「高速性と信頼性を徹底的に追求した」、東証のarrowheadが採用した富士通のデータ管理ミドルウェア


プラットフォームソフトウェア事業本部 次世代社会基盤ミドルウェア開発統括部 統括部長代理の橋詰保彦氏
大量・超高速トランザクション処理に適したシステムアーキテクチャ

 富士通株式会社は3月26日、高速データ管理ミドルウェア「Primesoft Server」について説明会を開催した。株式会社東京証券取引所(以下、東証)が1月4日に稼働開始した次世代株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」の基幹ソフトウェアとして利用されている。

 「Primesoft Server」は、高信頼性と拡張性・柔軟性を兼ね備えたインメモリの高速データ管理ミドルウェア。レスポンス確保に特化したフロントエンド処理とデータ蓄積のためのバックエンド処理によって、大量・超高速トランザクション処理に適した分散型システムアーキテクチャを採用している。

 プラットフォームソフトウェア事業本部 次世代社会基盤ミドルウェア開発統括部 統括部長代理の橋詰保彦氏は、「2006年末に、東証が次世代株式売買システムの基幹ソフトウェアベンダーを富士通に決定し、これに伴い2007年1月に発足したのが当事業部。そして、次世代ミッションクリティカルシステムに要求される超高性能・高信頼性を実現するデータ管理ミドルウェアを目指した。開発にあたっては、データベースとネットワークそれぞれのノウハウを持ったエキスパートを集めるとともに、既存技術にとらわれない発想によって、高速性と信頼性を徹底的に追求した」と、「Primesoft Server」の開発経緯を説明した。

高速データアクセスの仕組み
可用性確保の仕組み

 「Primesoft Server」の大きな特徴は、1)高速データ処理、2)可用性保証、3)拡張性、の3点。

 1)では、ディスクレスで従来のデータベースを大幅に上回るレスポンスと大量スループット性能を実現する。具体的には、機能分散された各サーバーを非同期メッセージングで連携する「Primesoftキュー」、キー順アクセス/ランダムアクセスができる「Primesoftテーブル」、そして大量更新にも耐えることができる堅牢なトランザクション管理を実装。これにより、マイクロ秒オーダーの高速データアクセスに対応する。

 「開発当時、東証では“チャレンジ10ms”を掲げ、証券会社からの注文データを受付サーバーで処理して、応答保証サーバーのキューに格納し、受付サーバーに応答を返すまでの速度を10ms以内にすることを目指していた。実際に、Primesoft Serverを稼働した結果、この速度を2msまで高速化することができ、東証からの要望を大きく上回る成果を上げることができた」(橋詰氏)という。

 2)では、メモリデータを複数ノードで冗長化し、ノード異常時も迅速な切り替えを実現する。データの冗長化については、テーブルやキューのデータをほかのノードへ自動的にミラーリング。万一、Activeインスタンスに異常が発生した場合は、数秒でStandbyインスタンスへの切り替えを行うという。

 3)については、トラフィック増・変動に迅速に対応できるスケールアウトを実現。テーブルやキューを任意に分割し、複数のUAPサービスとして配置するパーティショニングにより、データの自由なノード配置が可能となっている。また、CPUやメモリが不足した場合は、ノードグループを追加して容易に拡張することができる。管理できるデータ量は事実上無限となっている。

 このほかの特徴として、超ミッションクリティカルシステムを支える運用・監視機能を提供。異常個所に応じた3層(プロセス/インスタンス/ノード)の自動切り替えによってシステム運用の継続を支援する。さらに、突発的な呼量増に対応する動的データ再配置機能、迅速な異常検知とフォールバック運用のための運用・監視機能、株価のように最新の値に意味を持つ情報を複数ノードに同報するマルチキャストキュー機能を備えている。

 橋詰氏は、「Primesoft Serverによって、XTP/CEP分野の基盤テクノロジーを確立し、実践することができた。この実績をベースに、今後のビジネス革新や飛躍的に増大するデータ処理に向け、富士通の各種ミドルウェアと連携しながら、新たな市場開拓を目指していく」と、今後の方針を示した。


(唐沢 正和)

2010/3/26 18:32