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日立、情報・通信システム事業で2015年度に売上高2兆1000億円規模に

海外売上比率は2015年度に35%まで拡大

日立製作所 執行役専務 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社・齊藤裕社長

 日立製作所は、情報・通信システム事業の取り組みについて説明を行い、2015年度には売上高で2兆1000億円、営業利益では2100億円、EBIT率は9.8%。海外売上高比率は35%の7350億円に、サービス売上高比率は65%以上に高める姿勢を改めて強調した。

 日立製作所 執行役専務 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社・齊藤裕社長は、「2000億円以上の営業利益を確保する規模でなくては、グローバルでは生き残れない。10%の営業利益が出ないと一人前ではない。また、投資ができるだけのフリーキャッシュフローを確保することも優先課題である。情報・通信システムグループは、Growth、Global、Groupの3Gにより、グローバルメジャープレーヤーを目指す」との姿勢を示した。情報・通信システム事業では、2008年度の1766億円の営業利益が過去最高となっており、それを上回る目標となる。

 また、「過去3年間で約900億円のM&Aを行っており、2015年度には1900億円の貢献があった。今後、M&A資金として、年間500億円程度を捻出したい」との考えも示した。

 日立製作所の情報・通信システム事業の2013年度上期実績は、売上高が前年同期比6%増の8847億円、営業利益が41億円増の313億円。サービスやATMの売上げ増や為替影響などにより増収。だが、営業利益は一部不採算案件により、収益性低下が影響。しかし、売上げ増や原価低減施策の推進により増益。2013年度通期見通しは、売上高が前年比4%増の1兆8600億円と上方修正。営業利益は153億円増の1200億円。海外売上高比率は前年の26%から31%へと拡大。サービスの構成比は60%から63%に高める。

2013年度上期実績・通期見通し
Growth、Global、Group、の3Gによりグローバルメジャープレーヤーへ

 「サービスの好調や為替影響などにより売上高は上方修正した。不採算案件は今年度でほぼ収束の方向に向かうと見ており、見通し達成に向けて、ほぼ計画通りに推移している。クラウドなどのビッグプロジェクトもあり、受注は堅調。番号制度や年金制度対応といった案件が上乗せされる。不採算案件についても、コンロトール下に入っている」とした。

 また、「これからは攻めのITであり、企業体質を変えたいという要望が多い。試行錯誤の期間も必要。提案力が弱い、追随力が弱いということが原因で、構築しながら混乱するといったことが発生する。一緒になって作り上げていくということをプロジェクトの中に組み込む必要がある」などとした。

 さらに齊藤氏は、今年度から日立の情報・通信システム事業を担当しているが、「私がこれまで担当していた日立のインフラ事業は、駆逐艦の集まりという印象があったが、情報・通信システムは、空母を中心に艦隊を組んでいる。HDSを中心に展開する体制を構築しているのに加えて、コンサルティングの力を組み合わせることができ、さらにグループ会社の力も活用できる。これはまさに連合艦隊のようなもの。今後、トランスフォーメーションを推進するなかで、これが明確な形になってくる。2015年度の10%の営業利益率に向けて形が整いつつある。こっちにきて、やることはいっぱいあると感じている。全社のなかで、社会イノベーション事業をどう推進していくかが課題になる」などとした。

 クローバルIT市場は、2015年までの平均成長率は海外が20%増、国内は6%増とされており、また社会インフラの投資は、2025年までに5%増の成長が見込まれているという。

 「新興国を中心に社会インフラ投資が増加するのは明らかだが、先進国においても、既存設備の老朽化などの問題もある。日本、北米、中国、欧州といった北半球に加えて、ブラジル、豪州、インド/ASEAN、サブサハラなどの南半球の拠点を活用し、社会イノベーション事業をITで牽引。フロントのコンサルティング機能を強化するとともに、全社が持つ幅広い事業ノウハウを活用。ここにビッグデータやクラウドといったITをIntelligent Operationsとして事業基盤を構築中である」とした。

 グローバル事業に関しては、日立コンサルティングを核に、社会イノベーション事業の拡大を目指す「ソリューション提案力強化」、日立データシステムズを核に、ソフトおよびITサービスで高付加価値化を図る「ITサービス基盤強化」を掲げた。

 ソリューション提案力強化として、2013年11月に買収した、インドのプリズムペイメントサービスにより、インドにおけるATMやカード決済端末の提供から運用サービスまでを含めた包括的なペイメントサービスをワンストップで提供。「日本や中国市場においては、ATMでトップシェアを持つ強みも生かして、金融チャネルソリューションの展開に力を注いでいくことになる」とした。

