん強く感じている」と説明している。

フィジカルAIに対する理解と導入状況

「期待以上」と「期待未満」を分ける分岐点

 日本企業の中でも期待以上に効果を出している企業と、期待未満にとどまっている企業には、どのような差があるのだろうか。PwCコンサルティング マネージャーの塩原翔太氏は、「期待未満の企業は目の前の業務効率化を目指して生成AIを局所的なツールとして使うのに対し、期待以上の企業は創造性や意思決定といった領域までAIに代替させる意識が強い」と指摘した。

期待を超える効果創出の分岐点

 推進体制でも、「期待未満の企業はIT部門が主導して小規模な改善を点々と実行する傾向にあるが、期待以上の企業はCAIO(最高AI責任者)などのトップを配置して組織横断的にリードする体制を構築している」と塩原氏。

 さらには活用の土台として、「期待以上の企業は全社的な組織連携や業務プロセスの可視化、生成AIに適したデータの整備、複数モデルの選択環境などを整えている」とし、AIガバナンスの面でも「不十分なリスク分析から挑戦を避けがちな期待未満の企業に対し、期待以上の企業は適切なリスク分析と評価に基づく攻めのガバナンスができている」(塩原氏)としている。

PwCコンサルティング マネージャー 塩原翔太氏

 最後に三善氏は、日本企業が今後取るべきアクションとして、AI活用ができる状態をより強固に整えること(AI-Readiness)、ユースケースを評価すること、そして人間への還元を起点に変革のサイクルを回し続けることを挙げた。

 「日本の典型的な失敗パターンは、価値達成の基準として従業員の利用率だけを掲げ、その後の業務がどのように変わって財務的還元にどうつながったかという指標を持たないこと。また、漠然とした恐れから、毒にも薬にもならないユースケースとなる恐れもあるため、リスクを可視化して評価する設計が不可欠だ」と三善氏は指摘。さらに同氏は、単にデータを貯めるだけでなく、業務プロセスの可視化も含めてAIを適用できる土台を整えることが重要だとした。