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日立、NTTドコモとの共同実証によりシステム運用業務に特化したAIエージェントを開発
2025年10月29日 11:00
株式会社日立製作所(以下、日立)は28日、株式会社NTTドコモと共同で、同社の情報システム部を対象に、生成AIを活用したシステム運用業務に特化したAIエージェントの実用化に向けた実証を実施したと発表した。
実証ではまず、日立の生成AI活用基盤の豊富な構築実績、およびAIへのリフトとAIへのシフトの考え方に基づいたAIエージェント実装のベストプラクティスと、NTTドコモの長年にわたる大規模システムの安定運用におけるノウハウをかけ合わせ、情報システム部の生成AI活用を促進する基盤の構築と、システム運用業務に特化したAIエージェントの開発を日立が行った。
実証にあたって、まずNTTドコモ情報システム部における業務の詳細を日立がヒアリングし、暗黙知となっている業務の明文化や、現状の生成AI活用についてアセスメントを実施した。その結果を踏まえ、AIエージェントを適用する業務の優先づけと、その基盤となる生成AI活用基盤の構築を実施した。
生成AI活用基盤は、利用者のスキルに応じた3段階の環境で生成AI活用に必要な基本機能を備えており、生成AIを活用するハードルを下げ、情報システム部全体のDXを促進する。また、「インシデント事例の検索・対応」「インシデント情報の周知判断・周知文作成」「パッチの適用判断の自動化」の3つのユースケースに対応する「AIへのリフト」の考え方に基づくAIエージェントを日立が開発し、業務適用の有効性をNTTドコモと共同で検証した。
インシデント事例の検索・対応では、NTTドコモの顧客管理システムにおいて、従来のようなキーワード検索ではなく、アラートメッセージや対象サーバーの情報を入力するだけで過去の類似事例を特定し、インシデント内容に応じて、関係者や関連システムへの周知に必要な事項を出力するAIエージェントを開発した。試験運用の結果、担当者はAIエージェントの検索結果を最終確認するだけで対応方法を判断できるようになり、業務効率化につながることを確認した。
インシデント情報の周知判断・周知文作成では、NTTドコモの顧客管理システムにおいて、生成AIが、参照する設計書とその順番、および工事周知が必要な関連システムを判断し、周知文案を自動作成するAIエージェントを開発した。試験運用の結果、周知先の確認と周知文書の作成までの一連の業務を効率化できることを確認した。
パッチの適用判断の自動化では、プライベートクラウドシステムにおけるパッチ適用業務に対するAIエージェントを開発した。同業務は通常、月に一度システムの構成管理表から製品情報を抽出し、リスト化した製品に関わるバグ情報を専用のサポートサイトで検索し、バグ事象の内容から対象システムで使用中の製品への影響有無を判断するという流れで実施している。
今回開発したAIエージェントは、製品名とバージョン情報からバグ事象の該当有無を判定するため、担当者は判定内容をもとにパッチ適用の要否を最終判断できる。また、パッチ適用にあたり必要な、バグ事象の内容やシステムの影響、対応策などをまとめるレポートのドラフトもAIエージェントで作成できる。試験運用の結果、AIエージェントの活用前後の比較において、バグ事象の影響有無の判定では54%、レポート作成では64%の作業時間短縮効果を確認した。
今回の実証の成果を踏まえ、日立はNTTドコモと共同でAIエージェントの実運用化に向けて取り組みを加速する。また、他のユースケースへの適用やそれらの共通的な運用を可能にする生成AI活用基盤の高度化を進め、NTTドコモ情報システム部の基幹システムのDX実現を目指す。
将来的に日立は、実証を通じて確立した「AIへのリフト」の考え方に基づくAIエージェントを他の業界・業種にも展開し、システムエンジニアの業務変革の支援と、従来のシステム開発のあり方を刷新する「AIへのシフト」の仕組み確立を目指す。また、HMAXソリューションの一部としての展開も視野に、社会インフラを支えるITシステムの安定運用と企業の持続可能な成長に貢献するとしている。
