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日立、グローバル統一ブランド「Hitachi Cloud」を展開
さまざまなクラウドを統合的に利用できるフェデレーテッドクラウドを提供
(2014/8/26 14:26)
株式会社日立製作所(以下、日立)は26日、クラウド製品およびサービス群を体系化し、新たなクラウド基盤を提供すると発表した。その第1弾として、プライベートクラウドと、日立が運用管理するマネージドクラウドやAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureなどのパートナークラウドを適材適所で組み合わせ、シームレスに利用可能なクラウド環境を実現する新サービス「フェデレーテッドクラウド」を、10月から順次提供を開始する。
これにより、業務アプリケーションの特性にあわせたクラウド利用や、複数のクラウド上に配置された業務アプリケーションを効率的に運用管理することが可能になり、IT投資全体の最適化が図れるという。
また、日立 情報・通信システム社 システム&サービス部門CEOの塩塚啓一執行役常務は、「これまでは当社では、クラウドサービスを、Harmonious Cloudというブランドで展開してきたが、今後は、グループ会社約900社が展開するクラウドサービスを、『Hitachi Cloud』というグローバル統一ブランドとして展開する。クラウド領域には、これまでにも多くの投資を行ってきており、この分野で必ず貢献できると考えている」と述べた。
出前クラウド フェデレーテッド エディションなどの新サービスを投入
今回、新たなクラウド基盤の第1弾として発表したフェデレーテッドクラウドでは、パートナークラウドを含めた複数のクラウドを一元的な監視、運用を行う「フェデレーテッドポータル」を開発。これを2015年4月から利用できるようにする。これに先行する形で、プライベートクラウド環境を迅速に構築できる「出前クラウド」において、フェデレーテッドポータルを12月から提供する。
「サーバー、ストレージを格納したラックを、そのまま顧客の場に移行して運用するのが出前クラウド。ここにフェデレーテッドポータルを付加して、『出前クラウド フェデレーテッド エディション』として先行提供する」(日立 情報・通信システム社 クラウドサービス事業部の中村輝雄事業主管)という。
出前クラウド フェデレーテッド エディションの価格は月額60万円から、一時金が15万円から。
また、複数のクラウドを連携させるために、日立の国内データセンター間をつなぐネットワークを再編。クラウド統合ネットワークとして順次提供する。具体的には、首都圏にある3カ所のデータセンターを数msレベルのレイテンシで、最大320Gbpsまで拡張可能な広帯域ネットワークで密結合した「首都圏トライアングル」(仮称)を構築し、これを利用した高速バックアップサービスを10月に提供を開始。さらに、12月には首都圏トライアングルとAWSを広帯域ネットワークで密結合するほか、今後はMicrosoft Azureも首都圏トライアングルに接続する予定だという。
高速バックアップ用ネットワークサービスは月額200万円から、一時金が15万円から。クラウド間接続サービスは月額50万円から、一時金が15万円から。
さらに、顧客の環境から外部のパートナークラウドを、安全、容易に利用するための各種セキュリティサービスを「クラウドセキュリティ」として提供する。まず、プライベートクラウドや日立のマネージドクラウドから、パートナークラウドへのシングルサインオンを実現するセキュリティゲートウェイサービスを2014年12月から提供。同サービスでは、データの暗号化やアクセスコントロール機能などを順次強化するという。またクラウドセキュリティサービスには、Security Operation Centerのスタッフによる24時間365日体制での外部アタック監視などが含まれる。
「Office 365を活用したいが、情報が外部に漏れるのではないかという懸念がユーザー企業にはある。こうした問題を解決できるサービスになる」(中村事業主管)とした。
セキュリティゲートウェイサービスは、月額90万円から、一時金が150万円から。
そのほか、クラウド間マイグレーション自動化のためのツールも開発して提供することになるという。
他社クラウドとワンパッケージで提供することの重要性
