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大塚商会、2024年12月期連結決算で初の売上高1兆円超えを達成 来期は1兆2000億円以上を目指す
2025年2月4日 00:00
大塚商会は2024年12月期の決算を発表した。連結売上高は前年比13.3%増の1兆1076億6800万円、営業利益は同18.1%増の743億6000万円、経常利益は同17.7%増の759億3100万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同12.7%の534億8100万円で、通期売上高が初めて1兆円を突破した。
代表取締役社長である大塚裕司氏は、「連結・単体とも売上高、営業利益、経常利益ともに計画をすべてクリアすることができた。昨年、上期終了時点で上方修正した予算に対し、連結・単体ともに2桁伸長、増収増益と非常に良い形で終了することができた」と好調な業績に満足そうな様子を見せた。
2024年12月期単体業績は、売上高は前年比13.3%増の9851億3400万円、営業利益は同20.2%増の664億9700万円、経常利益は同19.3%増の683億400万円、当期純利益は同13.5%増の489億9300万円。
売上高、経常利益の四半期推移では、「売上高については、特に第4四半期で大きく跳ねることができた。結果として11四半期連続の増収となった。経常利益についても111四半期連続で増益となり、3四半期連続で2桁増とすることができた」と述べ、全四半期で好調となったことを強調している。
なお大塚商会の連結対象企業は現在4社だが、1社がVMware製品を扱うネットワールド。「上半期決算時点では、VMware製品の販売形態変更に伴い、下半期の売上高に勘案する必要があるとお話ししたが、おかげさまでネットワールドの売上高は147億円のプラスとなった。VMware製品の販売形態変更の影響を、その他のソリューションでカバーすることができた」(大塚社長)。
連結セグメント別売上高は、システムインテグレーション事業が前年比16.1%増の7317億1200万円、サービス&サポート事業が同8.3%増の3759億5500万円。
単体の詳細セグメント別売上高は、SI関連商品が5528億1900万円、受託ソフト等が604億3100万円、サプライが1962億8600万円、保守等が1755億9700万円。
「セグメント別は、連結ではSI事業が大きく伸びた。サービス&サポートについても非常に堅調な形で順調な成果となった。単体の詳細セグメント別も同様で、SIが18.2%の伸び、受託ソフトが4%増、サプライが5.8%増、保守等は2桁の11.0%増と、全項目で前年増と、勢いを持って終了することができた」と、好調であることをアピールした。
単体の重点戦略事業の売り上げは、通販事業「たのめーる」は前年比5.8%増の2096億8600万円、オリジナル業務ソフト「SMILE」は同0.5%増の160億2900万円、ドキュメントソリューション「ODS」は同1.2%増の575億6000万円、セキュリティソリューションの「OSM」は同17.9%増の1273億3100万円。
販売台数を見ると、複写機は前年比1.4%減の3万5847台で、そのうちカラー複写機は同1.2%減の3万5119台。サーバーは同13.5%減の1万8637台、パソコンは同22.7%増の142万4555台で、クライアント機の合計では同22.1%増の148万883台。
「重点戦略の状況だが、1年間を通じ、パソコンは非常に高い数字が出た。特に第4四半期は大きく伸長した。(Windowsマシンリプレースの)特需が動き始めたのかなという感覚だ。当社のストックビジネスの柱のひとつ『たのめーる』は、堅調に推移している。これからも多様な商材でニーズを幅広くカバーしていく。『たのめーる』の口座数は212万2708口座で、前年比4.2%増と堅調に推移している。一方、複写機は、やはりマイナスとなっている。第1四半期は増えたものの、それ以降、年間では509台減となる厳しい、難しい環境だ。ただし、業界平均を上回る水準だと思っている。パソコンについては、2020年の第4四半期、2021年の第1四半期にそれまでにない伸長となっているが、これはGIGAスクール需要。これがこの後、リプレース時期にあたるが、当社はその需要もとらえている」。
主なWebサービス(ASP)の利用人数推移は、2024年は443万人が利用している。1999年からスタートしたビジネスで、当時はASPと呼ばれていた。
「このWebサービスは早くから手をつけ、ご覧いただけばわかる通り、大きく伸びている。たのめーるOffice 365、当社で開発したどこでもキャビネットなど、ノンハードウェア系、クラウド系が伸長している。たのめーるも含め、こうしたストックビジネスを伸ばすことによって、安定的な業績の推移を狙っている。過去、リーマンショック時には、ハードは前年比6割ぐらいと大きく落ち込んだものの、ストックビジネスについてはリーマン時も堅調に伸びていた。また、コロナ禍で一度落っこち、さらに収益認識に関する会計基準の適用後で変更があったものの、コピー保守を含めると前年比プラスになる。ストックビジネスを大きく伸ばしていくことが、今回の特需後のやはり安定業績にもつながる。特需をしっかりつかんで販売を伸ばしつつ、ストックビジネスを生かし、安定業績につなげ、特需後の影響を少なくしようと考えている。生産性の改善も含め、これからさらにストックビジネスを積み上げていきたい」とした。
