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NEC IR Day 2026を開催、2030中期経営計画の柱であるITサービスと社会インフラの成長戦略を説明
2026年6月3日 06:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は1日、アナリストを対象にした「NEC IR Day 2026」を開催し、新たに発表した「2030中期経営計画」におけるITサービス事業および社会インフラ事業の取り組みについて説明した。
ITサービスについては、NEC 執行役 副社長兼COO、ITサービス事業担当の藤川修氏が説明。「パブリック領域においては、行政サービスの効率化を目的としたシステムの共通化・標準化の機会をとらえ、日本全体のデジタル公共インフラ構築に貢献する。民需領域ではモダナイゼーションを起点に、データやAIの活用までを含めたAX事業の取り込みにより、シェア拡大を図る」と述べた。また、「収益性については、BluStellarによる高付加価値化と構成比率の上昇がドライバーになる。BluStellar以外の領域においても、生成AIの活用によるSIの生産性向上、開発および保守の標準化・共通化などにより、ITサービス全体の収益性改善を図る。2030中期経営計画においては、AI活用が重要なテーマとなる」などとした。
2030中期経営計画では、ITサービスの売上収益が、2030年度までの年平均成長率で3~5%、Non-GAAP営業利益率では2030年度に20%程度を目標としている。
なお、ITサービスセグメントは、2025年度までの国内ITサービスおよび海外DGDF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)に、新たに国内外のテレコムキャリア向けITサービスと、買収した米国のテレコムキャリア/ブロードバンド事業者向けソフトウェア企業であるCSG Systems Internationalが加わることになる。
CSGは、2025年度実績で、売上高が約1860億円、Non-GAAP営業利益では約260億円となっており、2026年5月に買収手続きが完了した。「高い収益性を持ち、安定的に利益を創出している企業である。テレコムキャリア/ブロードバンド事業者向けのDX市場の拡大、Netcrackerなどとのシナジーにより、米国での収益基盤を強化する」と述べた。
また、藤川副社長は、「AI活用を加速する上で、Anthropicとのグローバル協業が重要な取り組みになる」と宣言。「社内の生産性向上だけでなく、Anthropicとの連携により、一部実装領域において先行的に知見を共有したり、技術支援を受けられたりすることが、NECの優位性につながる。この枠組みを日本国内に限らず、海外グループ企業にも展開することで、グループ全体の競争力向上につなげる」とした。
Anthropicとの提携は、欧州3社であるNEC Software Solutions UK、KMD、Avaloqや、Netcrackerにも広げるほか、アビームコンサルティングにおいても、調査や仮説シミュレーションなどにAnthropicのAIを適用し、構想力、検証力、ガバナンス力の部分に人材シフトを図るという。
2026年6月1日から、NECグループ全社にAnthropicの導入を開始したことにも触れ、これを標準化する形で、開発のなかに組み込んでいくことを明らかにし、「これまでにもさまざまなAIを活用して開発環境の改善に取り組んできたが、これをより加速させることができる。開発領域における効率性、生産性を高め、利益率改善につなげる」との考えを示した。
Anthropicは、日立製作所や富士通とも提携を発表しているが、「米国本社が、日本企業と提携したのはNECが最初である。先行して、優先的に米国本社の支援を受けることができる点は優位である。独占契約ではないが、グローバルパートナーとしての条件を満たしている必要があり、すべての企業が契約できるわけではない」と説明。さらに、金融、製造、自治体といった業種特化型のAIサービスを共同開発することを検討しており、これをNECが用意したAI Platform Service上で提供していくことになるという。また、NECが持つセキュリティ機能やガードレール機能を組み合わせて、垂直統合型でのAI提供も可能になり、サービスビジネスを強化できるとした。
一方、NEC独自のモデル開発と提供においては、2026年度中に、2桁億円規模でAIスパコンへの投資を実施。「これはフロンティアAIへの参入が目的ではなく、業種業務特化型のAIモデルやAIエージェントを、NECのドメインナレッジと組み合わせて、効率的に開発していくことが目的になる」とした。
BluStellarでは、2030年度に、売上収益で1兆3000億円、Non-GAAP営業利益率25%を目指すことになる。
NEC 執行役Corporate EVP、BluStellar推進担当の木村哲彦氏は、「AIサービスの需要拡大を新たな事業機会としてとらえ、AI Native Companyとして、新たな価値創出を推進する。その中核を担うのがBluStellarになる」と位置づけ、「クライアントゼロの考え方のもと、社内で培った知見を活用し、すべてのBluStellar Scenarioにおいて、AX(AI Transformation)を取り込む。また、パートナー企業の技術を含めた最先端のAI機能群を『AI Platform Service』として提供する。これらを実現するために、AX人材の教育と最適配置を進め、パートナー企業とのアライアンス強化にも取り組む」と述べた。
2027年度までに、BluStellar ScenarioのAX化を進め、2028年度以降に、AX化による効果を生み出すという。
欧州3社の取り組みについても説明した。
藤川副社長は、「欧州においては安定的な成長を遂げており、DGDFにターゲットを絞った戦略は正しかった」と総括。NEC Software Solutions UKは、プロダクトラインやサービスのラインアップを強化し、得意とする警察分野だけでなく、ヘルスケア分野にも事業を拡大。オーストラリアでの事業を開始したことに加えて、ボルトオンM&Aの成果も出ており、今後は事業対象エリアを拡大するという。