日立 情報・通信システム社 システム&サービス部門CEOの塩塚啓一執行役常務は、「フェデレーテッドクラウドにより、AWSなどのパートナークラウドを、少し味見して、うまくいかなかったらやめるといったこともできるようになる。また、パートナークラウドを利用することで、セキュアな環境を、迅速に提案できる環境が実現できる。クラウドサービスは、仕組み、仕掛けの話ではなく、ビジネスの話である。クラウドに置き換わる流れのなかで、日立はメインプレーヤーになっていく必要がある。他社のクラウドサービスとの連携によって、他社への移行を懸念するのではなく、ワンパッケージとして提供することが大切である。この市場のど真ん中に自ら乗り出していく」などとした。
また、「日立は、企業の基幹業務を支え続ける高信頼なクラウド基盤の提供、既存アプリケーションの移行や既存システムとの連携までワンストップで提供すること、プライベートからパブリックまで顧客ニーズに応じた形態で提供することを、クラウド事業の基本方針としてきた」と説明し、それをもとにした事例を紹介。
「日本たばこでは100を越える業務インフラをプライベートクラウドへ移行し、管理コストの低減、ITサービスレベルとITガバナンスの向上を実現した。損保ジャパンでは1万8000人の社員、36万人の代理店を結んだ最大規模の金融基幹システムを日立のパブリッククラウドで実現したという事例がある」と話した。
さらに、「業務の効率向上から新たな価値の創出へと情報活用の潮流が変化しており、新たなビジネスがますます発展し、新たな生活スタイルを生むことになる。クラウド環境も質的変化が求められ、形態そのものが変わっていく。その先駆けといえるのが、オリックスバッファローズがファンの行動データをマーケティングに活用し、ファン獲得や満足度向上につなげている例や、テレマティクスデータ応用サービスとしてドライブレコーダーなどの走行データや運行データから、エコ運転分析、安全運転識別を行い、新人ドライバーなどの指導に活用。運送品質の向上、運送コストの削減につなげることができるといった事例だ。安心、安全、エコな社会づくりに大きなインパクトを与えられる」とした。
同社では、今後、フェデレーテッドクラウドのほかに、課金管理やログ管理、ユーザー管理などのサービスビジネス基盤を提供する「SaaSビジネス基盤」、高信頼性クラウドを進化させ、基幹システムにも対応したサービスを提供する「マネージドクラウド」、クラウドの利用方法を実案件の設計情報をベースにカタログ化し、Hitachi Cloudデザインパターンとして10種類を用意。迅速なクラウド利用を促進する「サービスインテグレーション」といった製品、サービス群を投入することになるという。
クラウド関連事業で2015年度の売上高5000億円を目標に
日立製作所では、2013年12月から、グループ会社を含めた事業部門、研究開発部門にまたがる約300人体制のクラウド戦略プロジェクトを立ち上げ、新たなクラウド基盤の開発に取り組んできた経緯がある。
日立グループの900社以上の社員、約32万人が利用するノウハウを活用したサービスの構築のほか、AWSやシトリックス、エクイニクス、マイクロソフト、レッドハット、セールスフォース・ドットコム、ベライゾン、ヴイエムウェアなどとのアライアンスを強化し、異なるクラウドをシームレスに、セキュアに接続する環境を提案しているという。
2014年3月には、先端クラウドラボを発足。パートナー企業とともに、各社の複数サービスを効果的に連携させた新サービスを開発している。
同社では、国内クラウド市場は2017年度まで、パブリッククラウドの需要が急速な拡大し、プライベートクラウドと同等の市場規模になると予測している。
「ビジネスニーズの多様化、高度化に対応したサービスを強化。データを活用した新サービスへの対応、迅速な対応がグローバルに求められている。これに向けて、日立の実業および社内IT運用ノウハウをサービス化とともに、パートナーとの協創による強化、という2つの方向から対応していく。仕組み、仕掛けではなく、クラウドを利用するための基準、運用ノウハウをワンパッケージで提供したい。また、パートナーとの連携で迅速にサービスを提供できるという強みも発揮できる」(塩塚執行役常務)とした。
同社ではクラウド関連事業として、2015年度には、売上高5000億円を目標にしており、「2014年度には3500~3600億円の事業ボリュームを行うことで、クラウド事業としては国内ナンバーワンになる」(同)とのこと。
また、Hitachi Cloudへのブランド統一によって、グループ各社が持つクラウドサービスを、グループ内の別会社が販売できるようになるといった動きも開始することになるという。