なお、連結キャッシュフローについては、前年に比べ営業キャッシュフローが716億円から377億円と大きく減少している。「2023年と2024年を比較すると、営業キャッシュフローに大きな差があり、339億円減となっている。この理由は、第4四半期の売り上げが非常に好調で、売掛金の残高が大きく伸びた。また、特需に向けてパソコンの在庫を確保している。安定的な成長を目指すよう、必要な投資は続けていく。今回のWindowsリプレース特需に向け、在庫の確保等々、しっかりと準備をしながら対応していきたい。今回キャッシュフローが非常に下がってはいるが、財務的には安定していると考えている」と、大塚社長は理由を説明した。
中・長期経営方針に大きな変更はなし
今後の基本方針と中・長期経営方針は大きな変更はない。取引企業数・一企業当たりの売上高については、“お客様との関係”に関するKPIとして、取引企業数は2.0%増、一企業当たりの売上高は3.0%増を目指す。
受注の状況としては、追加受注額と企業数の構成比では前四半期に取引のある顧客の3割から、翌四半期も追加受注し、追加受注額は年間1000億に迫っているという。全体の受注件数と受注率については、EOSなどによって営業活動活発化し、受注件数は継続的に増加している。AI受注金額シェアとAI受注金額については、大塚商会自身がAI活用を推進中。AIに関連した受注額は高伸長の23年を上回り、24年も前年比5.3%増と前年から伸長している。
「AIは所属部門という色がない。どのセクションからでも幅広い商材を提案していく。当社が進めている、オフィスまるごとという営業活動効率化へ大きく寄与している。私が社長になった頃から、SPRという営業支援システムをカットオーバーし、営業の報告書、活動日報等々も含め全部蓄積してきた。また、基幹データは1995年頃から上場のために整備をし、ビッグデータとして活用できるデータを蓄積してきた。これをAIで活用することで、生産性を上げるとことを意識している。当初は、SPRで科学的な営業活動をすることにより生産性を上げようと考えていた。実際に大きな生産性アップにつながってきたが、その次の段階として、人間をSPRでチェックするだけではなく、AIによって人間が気がつかなかった気付きを生み出す、ということを進めている。見込みの商談の発掘、若手の教育等にもなる」。
こうしたAI活用から、2025年の基本方針として、「お客様に寄り添い、DXとAIでお客様と共に成長する」というスローガンを掲げる。
「昨年のスローガンは、『お客様に寄り添い、DXでお客様とともに成長する』だったことを思い起こすと、ただAIが加わっただけかと思われるかもしれない。基本的な方針は変わらないが、オフィスまるごとを含め、お客さまにしっかり寄り添うことを徹底する。DXで困りごとを解決しつつ、AIを活用することのノウハウをお客さまに提供しながら、さらなる支援をしていきたいと考え、このようなスローガンにした。今年はマイクロソフトのCopilotに加え、アドビやほかの企業からも新しいLLMなどが出て、本当の意味でのAI活用がより身近になるのではないかと考える。当社のノウハウを紹介しながら、お客さまのAI活用を支援していきたい」。
また、Windows 10のサポート終了によるリプレースについては、「2019年の時は、正直入れ替え需要に合わせいろいろなものをお勧めしたかったが、結果として箱売りにとどまっていた。その後の需要、お客さまからの追加受注をあまり獲得できなかった。今回は、オフィスまるごとセールスすることを意識している。現状ではまだ大手先行だが、中堅・中小のリプレースはこれからになる。中堅・中小のお客さまこそ、IT化、DXの実施が遅れている。しっかりと提案しながら、EOSに対してのリプレース需要に応えていきたい」と前置き。
「初期設定、ネットワーク、セキュリティ、アプリケーション、そしてバックアップ、それから業務全体の課題解決、保守サポート、クラウドドキュメントソリューション、AI、またお客さまの困りごとを丸ごと解決できる大塚商会の強みを生かすという意味で、今までと違う特需対応を取りたい」と述べた。
また、大塚商会自身のAI活用として、「AIハピネス」として、心の資本と心理的安全性の改善で業績が向上するという取り組みを行っていることも紹介された。
なお2025年の計画では、売上高は前年比9.5%増の1兆2130億万円、営業利益は同10.7%増の823億円、経常利益は同8.3%増の822億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同2.8%増の550億円。セグメント別売上高では、システムインテグレーション事業は前年比11.0%増の8079億円、サービス&サポート事業は同6.6%増の4051億円を見込む。
大塚社長はこの見通しについて、「社内的にはさらに大きな数字に挑戦をしたいと考えている。が、一部のベンダー、特に外資系企業が取引形態の変更に動いており、そういうのも含めて慎重に策定した。また上期終了時に、前期と同じように必要に応じて全体を見直し、上方修正できるよう頑張りたいと考えている」と話している。