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三菱電機、新中期経営戦略を発表 2030年度にソリューション事業で1兆円を目指す

データセンターソリューション強化や独自AIで「事業モデル変革」へ

 三菱電機株式会社は、2030年度を最終年度とする5カ年の新中期経営戦略を発表した。売上高は、2030年度までの年平均成長率で3~5%、2030年度の調整後営業利益率は12%以上(2025年度実績8.5%)、ROEは12%(同9.7%)を目指す。

2030年度財務目標

 また、新中期経営計画では、「スマートエナジー」、「オートメーション」、「ディフェンス&スペース」を中核領域と位置づけるとともに、3領域に関連する事業のうち、Serendieを中核としたソリューション事業と、コンポーネント事業を「強化事業」に設定した。

 そのうち、ソリューション事業の2030年度の売上高は1兆円(2025年度実績は4000億円)、営業利益率は15%を目標に掲げた。

安定的かつ高収益な収益構造の構築

 三菱電機の漆間啓社長 CEOは、「これまでの構造改革中心の取り組みから、事業モデル変革を中心としたフェーズへと移行する」と前置きし、「Serendieを活用したソリューション創出と、コンポーネント強化を両輪で推進し、循環型デジタル・エンジニアリング事業の本格展開によって、企業価値のさらなる向上を目指す」との基本方針を示した。

つながり続ける事業モデルの構築に向けて
三菱電機 執行役社長 CEOの漆間啓氏

 中核領域とする「スマートエナジー」、「オートメーション」においては、PUE1.1のデータセンターの実現に向けた取り組みを開始していることも明らかにした。

 三菱電機の漆間社長 CEOは、「PUE1.1は、かなり高い目標である」とし、「最先端技術を結集した次世代電源システムを導入するとともに、次世代冷却システムといったコンポーネントも、トータルエンジニアリングで統合し、最適な制御によって、PUE1.1を実現することを目指す」と述べた。

エネルギー効率最高水準(PUE1.1)データセンターの実現に向けて

 データセンター向けSCADAシステムやオペレーションサービスにより、チラーやUPSをはじめとした三菱電機の各種コンポーネントを最適に制御するほか、二相式液冷システムなどの開発や、DC800Vや1500Vの次世代電源システムの開発、効率の良いサーバーの冷却および電力変換ロスの削減によって、エネルギー消費量の大幅な削減を進め、PUE1.1の実現につなげる。

 また、三菱電機では2025年11月に、鴻海精密工業との協業を発表。高効率で高度な信頼性を備えたAIデータセンター向けソリューションを、グローバルに供給することで提携している。

 「鴻海精密工業との包括的な提携のもとで、PUE1.1の実現に向けた検討も開始している。データセンター向けに、新たな機器の開発や、フィールドでの実証実験といったところでも連携ができるだろう」とした。

 今回の新中期経営計画では、インフラBA(ビジネスエリア)において、重点施策のひとつに、「エンジニアリング力を生かしたソリューション事業の拡大」を掲げ、「データセンターの安定稼働・運用効率化を実現」、「SerendieとNozomiを活用した事業拡大」、「新設するソリューション実証拠点を活用した事業化の加速」の3点に取り組むと発表した。

重点施策:ソリューション事業

 インフラBAでは、2030年度に売上高で2兆1000億円、調整後営業利益率で13%を目指す。

 そのうち、データセンター関連事業では、2030年度に売上高4000億円を目指すとした。

重点施策:ソリューション事業(データセンター)

 三菱電機が持つ電源システムやIT Coolingシステム、光デバイス、監視・制御システム、FA関連コンポーネントなどを活用。三菱電機 常務執行役 インフラBAオーナーの根来秀人氏は、「データセンター関連事業で培ったナレッジや、三菱電機およびパートナーの最先端技術を結集し、次世代電源システム、次世代冷却システム、最適省エネソリューションを提供する」としたほか、「鴻海との協業では、フィールド実証を通じて、AIデータセンター向けの高効率、高信頼性ソリューションを創出するとともに、空調機器などのコンポーネントから得られたデータを活用し、データセンターの運用の効率化、最適化を実現するソリューションを提供する」と述べた。

