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日立とNTT Com、IOWN APNを用いた600kmでのリアルタイムデータ同期の共同実証に成功

 株式会社日立製作所(以下、日立)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は5日、IOWN APN(All-Photonics Network)を使ったストレージの長距離(東京-大阪間)でのリアルタイム同期において、共同実証に成功したことを発表した。この結果をもとに、ミッションクリティカルな業務を担う金融機関、社会インフラ事業者、クラウド事業者などに対して、長距離間でのデータの常時同期を提供していく考え。

 共同実験では、日立ヴァンタラ株式会社(日立ヴァンタラ)のHitachi Virtual Storage Platform One Block(VSP One Block)が持つストレージ仮想化技術GAD(global-active device)と、IOWN APNを組み合わせた。

日立とNTT ComによるIOWN APNを使ったストレージの長距離でのリアルタイム同期の共同実証
離れたデータセンターを1つのデータセンターのように利用できる分散ストレージ基盤を目指す
NTTコムの日立/日立ヴァンタラの役割

 IOWN APNは、通信経路を途中で電気信号に変換することなくすべて光で伝送することで、低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現する技術。

 一方、日立ヴァンタラのGADは、2台のストレージがActive-ActiveでI/O処理する形で常にデータ同期することにより、1台のストレージで障害が発生しても業務継続可能で、RPO(目標復旧時点。復旧したときにどれだけ前のデータに戻るか)=0とする技術だ。

 ただしGADは、サーバーからの書き込みに対し、2台ともに書き込んだことを確認してから書き込み完了を返すようになっている。そのため、1台を遠隔地に置くような使い方では応答時間が長くなってしまうのが従来の課題だったと、日立ヴァンタラの谷中大氏(ストラテジックビジネス営業本部 販売戦略部 販売企画G 主任技師)は同日開催された記者説明会で説明した。

 日立の小川貴央氏(社会ビジネスユニット 社会システム事業部 テレコム・ユーティリティソリューション本部 テレコム・ユーティリティ第三部 主任技師)は、目安として、「従来回線にて100kmで20msecの遅延という数字を上限として推奨しており、それを超える案件については非同期な遠隔コピーを用いていた」と語る。

日立ヴァンタラのHitachi Virtual Storage Platform One Block(VSP One Block)
ストレージ仮想化技術GAD(global-active device)

 これに対して今回は、GADとIOWN APNを組み合わせることで、東京-大阪間(600km相当)において、20msec以下の遅延で同期できることを検証した。これによって、例えば災害によって関東のデータセンターが被災したときでも、短時間で関西のデータセンターに切り替えて業務を継続する、といったことが可能になる。

 検証内容としては、サーバーからの書き込みに対して応答までの時間が往復20msec以内となるか、またメインサイトに疑似的な障害を発生させ、サブサイト側への切り替えを短時間で行い、業務を継続可能か、の2つが対象となった。

2つの検証内容

 まず応答時間の検証では、600km相当の距離で書き込み性能7.5msecの遅延であることを計測しており、20msecを下回った。読み込みはメインサイトで完結するため、0.1msec以下と、拠点内と同じ数字になるとのこと。

 なお計測にあたっては、証券会社の取引を模擬したベンチマークツールを用い、金融機関が日常的に使うようなデータ量で実験したという。

 また、疑似的な障害を発生させる検証では、約10秒で切り替えてサービスを開始できることを確認した。拠点内での切り替えと同程度だという。

検証1:東京-大阪での仮想ストレージの応答時間
検証2:障害発生時の切り替え時間

 今後は、今回の検証結果をもとに、日立ヴァンタラのストレージとIOWN APNの組み合わせによる長距離のデータの常時同期を、ミッションクリティカルな業務システムに適用していくことを目指す。

 また日立とNTT Comで、エリアを意識しないデータアクセスを提供する分散型データセンターについて、実現のためのソリューション提供を推進するとしている。