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さくらインターネット、マネージドスーパーコンピューター「さくらONE」でNVIDIA B200搭載ノードを提供

 さくらインターネット株式会社は、生成AIなどに向けたGPUスーパーコンピューターをクラウド形式で提供するマネージドスーパーコンピューター「さくらONE」において、NVIDIAのBlackwellアーキテクチャによる「B200」GPUを、10月20日から提供開始した。

さくらONEでNVIDIA Blackwell GPU(B200)提供開始

 さくらONEは、NVIDIAの「H200」GPUを採用して9月にリリースされた。計算環境の立ち上げから日常的な運用管理までを一括で支援するマネージドサービスであり、最低30日から、1日単位で利用できる。

 今回、BlackwellアーキテクチャのB200を提供開始したことで、利用者は「NVIDIA Blackwell GPU」モデルの計算ノードと「NVIDIA H200 GPUモデル」の計算ノードを選択あるいは混在させて、共通のプラットフォーム上で利用できる。ノード間で共有するストレージシステム(Luster File System)も、「NVIDIA Blackwell GPU」モデルと「NVIDIA H200 GPU」モデルとで共通して利用できる。

 「NVIDIA Blackwell GPU」モデルでは、最大構成で、GPUはNVIDIA B200 SXM 192GB 8GPU×48ノードで合計384GPUまで利用できる。メモリは、DDR5の1.5TB×48ノードで最大72TB。CPUはIntel Xeon 6960P(1CPUあたり72コア)×2CPU×48ノードで最大6912コアとなる。

 「NVIDIA Blackwell GPU」モデルと「NVIDIA H200 GPU」モデルの用途について、さくらインターネットでは「現状ではどちらもさまざまな用途で使える」としながら、「NVIDIA Blackwell GPU」モデルはより生成AIに向いており、「NVIDIA H200 GPU」モデルはより科学技術計算に向いていると説明。両モデルをそろえることで、科学技術とAIの両領域をカバーするスーパーコンピューターとして利用できるとしている。

「さくらONE」のシステム構成
「NVIDIA Blackwell GPU」モデルと「NVIDIA H200 GPU」モデルの違い

サーバー提供を中心としたクラウド型AIサービスで、高付加価値領域へカバー範囲を拡大

 同日オンラインで開催された記者説明会では、さくらインターネット株式会社 AI事業推進室 AI基盤事業統括の須藤武文氏と、AI事業推進室/さくらインターネット研究所 上級研究員の小西史一氏が、「さくらONE」と「NVIDIA Blackwell GPU」モデル、そしてさくらインターネットのGPUプラットフォームについて解説した。

 須藤氏はさくらインターネットのAI基盤サービスについて説明した。同社は第一次整備として約130億円をかけ、NVIDIA H100 GPUを2000基以上採用して生成AI向けクラウドサービスを整備した。現在は第二次整備として、経産省の助成を受け、第一次計画と合わせて総GPU数1万基、総計算能力18.9E(エクサ)FLOPSを目指している。

 その中で、生成AI基盤へのニーズが、2年程度の間に矢継ぎ早に変化してきたと須藤氏は語る。業績予想においては大規模学習中心と考えていた。しかし現在の市場では、規模は大規模から小規模まで、学習に加えて推論のニーズも高まり、品質重視やコストパフォーマンス重視などニーズも多様化してきたという。

 そこでさくらインターネットでは、祖業のサーバー提供を中心として、学習(開発)向けと推論(利用)向けにそれぞれサービスのカバー範囲を広げるという、クラウド型サービスによる高付加価値戦略に進んでいると須藤氏は説明した。今回の「さくらONE」は、前者の学習(開発)向けのサービスだ。

AI基盤市場のニーズの変化
クラウド型サービスによる高付加価値戦略

 小西氏は、バイオインフォマティクスの研究者としてスーパーコンピューターを使う立場から、さくらONEについて語った。

 同氏は、さくらONEのほかのGPUスーパーコンピューターとの共通点として、Beowulf型のHPCクラスタや、ジョブスケジューラ、Singularityコンテナなどに対応するため、ほかのGPUスーパーコンピューターでやっている計算をさくらONEで実行できると説明した。

 一方で異なる点として、H200とB200のヘテロジニアスな構成となっていてGPUを使い分けられることを挙げた。また、さくらインターネットがデータセンターの運用経験により、H200 GPUは1基につき700W、B200 GPUは1基につき1000Wのフルパワー電力で利用できることも特徴に挙げた。

 またさくらONEの利用が適している分野としては、H200とB200の2種類のGPUがあることから、医薬品開発・バイオインフォマティクスからAIまで、かなり幅広いと小西氏は語った。

さくらONEとほかのスーパーコンピューターとの共通点と違い
さくらONEの利用が適している分野

 小西氏は、スーパーコンピューターの性能ランキングを競う「TOP500」において、さくらONEが世界49位の性能を発揮し、さらに分野ごとのベンチマークでもランキングに入ったことを紹介。次回のTOP500へのエントリーも準備中だと語った。

 そして小西氏は、スーパーコンピューターは単なる「すごく速いコンピューター」ではなく、医療や防災などいろいろな分野で見えないところから社会を支えている計算のインフラだと主張。そして、さくらONEは、計算力を提供するインフラを民間で整備し、誰もが付加価値を作れるような社会を提供するのがミッションだと語った。

TOP500でさくらONEが世界49位に
分野ごとのベンチマークでもランキングに