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東証で新「arrowhead」が稼働開始、信頼性や処理能力を向上

 株式会社東京証券取引所(以下、東証)は24日、富士通株式会社の協力のもと、株式売買システム「arrowhead」をリニューアルし、運用開始したと発表した。

 2010年1月に稼働開始したarrowheadは、富士通の協力を受け、当時としては世界最高水準の高速性と信頼性を持つシステムとして稼働開始していた。しかし、株式市場の環境が変化し、近年では注文件数が増加したほか、短時間に注文が集中する傾向が見られることから、投資家のニーズに対応するため、東証は2012年12月にarrowheadリニューアルプロジェクトを立ち上げ、システム開発に取り組んできた。

 今回稼働した新arrowheadは、信頼性と利便性、処理能力の向上を基本方針として、従来のarrowheadをベースに開発された。信頼性の面では、「コネクション異常切断時注文取消(キャンセル・オン・ディスコネクト)」「注文抑止・取消(キルスイッチ)」「ユーザー設定型ハードリミット」「テスト用銘柄(ダミーシンボル)」といったリスク管理機能の導入により、取引の電子化・高速化が進んだマーケットのリスクを低減するという。

 また利便性については、呼値(よびね)の単位の適正化など、売買制度の見直しを実施して、マーケットの利便性向上を図った。

 加えて、注文件数の急増、および短時間への注文集中時にも注文を安定的に処理できるよう、システム処理能力を向上させた。注文集中時にも安定して処理できるよう、リニューアル前の約2倍の性能を確保している。さらに、注文件数の増加に対応した柔軟なキャパシティ拡張を可能にしたとのこと。

処理能力リニューアル前リニューアル後
注文応答時間約1.0ミリ秒0.5ミリ秒未満
情報配信時間約2~2.5ミリ秒1.0ミリ秒未満
注文件数(1日)1億3700万件2億7000万件

 なお新arrowheadでは、「FUJITSU Server PRIMEQUEST」「FUJITSU Server PRIMERGY」といったサーバーや、垂直統合型データベースシステム「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for HA Database」、ミドルウェア「FUJITSU Software Primesoft Server」などが採用された。

 具体的には、取引処理に必要な全データをメモリ上に配置するPrimesoft Serverにより、マイクロ秒レベルの超高速データアクセスを可能にし、高いレスポンス性能とスループット性能を実現。さらに今回は、データ処理アーキテクチャの変更とInfiniBandを用いた通信により、高速性をより強化している。

 信頼性についても、メモリ上に配置したデータを、常時自動的に待機側サーバーへミラーリングして三重化し、複数サーバーで並行処理させることにより、障害時における秒オーダーでのサーバー切り替えやデータの保全性を確保。異常発生時に複数の切り替え機構を動作させ、確実・迅速な自動切り替えを実現するフェールソフト性を強化することで、業務継続を優先した信頼性の向上を達成したとのこと。

石井 一志