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富士通が今期純利益を上方修正、前年比17%増に

第3四半期決算は減益も、四半期単独では計画を上回る

富士通 執行役員常務兼CFOの塚野英博氏

 富士通株式会社は30日、2014年度第3四半期(2014年4月~12月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比0.4%増の3兆3644億円、営業利益は0.1%減の654億円、経常利益は6.3%増の834億円、当期純利益は11.6%減の517億円となった。

 富士通 執行役員常務兼CFOの塚野英博氏は、「第3四半期単独では計画を上回っており、収益は期を追うごとに積みあがっている。だが、携帯電話やPCなどのユビキタスソリューションが減収となっている。PC事業はWindows XPに関するリプレース需要のピークアウトと、為替の影響による部材コストの上昇があり、第3四半期は赤字となった。だが計画は上回っている。携帯電話は、新機種の投入により善戦したが、販売台数は減少した」と、マイナス要因を説明する。

 その一方で、「国内ソリューションを中心に、例年以上に第4四半期に利益が集中すると考えていたが、テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションの主要3セグメントで計画を上回っている」としたほか、「第3四半期には、次年度以降に向けた戦略投資を前倒しで行っている」と述べた。

2014年度のIT投資は横ばいも、金融・公共分野は引き続き堅調

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比2.0%増の2兆2949億円、営業利益は同24.3%減の953億円。そのうちサービス事業は売上高が同3.5%増の1兆9016億円、営業利益が同7.7%減の928億円。

 さらに細かく見ると、サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は同2.0%増の6487億円、インフラサービスの売上高は同4.4%増の1兆2529億円となった。またシステムプラットフォームは、売上高が同4.7%減の3932億円、営業利益は同90.2%減の24億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は同0.4%減の1771億円、ネットワークプロダクトの売上高は同8.0%減の2160億円となった。

 「IT投資については、2012年~13年度にかけて大きく伸びたのに比べると、2014年度は高原状態(横ばい)となっている。だが、この先もメガバンクを中心とした金融分野、あるいは主要省庁などの公共分野への投資は引き続き堅調である。マイナンバー関連商談のほか、東京オリンピックやラグビーワールドカップに向けた関連ビジネスが期待できる。2016年度の営業利益2500億円達成にも貢献するだろう。一方で、通信キャリアの投資は抑制モードにあるが、これも中期的に見れば投資意欲は旺盛だと考えている」(塚野執行役員常務)などとした。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比2.1%減の7831億円、営業利益は前年同期の339億円の赤字から、84億円の黒字に転換した。だが、第3四半期単独では、第2四半期までの黒字から赤字に転落している。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が前年同期比6.9%減の5296億円、モバイルウェアの売上高が同9.7%増の2535億円となった。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比3.6%減の4341億円、営業利益は同5.6%増の245億円。そのうち、LSIの売上高は同5.4%減の2261億円、営業利益は同77.7%増の181億円、電子部品の売上高は同1.7%減の2090億円、営業利益は同51.0%減の63億円となった。

通期見通しの純利益を上方修正

 一方、2014年度の通期業績見通しを上方修正。売上高は前年比0.8%増の4兆8000億円、営業利益は同25.6%増の1850億円と据え置いたものの、税引前利益は2014年10月公表値に比べて100億円増となる、前年比24.1%増の2000億円に、当期純利益は2014年10月公表値に比べて70億円増となる、前年比16.6%増の1320億円にそれぞれ引き上げた。

 「第3四半期が計画を上回る進ちょくとなり、国内サービスやパソコン、LSIの採算性向上が寄与している」という。

 セグメント別の売上高見通しは、テクノロジーソリューションが2014年10月公表値に比べて200億円増の3兆3400億円。そのうち、サービスでは同300億円増の2兆7200億円。システムプラットフォームでは、同100億円減の6200億円。ユビキタスソリューションは同50億円増の1兆4050億円。そのうち、PC/携帯電話で同50億円増の7050億円。デバイスソリューションは同100億円減の5800億円としている。

 また、セグメント別の営業利益見通しでは、テクノロジーソリューションでは、2014年10月公表値から70億円減の2310億円とし、そのうち、サービスで同30億円増の1810億円、システムプラットフォームでは同100億円減の500億円とした。また、ユビキタスソリューションは、同30億円増の100億円、デバイスソリューションでは同100億円増の340億円に修正した。

 「サービス分野では、ソリューション/SIにおいて12月時点で高いレベルの受注残がある。今年度の第4四半期への集中度合いは例年以上になっている」

 また、PCの出荷計画は、2014年7月公表値のまま据え置いた480万台としたほか、携帯電話の出荷計画は、2014年10月公表値から20万台増とする330万台に上方修正した。携帯電話は年間でも黒字を確保することを強調した。

 「携帯電話は、月間30万台で利益を確保できる体制を確保している。来期も同じ物量で利益を確保できると考えており、携帯電話ビジネスは継続できる」と述べた。

 なお、業界内で指摘されている2015年以降のSE不足の課題については、「金融や公共向けにタイトになるとは想定している。従来のパートナーの枠を広げること、オフショアのリソースを活用することで、SE不足を吸収したい」などと語った。

大河原 克行