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Box Japanの佐藤新社長が就任会見、2026年度はAIの民主化と市民開発の加速を支援
金融、公共、地方企業など6つのセグメントごとに営業組織の強化も実施
2025年2月27日 06:30
株式会社Box Japanは26日、2025年2月1日付で佐藤範之氏が社長に就任したのにあわせて、就任記者会見を開いた。
佐藤社長は、「Boxは、AIを製品の中心に据えるインテリジェントコンテンツ管理(ICM)の製品戦略を強化しており、Boxが提供する価値が、日本のお客さまのビジネスの発展につながると確信している。多くの課題に対して、パートナーとともに、お客さまの支援を強化し、成長と発展に尽力したい」と述べた。
佐藤社長は大分県出身で、学生時代から湘南エリアに在住。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、1996年に富士通に入社して、営業としてキャリアをスタートした。その後、サン・マイクロシステムズ、セールスフォース・ドットコム、サクセスファクターズにおいて、エンタープライズサービス分野において実績をあげてきた。
Box Japanの創設期である2014年6月に同社に参画し、日本市場の開拓や西日本などのセールス組織の立ち上げなどをリード。Go to market戦略の立案から実行を担い、営業本部のトップとして、日本の企業や組織のDX実現を支援してきた。趣味はビーチライフ全般およびハイキングで、座右の銘は「Work in Life」だという。
就任会見では、2025年2月からスタートした同社 2026年度(FY26)の事業方針について、「プロダクト」「マーケット」「コーポレート」の3点から説明した。
「プロダクト」では、2025年1月にリリースしたEnterprise Advancedを通じたインテリジェントコンテンツ管理基盤の提供により、AIの民主化と市民開発を加速。さらに、2月20日から、すべてのエディションに、AIの利用範囲を拡大し、非構造化データを、AIを活用して高度化し、ワークフローの自動化やすべてのデータの保護も行えるようにしたことを説明した。
「AIをプラットフォームの中心に据えた新たなディビジョンを提供している」とし、Box AI Studioにより、最適なAIエージェントの作成が可能になることや、Box Appsによって提供するインテリジェントノーコードツールの機能により、市民開発を強化し、AIを活用したワークフローの自動化を実現していること、Box AI for Metadataを通じて、メタデータテンプレートの内容に沿ってドキュメントから候補データを抽出するAI機能を提供していることなどを紹介した。
また、「Google CloudやAWS、Azureによるグローバルインフラストラクチャ上で運用することで、ストレージ容量無制限の仕組みを提供し、12万社からエクサバイトを超えるデータを預かっている。この考え方をAIの領域にも適用し、AIクエリーを無制限で利用できるようにした。さまざまなLLMとBoxをつなぎ、さらに使いやすい環境を提案している」と語った。
2つめの「マーケット」では、金融、公共のセグメントに加えて、地方に対して、引き続き注力する姿勢を示し、大企業、中堅企業、中小企業、地方企業、金融、公共という6つのセグメントにおいて営業組織を強化し、業界固有の課題にも対応することになる。
3つめの「コーポレート」では、実行力の強化を打ち出し、これまでの2人のバイスプレジデント(VP)体制から、4人のバイスプレジデント体制へと拡張する。
「Box Japanの社員数は240人となった。今後のチャレンジは、セクショナリズムや官僚化組織との戦いになる。部分最適を追い求めたり、プロセスフローが構築されているために市場変化についていけなかったりといったことに陥らないようにしなくてはならない」としたほか、「社員のエンパワーメントを高めるために、伝統は大切にしながらも、変えていくところは積極的に変えていく。権限を委譲し、意思決定のスピードを向上させ、実行力にこだわった組織にしていく」と語った。
2025年度の振り返り
2025年度(FY25)の成果についても振り返った。
コマーシャルおよびエリア領域の成長により、ライセンス販売が増加したことに加えて、Box Consultingによるコンサルティングの売り上げが好調に推移。日本国内の顧客数は2万社を突破し、日経225の77%の企業が導入。国内コンテンツコラボレーション市場において、4年連続でトップシェアを獲得しているという。