三菱電機 常務執行役 インフラBAオーナーの根来秀人氏

 データセンター関連事業のうち、電源システムでは、2030年度に売上高1800億円、2035年度には2700億円を計画している。2025年度実績は865億円となっている。

 鴻海やNVIDIAとの共創を通じて、新たな成長ドライバーと位置づけるAIデータセンター向けDC800V対応の次世代電源システムや関連ソリューションを開発。さらに、三菱電機の豊富なアセットを生かした統合エンジニアリングにより、コンポーネントとソリューションを一括提供し、グループによるシナジーを最大化するという。

重点施策:ソリューション事業(データセンター:電源システム)

 IT Coolingシステムでは、2025年度には320億円の実績だったが、2030年度には売上高1000億円、2035年度には3000億円以上に成長させる目標を掲げた。

 CRAC(Computer Room Air Conditioner)やCRAH(Computer Room Air Handler)といった空冷システムから、単相式および二相式の液冷システムまで、顧客ニーズに合わせた幅広いコンポーネントをラインアップしている強みを生かすほか、工事、運用、保守までを含めたデータセンタートータル冷却ソリューションを一貫して提供するという。

 三菱電機 常務執行役 ライフBAオーナーの尋木保行氏は、「約10年前に買収したイタリアの子会社を中心にして幅広い冷却システムを品ぞろえしている。急速な成長が期待される二相式液冷システムのスタートアップ企業にも出資しており、AIデータセンターへの対応を強化している。さまざまなデータセンターに、省エネ性の高い、最適なIT Coolingシステムをワンストップで提供することができる」と胸を張った。

重点施策:ソリューション事業(データセンター:IT Coolingシステム)
三菱電機 常務執行役 ライフBAオーナーの尋木保行氏

 さらに、一般空調や産業空調で培ってきた熱処理の知見をもとに、地域冷暖房などに向けて、データセンターの排熱の高度再利用にも取り組むという。この分野では他社との協業やM&Aにも積極的に取り組むほか、北米市場では、生産体制を含めた事業基盤の確立を進めるという。

 また、光デバイスでは、EMLチップの生産能力を2029年度までに、3倍強に増強(2025年度比)。超高速EMLチップにおける圧倒的シェアを堅持する。

 三菱電機 常務執行役 半導体・デバイス事業本部長の竹見政義氏は、「業界トップ企業のニーズに最適化したEMLチップをいち早く開発するとともに、リン化インジウムによる次世代CPO向け光デバイスを開発することにより、中長期の成長を加速する。AI需要の爆発的拡大によるビジネス機会をしっかりととらえたい」と語った。

重点施策:ソリューション事業(データセンター:光デバイス)
三菱電機 常務執行役 半導体・デバイス事業本部長の竹見政義氏

 一方、ソリューション事業について、三菱電機インフラBAオーナーの根来氏は、「三菱電機は、豊富な納入実績と顧客基盤を有しており、そこに、Serendieを活用したデジタルサービスを掛け合わせ、新たなソリューション事業を展開する。エネルギー、ファシリティ、モビリティ分野で、省エネや省人化などの顧客課題を解決する新たなソリューションを提供する」と述べた。

 グローバルで競争力を持つコンポーネントを中心に規模を拡大し、保守を通じて顧客とつながり続けることで、現場のデータを継続的に獲得。これによって、ソリューションの創出に向けた基盤を強化し、Serendieを活用しながら、2つの強化事業との連携により、高度なソリューションの実現につなげるという。

 三菱電機の漆間社長 CEOは、「Serendieは、現時点では、顧客への個別対応になっている部分が多い。標準化する必要があると考えている。また、三菱電機自らが、データマネジメントを事業に生かすフェーズに移らなくてはならない。ソリューション事業を加速させるには、Serendieを、どのように使い倒すのかということを考えていく必要がある。Serendieによって高い収益率を有するソリューション事業を確立し、収益性を向上させる」とした。

