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キヤノンMJの新社長に坂田正弘専務が昇格、初の生え抜き社長に

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は27日、坂田正弘取締役専務執行役員が社長に就任する人事を発表した。3月26日に開催予定の株主総会後の取締役会で正式決定する。

 代表取締役社長の川崎正己氏は相談役に就任。代表取締役会長の村瀬治男氏はそのまま続投することになる。

左から、村瀬治男会長、坂田正弘 新社長、川崎正己社長

景気に左右されない強い販売力がある会社にしたい

キヤノンMJの新社長に就任する坂田正弘氏

 坂田新社長は、1953年4月、東京都出身。1977年3月、明治大学商学部卒業後、同年4月にキヤノン販売(現キヤノンMJ)に入社し、BC事業部金融営業本部金融営業第二部長などを経て、2002年には金融営業本部長に就任。2003年には、理事、ビジネスソリューションカンパニーMA販売事業部長に就任した。2006年には取締役、2009年に常務取締役およびビジネスソリューションカンパニーバイスプレジデント、2011年3月に取締役兼常務執行役員、2013年3月に取締役兼専務執行役員に就任した。また、2013年4月にはビジネスソリューションカンパニープレジデントに就任している。キヤノンMJからの生え抜き社長は、坂田氏が初めてとなる。

 1月27日午後4時30分から都内で行われた会見で、坂田新社長は、「強い経営基盤を生かし、多くの顧客を拡大、成長させる支援をしたい。ここ数年は、景気の動向が業績を左右された反省がある。景気に左右されない強い販売力がある会社にしたいと考えている」とコメント。

 「課題は、次の柱をどう作るかである。私は、これまでビジネスソリューションを担当しているが、今後はIT抜きにはなにもできない。ITソリューションとそれ以外の事業との連携が必要になると考えている。製品とソリューションを連携させなくては強い販売力に実現できない。ビジネスソリューションでは、業種に刺さっていくソリューション提案体制を構築しつつあるが、それぞれの事業でも、もっと力をつけて販売力を強化しなくてはならない。サービス創造型企業として、ハードの販売だけで終わるのではなく、ソリューションとして提供し、継続的にサービスを提供していく企業にならなくてはならない。サービスの比重は、いまよりはるかに高くならないと成長はできないと考えている」と述べた。

 さらに、「ネットワークカメラや3Dプリンタ、高速な商業印刷プリンタなど、新たな芽が生まれてきている。ITソリューションや医療分野などでも拡大できる要素がある。こうした動きに、さらに新たなものを付け加えることができれば、成長できる領域になると考えている」と新規事業領域の強化にも取り組む姿勢を明らかにした。

「今後の成長戦略を着実に進めていける」

キヤノンMJ 代表取締役社長の川崎正己氏

 また、川崎社長は、「2009年に社長就任して以来、長期経営構想フェーズIIの策定から実行まで6年間、経営のかじ取りをしてきた。その間、リーマンショックの影響を受けながら、2011年3月の東日本大震災、その後も主力工場があるタイの洪水被害など、予測しない災害に見舞われたこともあり、残念ながら、目立つような成長は果たせなかった」としながらも、「だが、グループ全社員の協力のもとに、より付加価値の高い製品、サービス、サポートを創出し、生産性向上に努めた結果、営業利益、経常利益では5期連続で増益を果たした。営業利益率は4.0%とリーマンショック以降の最高水準まで回復した。純利益率は2.4%ととなり、1991年のバブル期以来の最高水準となった。収益体質は大幅に向上した」と振り返る。

 また、「Beyond Canon、Beyond Japanを旗印に、ソリューション事業へのシフトを進めるなかで、ITソリューション、商業印刷市場、産業・医療分野において、新規事業への取り組み、M&A、海外展開など、将来に向けた種まきを進めてきた」とする。

 さらに、「大事なのは、こうした取り組みを、今後は成長、加速させることである。今年は、来年からスタートする長期経営構想フェーズIIIの策定時期であり、日本にとっても大きな節目になる2020年に向けた構想を練ることになる。坂田新社長には、計画段階から陣頭指揮を執ってもらう。坂田は、入社以来、ビジネスソリューションの営業に長く携わってきた。直接顧客とかかわる豊富な経験がある。また、さまざまな課題について深く掘り下げて、的確に解決する能力がある。そしてそれを実現する粘り強さがある。数年前から、後継者の一人として携わってきてもらい、さまざまな仕事を経験してもらった。今後の成長戦略を着実に進めていくことができる」との期待を表明した。

 このほか、「マーケットの変化が激しいのがいまの時代。成長路線を引っ張る上で求められる、変化をとらえる感覚、課題解決のスピード感、行動力、チームをまとめる力を評価した。坂田自身、順風満帆な会社人生ではなく、若いときには、やめてしまった事業にも深くかかわっていた時期もあり、悔しい思いをしてきたはずである。そうした経験から、事業構造改革を進めるなかで、次になにをやるべきかということも考えてきた。また、IT分野についても強い関心を持っている」とした。

キヤノンMJ 代表取締役会長の村瀬治男氏

 一方、キヤノンMJ 代表取締役会長の村瀬治男氏は、「私自身、キヤノンMJに異動して10数年を経過したが、節目、節目で、新たに皮をむき、新たな仕組みに変えていくことを経験してきた。2016年から2020年は、キヤノンMJだけでなく、日本にとっても大事な5年になる。その5カ年を準備するという意味でも、坂田新社長に新たな指揮を執ってもらう。本来ならば、私も一緒に飛び降りたいところだが、そのまま放り出すのではなく、別の面からサポートしたい。社業よりも、外の活動に時間を取られており、経験をしたことがない映画やテレビの業界団体での活動にも挑戦している。社会全般のなかでの活動、そしてキヤノンMJの進むべき道のなかで、坂田新社長をサポートしていく」と話している。

大河原 克行