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富士通、利便性やレジリエンスを強化した東証の新株式売買システム「arrowhead4.0」を運用開始

 株式会社東京証券取引所(以下、東証)と富士通株式会社は5日、東証の株式売買システムをリニューアルし、「arrowhead4.0」として運用開始したと発表した。今回の更改により、2010年1月に稼働を開始した「arrowhead」は4世代目となる。

 リニューアルでは、市場の利便性向上のため、クロージング・オークションの導入、注文ごとに相場情報を配信する新サービスの提供、機関投資家などのユーザー単位での注文一括取り消し機能の導入といった施策を実施した。また、投資家など利用者の取引機会最大化のために取引時間を延伸するとともに、レジリエンス(障害回復力)を強化した。

 東証では、大引けの売買の重要性が高まる中、終値形成における透明性のさらなる向上を目的として、後場の15時25分から、5分間の注文受付時間を設けた後、15時30分に板寄せを行うクロージング・オークションを導入した。クロージング・オークションによる板寄せでは、従来の板寄せの条件で約定しない場合でも、一定の条件を満たす場合に売買成立可能値幅の上下限で、時間優先により注文を約定させることで、終値成立機会を向上させる(特別約定)。

 また、相場情報を注文ごとに配信する、Market by Order型の相場情報サービスも提供する。これにより、相場情報サービス利用者は、これまでの値段ごとに集約した相場情報に加え、注文ごとのより詳細な相場情報を取得することが可能になる。

 さらに、機関投資家などの利便性向上のため、ユーザー単位で複数の注文を一括で取り消す機能を導入した。

 取引機会の最大化に向けては、投資家の取引機会を拡大し、市場としての利便性を向上させるため、東証の取引終了時刻を15時00分から15時30分に30分延伸した。

 レジリエンス強化では、メモリ上に配置した取引情報を三重化して複数サーバーで並行動作させることにより、障害時における秒オーダでのサーバー切り替えやデータの保全性を確保し、安全安心なシステムの稼働を実現した。万が一、システムに障害が発生した場合に備え、売買を継続するための改善を引き続き行う。また、これまで以上に迅速かつ円滑な復旧に向けた取り組みにより、取引機会を確保するとしている。

 富士通では、富士通グループの高信頼・高性能サーバーならびに新たな高信頼化・高速化技術を組み入れたミドルウェアなどの最新製品と、長年のシステム構築実績によるエンジニアのノウハウや技術力といった総力を結集して、システムの信頼性と処理性能を向上させたと説明。これまでのarrowheadプロジェクトで取り組んできた高品質なシステム開発プロセスを土台とし、さらなる信頼性・安定性の強化、レジリエンスの向上を実現したとしている。

 レジリエンス向上に向けた取り組みでは、高信頼性と拡張性を兼ね備えた超高速インメモリデータ管理ソフトウェア「Fujitsu Software Primesoft Server」により、メモリ上に取引情報を配置することで、マイクロ秒レベルの超高速データアクセスから高いレスポンス性能とスループット性能を実現し、さらにシステム再立ち上げを伴う障害回復時間の短縮を実現するため、製品の改善を実施した。また、arrowhead4.0が提供するサービスの正常性を可視化する監視画面を構築した。

 システムの性能向上および耐性強化に向けては、富士通グループの最新の高性能・高信頼x86サーバー「PRIMERGY RX2540 M6」462台への基盤更改により、キャパシティとスループットなどのシステム性能の向上および耐性強化を実現した。

 システムの疎結合化の推進に向けては、東証などを運営する株式会社日本取引所グループのクラウド基盤上にシステムログデータの蓄積・分析業務領域を、取引機能と分離して構築した。蓄積分析と取引の一部機能をシステム上疎結合にすることで、市場運営の信頼性を向上した。また、より柔軟な市場データの分析を可能とした。

 障害対応の高度化に向けては、東証および富士通が一体となって障害に対応するチームを構築した。障害の影響範囲や原因特定に資する機能を開発し、システムと人の両面で、障害対応のさらなる迅速化を実現するとしている。

 東証と富士通は、市場を巡る環境変化や多様化する投資家のニーズに対応するとともに、市場利用者の利便性や東京市場の国際競争力、レジリエンスをさらに高めていき、さらには安全安心な市場取引を実現することで、今後もより一層のマーケットの発展に努めていくとしている。