ニュース

Sansan、企業のAI活用を支援する新ビジネスを順次開始 社内に散らばるデータのAIによる活用を支援

 Sansan株式会社は21日、3つの分野で新しい取り組みを開始すると発表した。1)オンライン会議での顧客情報の取得、2)顧客情報の管理やメンテナンス、3)AIエージェントやMCPサーバーなど、Sansanの提供してきたサービスをAIへ活用する――といった取り組みを開始する。

3分野で新たなサービスを提供する

 また、AIの活用を支援するため、企業がAIを活用する際に必要なシステム開発など、これまでは行っていなかった新たな取り組みも行っていく考えを示した。

 代表取締役社長の寺田親弘氏は、新たな取り組みを開始する背景について、「AIは、日々当たり前に使っている環境になっている。その一方で、今年の前半ぐらいに考えていた、もっと非連続な変化が起きているはずじゃないか?と思うことが実現していない。(そうした変化を起こすために)必要なのは、最新の、正確に構造化された、AIが読み解けるデータになる。つまり、AIをちゃんと使えるようにするということ。AIに投資する、AIに向き合うことは、ほとんどの企業にとっては自社データに向き合うことではないか」と説明。

 Sansanがこれまで提供してきた名刺を活用したビジネスデータベース、経理DXサービス、取引管理サービスのデータを、AIが活用しやすい、正確に構造化されたデータとして活用していくことで、企業のAI活用を本格化するサポートを行うとした。

Sansan株式会社 代表取締役社長 CEO CPOの寺田親弘氏

「働き方を変えるAXサービス」の提供により企業の生産性向上を支援

 Sansanでは、これまで「働き方を変えるDXサービス」というキャッチフレーズを標榜してきたが、今回の発表で、「働き方を変えるAXサービス」へと変更する。

 「当社は、創業時からアナログな書類を正確にデジタルデータ化することに向き合ってきた。紙でやり取りすることが当たり前だった名刺、請求書、契約書は、ビジネスにおいて重要な情報であることは自明のこと。ただし、企業ごとに書式が異なり、標準的なフォーマットもない」と前置き。

 その上で、「これらの書類を正しくデータ化し、関係性も含めわかりやすく整理する。名刺であれば企業や人物の情報、請求書であれば取引や取引額、契約書であれば契約内容そのもの、こういった情報をほぼ100%の精度でデータ化し、正確なデータをベースに構造化する。ユーザーには、それぞれの目的において生産性を上げるという観点でサービスを利用してもらう。これまでの、『働き方を変えるDXサービス』から、『働き方を変えるAXサービス』へ事業領域を再定義し、ユーザーに新たな価値を届けていきたい。我々が提供する働き方を変えるAXサービスによって、企業の生産性を上げるとともに、ビジネスを支えるデータインフラとして、働き方を変える土台となっていくことが、AI時代における私たちの挑戦だと考えている」とした。

働き方を変えるAXサービスへ

 新たに取り組む3つのサービスのうち、1つ目の顧客情報の連携は、Sansanの名刺関連サービスとZoomが連携することによって、オンライン会議の際、全参加者の氏名、肩書などの情報を取得できるものだ。

 対面の場であれば、その場にいる全員と名刺交換できたが、オンライン会議の場合、参加者の名前や肩書がわからないまま、会議や打ち合わせをした経験がある人も多いことから、相手の情報を取得できるサービスとして提供する。

 「オンライン会議でも相手の情報を把握し、今後のビジネスに活用していくためのサービスとなる。まだ開発中だが、使い方としては、Sansan Zoom連携経由で会議用URLを発行し、参加者はそこから入室すると、会社名、氏名、連絡先といった情報を求められる。Sansanのユーザーであれば、ワンクリックで入室可能となる。入力された情報はスマートフォンで確認できるので、相手の情報を見ながら会議を進めることができる」(寺田社長)。

Sansan Zoom連携

 2つ目の「Sansan Data Intelligence」は、Sansanが創業から18年間にわたり、名刺や請求書などの膨大なビジネスデータを処理する中で培ってきたデータ化・名寄せ技術をもとに開発したデータクオリティマネジメントサービス。Sansan Data Intelligenceに搭載された800万件超の企業・事業所データベースをもとに、ユーザー企業内の取引先データの重複や更新漏れを補正し、AI活用や戦略立案に必要となる、高品質なデータ基盤として利用できる。

 この事業を担当する、執行役員 Sansan事業部 事業部長の小川泰正氏は、「企業の中では、CRM、SFA、基幹システム、Excelなどに、同じ顧客情報が用途や形式などによって全く異なる状態で管理されているケースが多々ある。例えば、バックオフィス部門ではExcelで企業情報を管理し、A社の情報も登録されているが、営業部門では全くA社に関する情報を把握できていないため、営業機会を逃してしまうといったことが少なくない。当社についても、Sansanがアルファベット、カタカナなど、同じ会社なのに別々に登録されているといったこともあった。顧客データに関する問題は、企業活動をしていく上で重要な課題のひとつと考える。AIによるデータ分析などの際にも影響する課題ではないか」と、企業データの管理の難しさを指摘する。

 そこでSansan Data Intelligenceでは、Sansanが培ってきた800万を超える企業・事業所データベースと、顧客データ管理のノウハウを生かし、その企業にとって有用な顧客データへの整備を支援する。

Sansan Data Intelligenceによってデータが整備される

 3つ目のAIへの活用は、社内に散らばったデータをAIでどう活用していくのかを支援するサービスとなる。

 「Sansanに蓄積されている企業や個人データなどはもちろん、Bill One、Contract One、さらに現在使われているSFA、基幹システム、クラウドストレージなど、社内に散らばっているさまざまな情報を統合し、AIで使っている環境そのものを提供する。こうしたデータを活用していくSansan AIエージェント、Sansan MCPサーバーを新たに提供する」(寺田社長)。

 Sansan AIエージェントは、ビジネスデータベース「Sansan」や基幹システム、SFAなど、社内のさまざまなデータを統合し、AIとの対話形式で活用できるようにすることで、商談準備や顧客理解などの営業業務をAIがサポートするソリューション。2025年11月21日から提供を開始した。

Sansan AIエージェント

 Sansan MCPサーバーは、Microsoft CopilotやClaudeなど、生成AIツールとSansanを手間なく接続する仕組みとなる。ユーザーは、普段利用している生成AIツール上で、Sansanに蓄積されたデータを検索・活用可能となる。すでに、11月10日からトライアル提供を開始している。

Sansan MCPサーバー

 導入にあたっては、Sansanが導入をサポートするシステムインテグレーションなども行っていく計画だ。Sansanにとっては新しいビジネスとなるが、寺田社長は、「社内にいるエンジニアと、必要があれば新しい人員を採用し、事業を進めていきたい」との方針を示している。