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NECとbiomy、がん患者の個別化医療に向けデジタルパソロジー領域における解析プラットフォームの開発・拡大で提携

 日本電気株式会社(以下、NEC)と株式会社biomyは10日、顕微鏡での病理標本の観察を、従来の光学顕微鏡ではなくデジタル画像で実行するデジタルパソロジー領域における、解析プラットフォームの開発・拡大に向けた共同マーケティングおよび事業提携を行うことで、基本合意書を締結したと発表した。提携を通じて両社は、がん患者の個別化医療を推進し、医療業界の発展に貢献することを目指すとしている。

 現在、患者の体質や病気の特徴に基づいて治療法を選択する個別化医療が広がりつつあり、がんが疑われる患者の場合、身体から採取した組織や細胞を病理医が顕微鏡で観察し、病変の良悪やがんの種類の最終判断を行う病理診断が行われる。昨今は病理診断において、デジタル病理画像をAIで解析することにより、個別化医療につながる病理学的バイオマーカーを探索・検出し、より効果が見込まれる治療法や治療薬を選択する試みが進められている。

 NECは、画像解析を始めとするAI技術に強みを持つとともに、電子カルテなどの医療情報システムを長年にわたり医療機関に提供してきた。また、2019年に第一種医療機器製造販売業の許可を取得するなど、病理AIを含む医療機器の許認可に関する知見を有している。

 biomyは、病理AI技術による個別化医療の実現を目指しており、AIを駆使したクラウドベースの解析プラットフォーム「DeepPathFinder」を保有している。このプラットフォームは、AIが自動でデジタル病理画像を解析し、各領域の細胞種別と組織種別を判定する。

 特にヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像のみから、リンパ球やプラズマ細胞などの免疫細胞の検出が可能で、さらに、薬剤の治療効果や予後に関する特徴を定量化する機能も備えており、DeepPathFinderを活用することで、デジタルパソロジー領域での解析効率と精度を飛躍的に向上できる。

biomyのDeepPathFinderに入力するH&E染色デジタル病理画像
DeepPathFinderによる解析結果。搭載するAIにより複数種類の細胞を検出

 NECとbiomyは、提携により両社の強みを融合し、製薬企業やアカデミア向けに、病理画像解析を用いた新規病理学的バイオマーカーの探索体制を強化すると説明。具体的には、病理画像から病理学的バイオマーカーを探索するプラットフォームを製薬企業・アカデミア向けに提供するサービスの提供や、NECおよびbiomyによる病理学的バイオマーカー探索サービスの提供、探索した病理学的バイオマーカーを利用した医療機器承認取得などを目指すとしている。

 特に、がん治療領域において、病理画像から得られるデータをもとに患者の病気の特徴を把握し、これに基づく治療方針策定を支援することを目指す。

 両社は今後、次世代の病理解析プラットフォームの開発と、開発した病理学的バイオマーカーの医療現場での活用を通じて、がん治療における個別化医療の実現を目指すとしている。