ニュース
日立、顧客専用のAIエージェント開発を伴走支援するサービスを提供
2025年3月26日 13:58
株式会社日立製作所(以下、日立)は、建設や輸送、電力、ガス、鉄道などの現場で働くフロントラインワーカーの人手不足の解消や知識継承などの課題解決に向け、熟練者のノウハウを取り込んだ、顧客専用のAIエージェントを提供する「AIエージェント開発・運用・環境提供サービス」を3月31日に販売開始すると発表した。
AIエージェント開発・運用・環境提供サービスは、生成AIを活用した業務効率化やサービスの高度化など、経営改革を推進する顧客を伴走型で支援する「生成AI活用プロフェッショナルサービスpowered by Lumada」のメニューとして提供する。
高度なAIスキルを有する日立のGenAI Professionalが、日立グループにおける数百の事例で獲得したOTナレッジのAI活用スキルと体系化されたツールや技術を使いこなし、顧客に伴走しながら、OTナレッジを活用したAIエージェントを迅速に開発・提供することで、フロントラインワーカーの業務効率向上を支援する。
日立は現在、グループ全体でAIによる業務支援を推進しており、数百の業務向けAIアプリの開発を行っていると説明。例えば、株式会社日立ビルシステムや株式会社日立パワーソリューションズでは、インフラ設備の施工(据え付け工事)やメンテナンス業務に伴う問い合わせ対応、初動判断へのAI活用による業務の負担軽減や効率化の取り組みを進めている。
これらの取り組みの中で、GenAI Professionalは、エスノグラフィーやAIインタビューなどの手法を用いて熟練者の暗黙知を抽出し、多様なフォーマットや構造を持つ帳票・設計文書などの形式知とひも付けて、AIが利用できる学習データを準備するなど、現場でのAI活用の実績を積み重ねてきた。
日立は、こうした事例を通じて獲得したOTナレッジの抽出手法や、業務別のAIアプリ部品、OSSといった先進技術を活用することで、熟練者のノウハウを取り込んだ顧客専用のAIエージェントを提供できる。また、すでに社内で運用実績のあるAIエージェントを基に、顧客の業務に合わせてカスタマイズするため、迅速な導入が可能になる。今回、熟練者のOTナレッジを取り込んだ高精度な回答を生成できるAIエージェントの第一弾として「保守問い合わせAIエージェント」を開発した。
サービスでは、顧客の業務に特化したAIエージェントの開発から、稼働環境の構築・運用まで、エンドツーエンドで支援する。日立のGenAI Professionalが、エスノグラフィーやAIインタビューなどの手法を用いて、熟練者が業務経験から得た直感や判断基準を引き出す。また、顧客固有の設備図面や保全記録など多様なフォーマットを持つ複雑なドキュメントであっても、補正しながら学習データやRAGを構築し、業務で求められる回答精度の実現を支援する。
AIエージェントの開発・実行環境は、AIエージェントの自律的な動作を支援するLangGraphやDifyといったオープンな先進技術を利用できる。また、顧客の業務内容や適用範囲などのニーズに合わせて、パブリッククラウドで小規模に導入・検証することや、プライベートクラウドで機密性が求められるデータを利用するための環境を構築する。さらに、環境は日立がマネージドサービスとして維持・保守するため、顧客は安心してAIエージェントを業務に利用し続けられる。
開発した「保守問い合わせAIエージェント」は、日立グループの問い合わせ業務で実績のあるAIアプリ機能をベースにしており、顧客固有のドキュメントや辞書などを登録することで、迅速かつ正確な回答で業務支援するAIエージェントを実現できる。AIエージェントは、問い合わせ内容を分析し、適切な担当者へ自動配信する機能や、問い合わせ内容を自動で深掘りし、必要な情報を収集する機能なども備える。これらの機能を、顧客の業務プロセスに応じてカスタマイズすることで、保守や障害対応を行う際の多岐にわたる問い合わせ業務を高度に支援できるため、サービス品質向上と業務効率化に貢献する。
今後も、日立は社内外において、さまざまな業務に特化したAIの活用を促進し、そこで培われた技術・ノウハウをサービスとして提供していくと説明。また、より高度な安全基準が求められる業務へのAI適用を目指し、AIで活用する情報の信頼性判断や、不適切な回答を制限するAIガードレール保護といった研究開発も進めており、これらにより、現場で働くフロントラインワーカーの業務効率を向上し、労働力不足の解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。