KMDは、「事業のカーブアウトなどもあり、当初予定よりは構造改革に時間がかかった」としながらも、2025年1月の社長交代以降、戦略を見直し、成長戦略に向けた新たな計画がスタートしているという。今後も必要な投資を実施していく。Avaloqでは、リカーリングビジネスへのシフトを図るとともに、各種施策の効果により利益率を向上させており、今後は大型M&Aも模索していくという。
豊富なドメインナレッジを強みに防衛・通信・海洋の社会実装を加速
一方、社会インフラは、NEC 執行役 Corporate EVP兼COO、社会インフラ事業担当の永野博之氏が説明した。「社会インフラ事業は、BluStellarとの関連性が薄いと言われるが、2030中期経営計画では、BluStellarのために、社会インフラ事業を推進することになる」と位置づけ、「デジタルインフラやセキュリティが重要テーマとなるなか、経済安全保障領域での事業機会が拡大している。長年にわたり培ってきた豊富なドメインナレッジを強みに、防衛、通信、海洋といった各分野での社会実装を加速する。これにより、日本全体の経済発展に貢献していく」と述べた。
社会インフラでは、売上収益が2030年度までの年平均成長率で3~5%、2030年度のNon-GAAP営業利益率では10%台後半を計画している。そのうち、テレコムサービスの売上収益は年平均成長率で3~5%、Non-GAAP営業利益率では10%台後半とし、防衛、航空・宇宙、海洋によるANS(AeroSpace & National Security)の売上収益は年平均成長率で4~6%、Non-GAAP営業利益率では10%台後半の計画とした。
なお、セグメント変更により、2026年度からはANSにテレコムサービス内のネットワークソリューション部門を統合している。
永野Corporate EVP兼COOは、「テレコムサービスでは、2025年度までの事業構造改革、契約の適正化、棚卸しの適正化などの成果があがり、2030中期経営計画からは、攻めに転じることができる」とした。
6G時代の実現や、AIネイティブ社会の実現に向けて、利益率が高いvRANをはじめとしたソフトウェア領域に注力。日本発の高品質、高信頼な通信技術と、NECが持つ実装や運用の知見を活用し、グローバル市場に再度展開するという。
ANSの海洋事業については、「2年間にわたる赤字のトンネルを通過し、2026年度からは確実に黒字化できる。マルチコアファイバー技術による大容量通信技術と、アジア太平洋地域での豊富なナレッジを生かして市場シェア拡大に取り組む」と強気の姿勢をみせた。2030年度には、海底ケーブル市場における世界シェアで35%の獲得を目指す。
アジア太平洋地域では、日本とシンガポールを結ぶCandleと、AUG Eastという2件の大型案件を受注。これらは2030中期経営計画期間中の売上計上を見込んでいるという。
NEC Corporate SVP兼 海洋システム事業部門長の植松智則氏は、「シェア35%を獲得するためには、工場の生産能力の増強と、ケーブル敷設の能力の強化が必要である。競合他社は、7~8隻のケーブル敷設船や保守船を所有している。NECは、今後5年で自社保有とチャーターを含めて、最大5隻程度の確保が必要だと考えている。自社保有により、管理下で敷設工事ができ、ナレッジを蓄積でき、収益性も確保できる。業界全体としても船の老朽化によって、敷設船の枯渇が想定される。自社保有した敷設船の価値が高まることも想定される」と述べた。
宇宙事業については、2029年度以降に利益率が大きく改善するビジネス構造であることを指摘。また防衛事業については、次期防衛力整備計画により、GDP比3.5%に防衛費が増額した場合にも対応できる体制づくりを進めていくという。
NECは2022年度までは、防衛省の中央調達において年間900~1300億円の契約規模であったが、2023年度以降は、年間2900~3200億円に拡大しているという。「競合会社は2割ほど減少しているが、NECは3000億円規模となっている。2026年度も3000億円規模の契約を目指す。2030年度までには4000億円規模の契約を視野に入れたい」とした。
また、政府方針に基づく装備移転や、デュアルユース製品のグローバル拡販を推進。2026年4月には、オーストラリア海軍向け次期汎用フリゲート艦に搭載する機器の大型契約を受注しており、3艦艇に対して、9種類の通信やセンサーなどの装備品を供給する。さらに、インド海軍向けには、複合空中線「UNICORN」を提案しているところだという。
社会インフラ事業では、2026年度からは新たな組織体制をスタートする。防衛事業を、SI系とハードウェア系に分離。これにより、社会インフラ事業として、ネットワークソリューション事業部門、海洋システム事業部門、エアロスペース事業部門、サイバーディフェンス事業部門、ナショナルセキュリティ事業部門、ディフェンスプロダクト事業部門の6つの事業部門体制を確立。さらに、品質保証などを行う社会インフラビジネスオペレーション部門、コンサルティング機能や投資機能を持たせ、全体戦略を検討する社会インフラソリューション部門を設置。
「AIやITのスピードが速いため、考え方を変え、VC投資を起点とする利益の獲得ではなく、情報を集めて革新的な技術やプロダクトをいち早く獲得するための仕組みに移行し、競争力強化を図る。これまではジェントルマンと言われていたNECだが、これからはドーベルマンとして、しっかりと相手に食らいつき、お客さまから信頼を受け、強固な関係を構築していく」と語った。
また、サイバーセキュリティについては、ACD(Active Cyber Defense)への対応や、NEC独自のインテリジェンスとAI技術を融合した次世代サイバーセキュリティサービス「CyIOC(サイオック)」を展開。2027年4月からは、グローバル展開する企業を対象にサービスを提供するという。






