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富士通の次世代ものづくりクラウド、国産初のジェット旅客機の製造・組立を支援

写真提供:三菱航空機株式会社

 富士通株式会社は13日、三菱航空機株式会社が開発を進めている次世代のリージョナルジェット機「MRJ」の主要構造部品の製造と最終組み立てを行う三菱重工業株式会社 名古屋航空宇宙システム製作所(以下、三菱重工名航)に、次世代ものづくり環境「エンジニアリングクラウド」を導入したと発表した。

 航空機の設計・製造には、国内外の複数のパートナーとの共同作業が不可欠であり、シームレスに設計情報を共有することが必要という。しかしながら、遠隔地との情報共有やセキュリティ面の考慮などから、その実現には多くの時間とコストがかかっていた。

 そのため三菱重工名航では、3次元CADシステムをプライベートクラウド化し、端末側にデータを残さないシンクライアント環境での利用を検討していた。その実現には、特別な専用ワークステーションや高速回線を必要としないことも重要な要件となった。

 これらの課題を解決するため、「エンジニアリングクラウド」の採用を決定し、シンクライアント型のシステムを構築。「エンジニアリングクラウド」は、高速シンクライアント技術「RVEC」を採用することで、大量な設計データやアプリケーションなどをクラウド基盤に集約し、時間や場所、PCなどの端末環境にとらわれずにサービスを利用できるのが特徴となる。

新システムのイメージ

 具体的には、3次元CADをネットワークを通してクライアントPCから操作できる環境を整えることで、設計・製造業務の各拠点から手軽・安全に利用可能な設計環境を実現。3次元CADの画面を複数の拠点で共有し操作するコラボレーション環境を整えることで、複数拠点間でのタイムリーなデザインレビューを実現。さらにこれまで各拠点に設置されていた3次元CADのワークステーションとデータなどを集約することで、ITリソースの有効活用や運用管理負荷の軽減を実現する。三菱重工名航は、これらの効果により、作業の効率化やセキュリティの向上、リードタイム短縮、運用負荷の軽減、CADの有効活用を目指す。

 同社では「MRJは、国産初のジェット旅客機として開発されているもので、2013年中に試験機の初飛行を目指している。日本での民間旅客機の量産はYS-11以来、約半世紀ぶりであり、ジェット旅客機としては初という。同機については今後拡大が見込まれるリージョナルジェット機市場をターゲットとしており、国内外の技術を結集し、日本主導で低燃費、低コストで、信頼性の高い旅客機をタイムリーに市場に提供することで、我が国の新たな産業の柱を築くことを目標とする」としている。

(川島 弘之)