海外売上比率を2015年度に35%まで高める
新興国を中心に活発化する社会インフラ投資
グローバル事業の拡大~「One Hitachi」で顧客価値を提供
ITソリューション提案力、ITサービス基盤を強化
金融チャネルでは、インド企業買収により事業を拡大
海外売上高を2012年度の4581億円から、2015年度には7350億円へ

 一方で、ITサービス基盤の強化では、データを高付加価値化する先進ソリューションの提供、サービスを簡単に導入するための統合プラットフォームソリューションの事業規模拡大に取り組むとし、統合プラットフォームソリューションとして、ストレージクラウドサービスの「Hitachi Cloud Services」、50PBを超えるデータを運用中の「マネージドサービス」、コンテンツ管理ミドルウェアとしてはコンテンツアーカイブソリューションの「Hitachi Content Platform Anyware」、プライベートクラウド用統合プラットフォームの「Hitachi Unified Compute Platform」のラインアップ拡充などの取り組みを挙げた。

 ビッグデータの売上高は2015年度に1500億円を目指しており、2012年度は100億円の実績、2013年度は300億円の売上げを見込む。日立製作所 執行役常務 情報・通信システム社 CSO兼CIOの渡部眞也氏は、「ビッグデータ関連の売上高は着実に上昇している。コンサルティングおよびサービスの売上高構成比が3分の1、残りの3分の2がシステムプロダクトになる。ビッグデータ関連事業では、10%以上の営業利益率になることを期待している」とした。

 サービス事業に関しては、プロジェクトマネジメントの強化による「システム構築サービスの高収益化」、コンサルティングおよびアナリティクスによる経営支援サービスやアウトソーシングによる業務運用サービスによる「経営支援サービス、業務運用サービス、製品サービス事業領域の拡大」の2点を挙げる。

 国内では、金融分野における大規模システムの更改、公共分野ではアベノミクスによる公共投資の活性化や番号制度などによる提案機会の増加、製造・流通分野におけるクラウドや新規サービス拡大による投資の増加、社会インフラではビッグデータ利活用分野での提案機会の増加があると考えており、「しっかりとした提案を、日立自らが行っていく体制づくりが必要である。顧客ニーズに対応した提案力の強化や人員の最適配置などにより、着実な受注推進を図る」とした。

 また、プロジェクトマネジメントの強化では、上流工程の改善により、契約やサービス内容の曖昧性を排除。新分野や新技術にも対応した品質管理エキスパートの高度化に取り組むという。

サービス事業の強化
国内SI事業では、アベノミクスで拡大する国内需要で確実な受注を推進し、プロジェクトマネジメントを強化

 また、アウトソーシングサービスの強化として、業務運用サービスでは、情報システム全体を包括したサービスを提案。「ここは、現場をよく知る日立が差別化できる領域。日立の強みであるモノづくり技術、OT、ITをアウトソーシングで提供し、高品質で、高信頼な情報システムサービスを提供していく」とした。

 2014年3月には、東京電力の情報子会社であるテプコシステムズの運用サービス業務などの一部会社分割により、日立システムパワーサービスを設立。これもアウトソーシング事業の強化につながるとしている。

 さらに、アナリティクスに関しては、ビッグデータの利活用により、新たな顧客価値と事業機会を創出。顧客情報システムと異業種のユーザー情報の融合、スマートフォンおよびキャリア通信ネットワーク技術革新により、ビッグデータアナリティクス市場の拡大に対応。2013年4月には米国ビッグデータラボ、2013年6月にはブラジル研究所、2013年10月には欧州ビッグデータラボを設置。日立イノベイティブ・アナリティクス・グローバルセンタにより、日本を中心としたアナリティクスを行う体制を作ることで、現場での課題解決を実行。イノベーション推進やコンサルティング強化に取り組むほか、システムプロダクトとIT・クラウドを結んだ、世界最先端の研究開発体制を展開していくなどとした。

 また、「情報・通信システム事業におけるネットワーク事業も、データアナリティクスのなかでも重要な意味を持つ。ここには手を入れたい」とした。

業務運用サービスの強化
アナリティクスの強化

 そのほか2013年4月には、オートモーティブシステムズのCIS本部を情報・通信システムに移管。自動車関連の事業のノウハウ、知見を活用したスマートモビリティサービスを展開。5月には日立テレマティクスデータ加工配信サービスの提供を開始したことにも言及した。

 一方で、財務基盤強化としては、Hitachi Smart Transformation Projectの効果により、2013年度から2015年までの累計で530億円のコスト低減を図るほか、キャッシュフロー拡大、投資効率向上、戦略投資の実行に取り組むとした。

財務基盤強化
コスト削減の実績と見通し
2015年度にはEBITを9.8%まで高める
2015年度の業務目標

大河原 克行