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シングテルと日立、次世代データセンターとGPUクラウド構築で戦略的提携

(左)Singtel Digital InfraCoビル・チャンCEO、(右)日立製作所 德永俊昭副社長

 アジア大手通信技術グループのSingtel(以下、シングテル)と株式会社日立製作所(以下、日立)は26日、新興成長事業を推進するシングテルのDigital InfraCo事業部門のリードのもと、日本およびその他のアジア太平洋地域における次世代データセンターおよびGPUクラウドの構築に関する戦略的提携に合意したと発表した。

 同戦略的パートナーシップでは、シングテルが持つデータセンターや接続性(コネクティビティ)に関する専門知識、技術プラットフォームと、日立の強みであるグリーン電力のソリューションから冷却装置、ストレージ、データマネジメント・運用まで、データセンターのトータルインテグレーションを可能にするケイパビリティを組み合わせる。

 両社は、データセンターの性能とケイパビリティを持続的に向上させることで、企業のAIの導入とDXを加速させるとしている。

 今回の合意は、両社が2024年6月に発表した、5G、エッジコンピューティング、クラウドのオールインワンオーケストレーションプラットフォームであるシングテルのParagonと、日立のAIアプリケーションを組み合わせ、日立の生産現場や顧客向けに試行するためのパートナーシップを発展させたものだと説明。両社は、シングテルのParagonプラットフォームと、日立のAIに関する専門知識・技術を通じて、AIを導入する際に顧客が直面する複雑性に対処することを目指すとしている。

 シングテルは、イノベーションと経済成長を加速するため、2023年にDigital InfraCoを新たに設立した。Digital InfraCoは、シングテルの地域データセンター部門であるNxera(ネクゼラ)、海底ケーブル、衛星通信、Paragonプラットフォームなど、地域内でのAI導入を推進する事業を展開している。また、2024年にはAI開発に欠かせないGPUをサービス型で利用できるGPU-as-a-Service(GPUaaS)の事業を立ち上げ、企業のAI導入のサポートの強化を目指している。

 AI向けデータセンターの拡大は、日立の強みであるIT、OT、プロダクトといったあらゆる領域をうまく統合することが求められるため、日立が全社で取り組む社会イノベーション事業や、Hitachi Digital Services、Hitachi Energyといった日立グループのビジネスにとって大きな事業機会となるとしている。

 提携では、生成AI需要に応えるため、次世代データセンターに関する協業を検討。Nxeraと日立は、日本およびその他のアジア太平洋地域でデータセンターを開発する機会を調査・検討する。

 クラウドとAIの継続的な成長に伴い、高効率で高品質なデータセンターマネジメントを通じ、スマートかつ環境に配慮したサステナブルなデータセンターの運用を実現することが重要だと説明。こうした取り組みには、データセンターの設計・構築・運用に関するNxeraの専門知識と、データセンターに特化した機器の製造・提供、次世代エネルギー・ソリューション、さらにはデータセンター環境での安定稼働を支える高度なITシステムの運用管理に関する日立の専門知識が活用されるとしている。

 Nxeraは、シンガポールでの62MW(メガワット)の既存容量に加え、アジア太平洋地域で総容量200MWを超えるサステナブルで接続性の高いAI向けデータセンターのプラットフォームを開発している。

 さらに、両社のGPUプラットフォーム、AIノウハウを組み合わせた環境で企業向けアプリケーションを開発する。日立は、シングテルのGPUaaSを、社内のAIアプリケーションやAIワークロードに利用することを検討する。まず、日立社内で高性能な機械学習や生成AIなどのデジタル技術・ソリューションを強化するため、シングテルのサービスを利用する効果を検証する。その上で、顧客向けのサステナブルな目標を促進する電力効率の高い設計・運用方式を確立する。

 また、両社は、顧客におけるAIシステムの開発・実装にかかる時間や、管理コストを削減することを目的に、前述の検証結果を活用し、日立の生成AIの技術やプラットフォームも含めたノウハウと、シングテルのGPUクラウドやParagonを組み合わせ、エンタープライズアプリケーションを共同開発することも検討する。