 買収したNozomi Networksについては、高度なセキュリティが求められるインフラ向けコンポーネントへの実装が進み、OT領域でのセキュリティ強化を実現。「三菱電機のPLC、NP、サーボ装置などの製品に、機器のデータを収集、可視化するソフトウェアを搭載し、付加価値を高めている。これは、OT領域に対するサイバー攻撃への対応にも効果がある。セキュリティレベルを高めるとともに、三菱電機の事業領域の幅を広げることにもつながっている。新たなソリューション提案が始まっている」と述べた。

 新設するソリューション実証拠点は、インフラBAが保有するビジネスナレッジとソリューションをリアルに体験できる実証拠点とし、顧客を巻き込んでソリューションを共創することになるという。

 具体的には、Serendieを通じて、横浜、伊丹、神戸、和歌山、稲沢、丸亀、ボストン、イタリアといった各拠点のデータをつなぎ、エネルギーの最適運用や、高度な設備保全などの実証を行える環境を構築する。

 三菱電機インフラBAオーナーの根来氏は、「実証拠点を活用して社会課題を解決する新たな価値を、顧客やパートナーとともに創出することができる」と期待を寄せた。

重点施策:ソリューション事業(実証拠点構想)

 一方、三菱電機では、今後5年間の成長投資として2兆円を計画。さらに、追加投資枠として1兆円を設定。強化事業への集中投資とともに、M&Aも実施する考えだ。また、人的資本への投資を、前中期経営計画比で1.5倍に拡大。2030年度までに、2万人のDX・AX人財を育成する計画も発表した。

 三菱電機の漆間社長 CEOは、「着実に変革を遂げてきた成果を足掛かりに、新中期経営計画では、リスクを恐れずに、新たな発想で価値を次々と創出することができるイノベーティブカンパニーになることを目指す」と宣言。「収益性と資本効率の向上を最重視するとともに、安定的な売上高の成長を図る」との方針を示した。

 また、強化事業としている「ソリューション事業」と「コンポーネント事業」については、「それぞれの事業の強化とともに、領域内での事業間連携を図ることで成長させ、収益性向上と成長を実現したい。コンポーネントと保守/サービスを起点に顧客とつながり続け、高度なソリューションを創出することで、同時に成長させ、安定的で、高収益な収益構造を構築する」と語った。

 なお、AIについては、「三菱電機が目指すAIは、現場で起こる想定外の事象に対しても自律的な判断が可能なAIである。モノづくりの知見や機器制御の知見を生かしたフィジカルAIと、パートナーが持つ最先端の汎用的なAI技術の組み合わせが不可欠である。これにより、現場の変化に即座に対応し、安全に動く三菱電機独自のAIを実現する」と述べ、「現場ナレッジと、AIおよびデジタルを掛け合わせたコンポーネントの強化を進める。現場ナレッジをデジタル空間に集約し、AI学習に活用することで、独自のフィジカルAIを構築し、コンポーネントの付加価値を高める。また、工場の製造装置やロボットなどにもAIを実装し、現場で自律的に、瞬時に判断し、制御することを目指す」とした。

三菱電機独自のAI

 三菱電機では、無人化工場の実現を掲げており、製造現場の自動化やスタッフ業務の自律化、現場作業の無人化により、工場全体の自律的協調制御を実現。2028年度以降には実用化する考えだ。

 さらに、三菱電機グループが培った現場ナレッジ、コンポーネント、顧客からのデータに、Serendieや最先端のAIを掛け合わせることで、顧客の経営課題を解決するソリューションの創出においては、提携関係にあるタイのCPグループ(チャロン・ポカパン・グループ)や、台湾の鴻海精密工業といったグローバル先進企業との提携に加えて、燈やsakana.ai、Tulip Interfaces、ZutaCoreといった技術パートナーとの連携も進めることも強調した。

高度なソリューション創出への取り組み事例