「新たなお客さまとして、JR東日本、トヨタ自動車などがある。また、既存のお客さまの多くが、AI機能を実装した上位エディションに移行している。幅広い業界のお客さまに利用してもらっており、中小企業から大手企業までがBoxを利用している。特に、従業員2000人未満の中堅企業、500人未満の中小企業で構成するコマーシャル領域での売上高が約3割を占めた。さらに、4割近くが関東エリア以外からの売上高となっている。また、導入前やセキュリティリスクに関するコンサルティングサービスを提供するBox Consultingも高い成長を遂げている」。
トヨタ自動車では、全社で利用しているMicrosoft 365と連携させるとともに、容量無制限による非構造化データの保管を評価。セイコーグループでは、グループ全体での導入によるグループガバナンスの強化を実現し、アサヒグループジャパンでは、Box Consultingのチームが並走して、継続的に新たな利活用を提案。マクニカは、日本で初めて、Enterprise Advancedを導入し、全社員がAIを活用するとともに、市民開発を推進しているという。
現在、グローバルにおける日本の売上比率は24.0%に達しており、「円安のなかでは低く反映されるが、来週発表される最新四半期決算では、この比率をさらに上回るだろう」と、日本での事業成長が、グローバルの事業成長を上回っていることを強調した。
さらに、業界水準を上回る更新比率を達成していることも示した。「その背景にあるのは、容量無制限によって、コストを増加させることなく、増え続けるコンテンツに対応できること、社内から情報を漏えいさせず、外部からの攻撃にも対応できるワールドクラスのセキュリティを達成していること、コンテンツやアプリケーション、AIにつながるプラットフォームであり、AIの時代に最適化していることが評価されている」という。
さらに、顧客ごと、あるいはフェーズごとにニーズを理解し、300社を超えるパートナーとともに、最適な提案を行うカスタマサクセスチームの存在が、高い更新率を維持している理由のひとつになっていることも示した。
一方、2013年8月のBox Japanの設立を主導し、それ以来、代表取締役社長を務めてきた古市克典氏は、2月から代表取締役会長に就き、顧客やパートナー企業との関係強化やビジネス開発などに注力している。
古市会長は、「エグゼクティブリレーションに取り組むこと、新たな経営チームへのスムーズトランジションを進めることが、これからの私の役割になる。さらに、Box Japanは、新たなプロジェクトにも取り組んでおり、そこにも積極的に関与していく。内容については具体的にはいえないが、近々発表できる」と語った。
また、「Boxは、日本法人と本社が、特別な関係にある企業であり、経営トップが日本に入れ込んでいる」としたほか、佐藤社長については、「設立直後から一緒に仕事をしてきた。入社してから1年もたたないうちに、1億円の案件を受注し、『神が来た』と思った」とジョーク交じりにこれまでの功績を紹介した。
来日した米Boxのオリビア・ノッテボーンCOOは、Boxを取り巻く環境について説明。「Boxは、次のチャプター(章)に入っている」と前置きし、「Boxのミッションは、仕事にパワーを与えて、世界中のコラボレーションを強化することである。技術が進化し、非構造化データが爆発的に増加し、それがビジネスに大きな影響を与えると見込まれているものの、ほとんどのコンテンツは十分に活用されていないという課題がある。コンテンツはサイロ化し、セキュリティにも課題があり、コンテンツ管理方法は完全に崩壊している。Boxは、最新のICMを実現することで、ワークフローの自動化と、AIを活用したインテリジェンス化を進めている。また、1500を超えるアプリケーションとの連携も実現している。これこそが、エンタープライズにおける非構造化データのためのプラットフォームになる」と述べた。
また、「すでにスタートしているBoxの2026年度においては、コンテンツとAIにおけるリーダーポジションの確立、セキュアで、インテリジェントで、強力なコンテンツワークフローの実現、パートナーとのエコシステムの強化、顧客のコアビジネスの推進を支援、高いパフォーマンスを実現する企業文化と業務の徹底という、5つの戦略の柱に取り組むことになる」と語った。
さらに、「米国を除くと、日本が最も大きい市場であり、重要な市場である。日本の顧客、パートナーとともに多くの時間を費やしたい」とコメントした。