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日本HP、用途特化型高密度サーバー「Moonshot」向けカートリッジ4モデル

64ビットARMやXeon搭載モデルを追加、適用用途を拡大

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は6日、ワークロード特化型の超高密度型サーバーシステム「HP Moonshot System」(以下、Moonshot)において、新たなカートリッジ(サーバーモジュール)4機種を提供すると発表した。

HP Moonshot System
各種カートリッジが提供されている

 「Moonshot」は、特定のワークロードに最適化することで、スペースと消費電力、コストなどを大幅に低減可能にする“Software Defined Server”。4.3Uサイズの筐体「HP Moonshot 1500シャーシ」に最大45枚のカートリッジを搭載できるが、カートリッジの中には4ノード分の物理PCリソース(CPU、メモリ、SSD)を搭載した「ProLiant m700」もラインアップされており、各リソースが独立して動作するため、最大で180ノードを1つの筐体に収納可能という、これまでにないレベルの超高密度を実現している。

 現在提供されているカートリッジは、仮想化技術を用いず、1人が1つの物理リソースを専有するHDI(Hosted Desktop Infrastructure)向けのProLiant m700と、Webサーバーやホスティングといった用途に向けて提供されている「ProLiant m300」だけだったが、今回は新たに4種類を追加した。

 日本HP エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー製品統括本部 HPサーバー事業統括本部 プロダクトマーケティング本部の宮本義敬本部長は、「アプリケーションに最適なCPU、メモリ、ストレージは何か?という観点から、それぞれのサーバーを作っていくのがMoonshotで、ある特定のワークロードなら効果を発揮する。日本でも手応えを感じており、では次はどこか?という観点で新たに4つのカートリッジをラインアップした」と説明する。

HP Moonshot System
宮本義敬氏

 新たに提供される製品のうち「ProLiant m350」は、Webホスティングを想定したもの。ProLiant m300がAtom C2750(2.4GHz、8コア)を1基のみ搭載しているのに対し、ProLiant m350はAtom C2730(1.7GHz、8コア)を4基搭載しているため、1シャーシに180ノード、1440コアという超高密度環境を実現する。

 プロダクトマーケティング本部 ハイパースケールサーバー製品部 プロダクトマネージャーの阿部敬則氏は、「従来型ラックサーバーではラック9本(サーバー360台)だったものが、ProLiant m300ではラック1本(8シャーシ・360ノード)で済んだ。さらにProLiant m350なら、13Uサイズ(3シャーシ・480ノード)になる。サービス事業者に非常な大きなインパクトがある」と、その効果をアピールした。

さらなる高密度化を実現
ProLiant m350を手にする阿部敬則氏
ProLiant m300でも、ラック9本分のサーバーを1本分まで省スペース化できたが、ProLiant m350ではさらに13Uまで集約できるという

 2つ目の「HP ProLiant m710」では、初めてXeon(Xeon E3 1.8GHz、4コア)を搭載した。用途としては、今後ニーズ拡大が見込まれるビデオトランスコーディング、サーバーベースコンピューティング(SBC)などを想定する。「トランスコーディングは従来、アプライアンスベースでのシステムが多かったが、ProLiant m710が搭載する統合GPUを活用することにより、ラックユニットあたり最大20倍のストリーム性能を実現できる」(阿部氏)とのこと。

ProLiant m710は、ビデオトランスコーディングやSBCといった用途に適しているという

 3つ目の「HP ProLiant m400」は、アプライドマイクロの64ビットARMプロセッサ(2.4GHz、8コア)を採用。1カートリッジで64GBのメモリを搭載できるほか、I/Oが統合されているからボトルネックになりにくいこと、ARMプロセッサならではの低消費電力(TDP 45W)であることから、HPCでの利用を想定する。

ProLiant m400はHPCを想定して提供される
ProLiant m400

 最後の「HP ProLiant m800」は、ARM Cortex A15(1.0GHz、4コア)と統合DSP、Canonical、HP 2D Torus Mesh FabricとSerial Rapid I/Oを搭載する特徴。従来と比べ3倍の帯域幅を持ち、90%低いレイテンシのデータスループットを実現することから、ビックデータのリアルタイムアナリティクスなどに適しているとした。

 なおMoonshotは、特定のワークロード、アプリケーションごとの最適化といったアプローチを目指しているので、日本HP1社だけでは実現できないことも多く、そのために、さまざまなベンダーとのエコシステムを構築しているとのこと。そのため、例えばProLiant m710を利用したトランスコーディングではharmonic、Vantrix、SBCではCitrixといったパートナーと共同でソリューション化を進めているという。

 国内でも、Moonshot Venture Partnership(MVP)に、TIS、日本ビジネスシステムズ、ネットワールド、パナソニックIS、理経の5社が加わり、新しい市場の開拓を共同で進めていく意向だ。

Moonshot Venture Partnership(MVP)に5社が加入
さまざまなパートナーとのエコシステムを構築

 シャーシ、15カートリッジ、スイッチを含めたシステムの参考価格は、ProLiant m350が1603万3000円(税別)から、ProLiant m710が1046万4000円(税別)から、ProLiant m400が1104万9000円(税別)から、ProLiant m800が1534万3000円(税別)から。カートリッジは15枚単位での販売になる。

石井 一志