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パナソニック コネクト、AIエージェントが生成AIのRAGにナレッジグラフを参照して回答する新技術を開発

 パナソニック コネクト株式会社は3日、生成AIの利便性を高めるため、独自開発観察駆動型AIエージェントが生成AIのRAG(Ritrieval-Augumented Generation)にナレッジグラフを参照して回答できる、新技術を開発したと発表した。同技術は、自然言語処理の国際学会ACL 2024で論文が採択された。

 生成AIは、インターネット上の既存のデータをもとに学習しているため、企業固有の情報や個人関連の情報等については答えられないという特徴がある。これが原因で、間違った回答をしてしまうハルシネーションの課題も指摘されている。また、同じ質問をしても、回答が安定せず、異なった回答をすることも頻繁にあり、ビジネスで利用する際の課題が指摘されている。

 これらの課題を解決するには、信頼できる外部の情報を生成AIに参照させる手法、RAGが一般的です。このRAGの手法には、公開済みの企業情報や、社内情報など、文章化された情報を参照する方法と、ナレッジグラフを活用する方法がある。

 さらに現在一般的な、文章を参照する手法を使う場合、ChatGPTはインプットデータに限りがあるという点と、参照する情報が多すぎると間違えやすいといった課題がある。

 これらを解決するため、パナソニック コネクトでは、GPT上に独自の観察駆動型AIエージェント(以下、AIエージェント)を立ち上げ、各モジュールが質問への回答に、観察、行動、反省の3段階で吟味できるシステムを構築した。また、既存の文章ではなく、RAGの参照にナレッジグラフを活用できる仕組みも開発した。AIエージェントが、ナレッジグラフを利用してユーザーの質問に回答できるようにすることで、素早く適切に必要な情報だけ回答することを可能にする。

 社内情報などの文章を参照する既存のRAGの手法では、膨大な文章の中から回答を探すため、時間を要する点と、言語をデータに変換した後、質問への類似度に基づき回答を抽出するため、例えば同じ単語でも異なる意味が複数ある場合に、異なるデータに変換されてしまうため、間違った回答をしてしまうことがあった。

 これを回避するために、文章ではなく、ナレッジグラフと呼ばれるさまざまな情報(知識)を体系的に連結し、おのおのの関係性をグラフ構造で表した情報を、RAGに活用する手法を採用した。これにより、膨大な文章の中から必要な情報を探すよりも、素早く必要な情報を探し出すことが可能になる。また、直接類似度計算を基に回答を検討する必要がなくなるため、間違う頻度も低減できる。

 ただし、ナレッジグラフを活用する際でも、質問が複雑になるほど、厳密には必要としない周辺情報も含まれてしまう可能性がある。これを回避するため、GPT上に独自開発のAIエージェントを生成できる技術開発を行った。AIエージェントがGPTを利用して自己学習を行うことで、適切な回答を導き出す。

 例えば、「観察」の段階で、AIエージェントはナレッジグラフを参照する。次に「行動」の段階で、AIエージェントはさまざまな操作を行い、必要な知識を引き出す。「反省」の段階で、不要な情報を削除し、必要な情報をメモリに記憶する。この反復プロセスを通じて、AIエージェントは、質疑応答を自律的に行い、より精度の高い回答をすることを可能にする。

 AIエージェントがRAGの参照にナレッジグラフを利用できるようにし、自律的な質疑応答を繰り返して情報の取捨選択を可能にすることで、素早く適切に必要な情報を収集できるようになり、ビジネスにおける生産性の向上が見込めると説明。また、同じ質問に対して安定して同じ回答ができるので、チャットボットなどのサービスにも安心して活用できるとしている。

 今後はは、さらに回答のスピードを速める技術開発を行い、正確で安定した回答をビジネスのさまざまなシーンで活用できるようにすることを目指していくとしている。