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富士通が2025年度上期連結業績を発表、全セグメントで増益を達成
ブレインパッドの株式公開買い付けを発表
2025年10月31日 00:00
富士通株式会社は30日、2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績を発表した。それによると、売上収益が前年同期比0.9%減の1兆5665億円、営業利益は同145.0%増の1053億円、調整後営業利益は同83.8%増の1213億円、税引前利益が同257.3%増の1549億円、当期純利益が同654.8%増の2620億円となった。
富士通の磯部武司副社長 CFOは、「計画に対しては若干のプラスであり、調整後営業利益、当期利益は、上期として過去最高益を更新した。調整後営業利益の進捗率は前年同期の22%に対して、34%となっている。全セグメントで増益となっており、主力のサービスソリューションは、力強い増収増益になっている。また、富士通ゼネラル、新光電気の売却益も計上している」と総括した。
セグメント別の業績
セグメント別業績では、サービスソリューションの売上収益が前年同期比4.8%増の1兆665億円、調整後営業利益は前年同期から309億円増の1196億円となった。調整後営業利益率は11.2%となっている。そのうち、国内の売上収益は前年同期比7.2%増の7952億円、海外の売上収益は同1.6%減の2712億円。
「サービスソリューションは増収増益であり、採算性も計画通りに改善が進んでいる。事業再編などを除く実質ベースでは、売上収益は前年同期比6.4%増となっている。特に国内ビジネスは、DXやモダナイゼーションに対するデマンドが引き続き強く、国内の売上収益は実質ベースでは前年同期比8.9%増になっている」とした。
サービスソリューションのうち、Fujitsu Uvanceの売上収益は前年同期比54.9%増の3110億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は29%(前年同期は20%)へと大きく拡大した。
内訳は、Verticalの売上収益が前年同期比94%増の1226億円(前年同期実績は632億円)、Horizontalの売上収益は同37%増の1883億円(同1375億円)となった。また、Fujitsu Uvanceの受注高は、同43%増の3186億円となった。
「Uvanceの通期売上計画は7000億円であり、上期までの進捗率は44%と半分には届いていない。だが伸長率は、年間計画の45%増を上回る水準となっており、目標達成に向けて順調な軌道に乗っている」とした。
また、モダナイゼーションの売上収益は同33.0%増の1101億円となった。受注高は前年同期比3%増の1541億円となっている。「受注高は、前年同期の高い水準をさらに上回るものとなっており、計画通りである」という。
サービスソリューションのサブセグメント別内訳では、グローバルソリューションの売上収益は前年同期比1.1%増の2493億円、調整後営業利益は前年同期の60億円の赤字から38億円に黒字転換。リージョンズ(Japan)は、売上収益が前年同期比4.2%増の6077億円、調整後営業利益は同8.2%増の989億円。リージョンズ(海外)の売上収益は同1.6%減の2712億円、調整後営業利益は同413.6%増の167億円となった。
「グローバルソリューションでは、Uvanceオファリングを中心に増収となっている。オファリングごとに開発投資の見極めも進めており、利益率は低いが、利益改善にはつながっている。オファリング開発やモダナイナレッジセンターの拡充などへの投資も続ける。リージョンズ(Japan)は、DXビジネスや基幹システム刷新などのデマンドが拡大している。コンサルなどへの成長投資も実施している。リージョンズ(海外)は、事業ポートフォリオ改革効果により、採算性改善につながった」という。
国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年同期比3%増となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比3%減、ファイナンス(金融・保険)が同1%増、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が同8%減、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が同8%増となっている。
「伸長率は弱く見えるが、複数にわたる大型商談を除くと6%増となっている。エンタープライズは、流通は底堅く、製造は好調に推移。DXおよびSX関連、モダナイゼーション案件の引き合いが引き続き旺盛である。ファイナンスは高い水準で推移し、パブリックでは公共向け大型システム案件を獲得。ミッションクリティカルでは公営競技向け更新案件を獲得し、防衛省向け受注も高い水準を継続している。顧客単位で見ると、経済環境変化の影響で凸凹はあるが、商談パイプラインの総量は全方位で拡大傾向が続いている。下期も着実な商談獲得を図るとともに、さらなる商談の拡大を進める」と意欲を見せた。
国内サービスソリューションにおける売上収益と受注残高の状況についても説明。2025年度の売上収益1兆8000億円の計画に対して、上期実績と下期に売上計上予定の受注残高の合計は1兆4791億円となり、年間カバー率は82%に到達。「これは前年度と同じ水準であり、堅調な進捗と評価している。計画達成の確度は十分である。年間計画の達成につなげる」と語った。
海外の受注状況は、Europeが前年同期比28%増、Americasが同24%減、Asia Pacificが同8%増となっている。Europeではデータセンター関連で複数年契約の大型更新案件を受注。Asia Pacificはオセアニアでのリテール系の複数年更新案件を獲得した。Americasでは前年度の大型複数年契約の反動がマイナスに影響した。
サービスソリューションにおける採算性の改善についても触れ、「グロスマージン率で前年同期比2.0%増となり、37.1%となっている。標準化と自動化が鍵であり、プロセスの標準化を進めるJGG(ジャパン・グローバルゲートウェイ)は、プロジェクト適用率が48%となり、生成AIによる自動化では、3万人の国内SEと協力会社にセキュアに利用できる生成AIツールを提供済みだ。2万件のプロジェクトのうち、3割で生成AIを利用している。生成AIの活用には顧客との合意が必要でありハードルは高いが、年度末までに全プロジェクトの50~60%において、生成AIツールの活用を目指す。コスト効率化という側面だけでなく、サービス価値を高めるための重要施策だと捉えている」という。
ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比7.0%減の4248億円、調整後営業利益は94億円増の125億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同9.6%減の3465億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同6.7%増の782億円となった。
また、ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比4.2%増の1131億円、調整後営業利益は同103億円増の217億円となった。
「ハードウェアソリューションは売上基準変更の影響や、アジアパシフィックにおける小規模事業、低採算事業の縮小により減収となったが、コスト効率化が進展して大きく増益となった。エフサステクノロジーズによる製販一体体制による事業効率向上も効果となっている。ユビキタスソリューションは、Windows 10のサポート終了に起因する需要が増加。国内ビジネスへの集中とコスト構造の改善により増収増益になった」という。
通期の業績見通しは据え置き
2025年度通期(2025年4月~2026年3月)の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比2.8%減の3兆4500億円、営業利益は同35.8%増の3600億円、調整後営業利益は同17.2%増の3600億円、税引前利益が同123.9%増の1330億円、当期純利益が同77.4%増の3900億円、調整後当期利益は2500億円とした。
2025年度は中期経営計画の最終年度となるが、「2025年度計画では、過去最高益となる調整後営業利益で3600億円、営業利益率10%超を目指している。サービスソリューションを中心とした利益拡大と採算性改善に取り組むことで、中期経営計画の達成はもちろん、その先に持続的な企業価値拡大につなげる」と述べた。
なお、富士通は、ブレインパッドの株式公開買い付けを発表しており、「データサイエンスやデジタルマーケティングに強みを持ち、この分野では草分け的存在のブレインパッドを経営統合することで、急成長しているUvanceのData&AI事業を強化できる。この事業は富士通のサステナブルな成長の中核を担う重要領域である。提供価値の高度化を実現できる。富士通は、国内Data&AI市場でナンバーワンシェアを目指す」と述べた。
また、「Uvanceを中心とした注力事業の成長に向けて、M&Aは成長スピードを加速するための手段だと考えている。M&Aは常に検討している」と語った。















