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富士通、環境変化の著しい金融機関を「Uvance for Finance」で支援

自社製ATMは2028年3月に提供終了へ

 富士通株式会社は3日、金融機関向けビジネス戦略説明会を開催した。金融業界は、異業種の参入、ゼロ金利時代の終焉など変化が起こっているが、富士通の金融担当 執行役員常務の八木勝氏は、こうした点を踏まえて「ビジネスの仕方も変えていかなければいけない時期となった。それを支えるシステムもこれまで以上に進化をさせていかなければいけない。コンピュータシステムの重要性も、より高まってきているという認識。富士通は、金融の未来を切り開くため、これまで以上に金融機関へ貢献し、新しいチャレンジにも挑戦をしていきたい」と、金融業向けビジネスに取り組む意気込みを話した。

富士通株式会社 執行役員常務の八木勝氏

 富士通では、信頼性の高い勘定系・店舗ソリューションを継続的に進化させ、そこから得られるデータを活用することで、人々の生活を豊かにするスマートソサエティの実現を目指す。その実現に向け、Uvance for Financeとして新たに体系化した。

 今回、Uvance for Financeの最初のソリューションとして、金融機関向け勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(クロスバンク)」(以下、xBank)、非対面と対面のシームレスな連携と業務効率化を実現する店舗ソリューション「Digital Branch(デジタルブランチ)」の2つを提供する。

 このうち「xBank」は、ソニー銀行が採用し5月6日から稼働している。ソリューション名となった“クロスバンク”は、さまざまな業種やサービスと組み合わせ、連携しやすいソリューションとなるように命名された。内部・外部のAPIを組み合わせ、金融サービスを実現する。

 特長の1つ目は、マイクロサービスアーキテクチャを採用し、ITレジリエンスを強化している点だ。これまでの銀行勘定系システムに比べ、約60%の資産規模を削減し、軽量化を図っているほか、マイクロサービスアーキテクチャのメリットを生かしつつ、データ整合性の担保、トランザクションの保証も実現。「銀行業務トランザクション」の単位でAPI化する仕掛けを施している。

勘定系ソリューション ~特長1 軽量な勘定系アプリケーション~

 特長の2つ目は、業務機能単位ごとにサービスとして独立しており、必要な機能を選択し、各機能を組み合わせて使用できる点。すべての機能を導入しなくても、必要な機能だけを導入可能になっており、ビジネス成長に合わせ、サービス拡張にも柔軟に対応する。

 「部分的な活用に応じたプライスを設定し、すべての機能を利用していくらではなく、部分的な切り出し、機能に応じたプライスをしている。機能を段階的に増やしていただくことも可能だが、小さく始め、始めたものの新サービスがうまくいかない場合は、サービスを止めるという選択を行うこともできる」(八木執行役員常務)。

勘定系ソリューション ~特長2 ビジネス戦略への迅速な対応~

 さらに開発にあたっては、AIドリブン開発・保守へのチャレンジという、勘定系ソリューション開発におけるさらなる進化に向けた挑戦を行っている。Fujitsu Core Banking xBankのシステム資産を富士通AIが学習し、金融法令改定対応や各行個別要件対応のアプリケーション保守作業効率化と、品質向上の最大化にチャレンジしていく。

勘定系ソリューション ~さらなる進化に向けた挑戦~

 一方、店舗ソリューション「Digital Branch」は、金融フロントのサービス化により、従来の銀行の店舗だけでなく、スマートフォン、PC、ほかのフィンテックサービスなど、顧客が最適なチャネルを選べるようにするとともに、シームレスな体験を提供するものだ。また、業務効率化と働き方改革を推進し、店舗を迅速な意思決定拠点へと進化させることを目指している。

店舗ソリューション「Digital Branch」

 また、デジタルチャネルでの操作と現金が必要な手続きを統合的に管理し、非対面・対面のシームレスな連携と業務効率化を実現。データ連携先を異業種にも拡大し、AIを中心としたコアテクノロジーと、柔軟性・拡張性を高めたクラウドを活用することで、金融業のビジネスモデル変革を富士通が支援するとした。

店舗ソリューション ~DX実現に向けた進化~

 「マルチチャネルに対応した店舗ソリューションを進化させていきたいと考えている。当社にはDigital Branchという名前のソリューション群があり、その中核にあるFBC(Financial Business Components)を中心に、クラウド化することで、銀行の営業店システムなどがオムニチャネルに対応していく。リアル店舗だけではなく、銀行の顧客となる皆さまのスマートフォン、タブレットを介してのサービスなど、銀行と一緒により進化をしていきたい」。

 FBCは、全国の33行の銀行が採用し、すでに稼働中の広島銀行、東和銀行をはじめ、静岡銀行、伊予銀行、ふくおかフィナンシャルグループが現在構築中と、実績を積んでいる。

 今後は高度なAI技術を活用することで、データを分析・予測。顧客ニーズに最適化された金融サービスを創出し、市場変化への的確な対応とリスクを抑えた、安定的な成長戦略策定を支援するとした。

 取り組み事例としては、IHI、富士通、みずほ銀行の3社による、J-クレジットの自己調達や創出から資金化までのサービス「J-クレジット創出トータル支援サービス ~Digital MRV Plus for J-クレジットサービス~」、三井住友銀行と基本合意した、AIを活用したデータ分析ビジネス共創がある。

取り組み事例:三井住友銀行とのAI・データビジネス共創の基本合意

 今後については、「Uvance for Finance」としてソリューションを拡大し、「従来型の店舗を持つ銀行から、デジタル化を積極的に進める銀行まで、多様なビジネスモデルに対応できるソリューションを提供することにより、シェア拡大と金融業種ナレッジを深化させ、メガバンク、地域金融機関を含めた金融ビジネスの拡大を図る。現在のネットバンク勘定系システムでは、当社はシェア31%、営業店システムシェアでは34%あるが、2035年にはそれぞれシェア50%まで拡大することを目指していく」と、八木執行役員常務は目標を明らかにした。

Uvance for Finance

 なお、富士通では自社製ATMおよび営業店専用ハードウェアの提供を2028年3月末に終了することを発表。代替のATM・営業店専用ハードウェアの調達は、沖電気工業と基本合意しているという。

 「ただし、どのハードウェアを採用するのかは、金融機関の意向が最優先となる。金融機関専用ハードウェアについては、PCなどを利用したいというニーズも増えるのではないか」(八木執行役員常務)。

ATMおよび営業店専用ハードウェアの継続的な提供について