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MetaMoJi、生成AI機能などを追加した建設現場向けの施工管理支援アプリ新版「eYACHO v6.5」
2024年問題に直面している、地方のゼネコンや地場ゼネコンの課題解決を支援
2024年7月4日 06:15
MetaMoJiは、建設現場向けの施工管理支援アプリ「eYACHO」の機能強化を図った新版を、7月25日から提供を開始する。生成AI技術の活用やスマート業務パッケージの追加のほか、BPOサービスである施工書類作成サービスを新たに用意した。建設業界の2024年問題に直面している、地方のゼネコンや地場ゼネコンの課題解決を図る製品と位置づけている。なお、新版は「eYACHO v6.5」としている。
MetaMoJiの浮川和宣社長は、「先端の生成AI技術を応用したソリューションや、リアルタイムシェアの利用シーンを広げる機能、施工管理業務をこれまで以上に支援するアプリケーションパッケージなどを提供し、eYACHOの手軽さを維持しながら進化させた。また、機能、販売、サポートで協力しているパートナーとの連携強化を図ることで、eYACHOを発展させている」と語った。
「eYACHO」は、大林組と共同開発した製品で、2015年8月に発売。建設現場で、備忘録や測量結果の記録、打ち合わせのメモなど、さまざまなシーンで利用される野帳(レベルブック)をデジタル化。手書きや写真、日報などの記録をデジタルで管理したり、図面や資料のペーパーレス化ができたり、リアルタイム共有機能による遠隔地間のコミュニケーションを実現できたりするのが特徴だ。MM総研が2024年5月に発表した「ゼネコンにおいて最も頻繁に利用される施行管理アプリ」でナンバーワンとなっている。
「eYACHOを共同開発した大林組では、当初、iPadを大量導入したものの、毎日、現場で利用するアプリがなく、利用率が上がらなかった。eYACHOは、紙の手軽さはそのままに、デジタルの強みを生かし、待ったなしの現場で朝から晩まで使える汎用アプリとして開発した。それ以来、多くの企業に導入されている」(MetaMoJiの浮川社長)とする。
今回の新製品では、eYACHOの機能強化に加えて、他製品との連携、人材サービスなどを組み合わせめことで、2024年問題の課題に対して、総合的な解決手段を提供する製品へと進化している。
具体的には、機能強化として、「スマート業務パッケージ」、「GEMBA Talk」、「生成型安全AIソリューション」を新たに提供。さらに、建設業におけるノンコア業務の作業低減を支援するアウトソーシングサービスとして、「eYACHO 建設業BPOサービス」を提供する。
「スマート業務パッケージ」では、施工管理業務において、大量で、多種類の書類を作成しており、手作業による書類間の転記や、まとめ作業が膨大に発生しているという課題を解決できるとする。工程管理スマートテンプレートを利用することで、転記や集約する作業を自動化し、空いた時間を、段取りや施工管理などの現場の作業にあてることができるようになる。同パッケージでは、安全衛生作業管理、工程管理、日次施工計画、施工計画書管理、出来形管理、設備点検記録、写真管理を提供。今後、利用者の要望にあわせて、機能を順次追加していく予定である。
また、業務メニューを追加しており、業務手順書から必要な書類テンプレートを提示して、正しい手順で、正しい書類を作成できるように支援することができるという。
さらに、スマートテンプレートを活用して、「工程's Orario」との連携を図る。
工程's Orarioは、1770社の建設業に導入されている工程管理ツールで、施工計画の立案、計画の可視化などが行える。
MetaMoJi 法人事業部 法人第一営業部長の今西信幸氏は、「工程'sのデータを現場でも活用したいという顧客の声が多かった。これまでは紙に印刷したものを現場に持ち込むといった使い方が多く、日々変化する工程をリアイルタイムで把握しにくいという課題が出ていた。今回のeYACHOとの連携により、天候や資機材の調達の都合などによって変更される施工計画を柔軟に反映して管理。最新の工程データを取得できるため、現場での段取りにリアルタイムに生かすことができる。それぞれの得意な機能とニーズを補完しあった連携になる」と位置づけた。
eYACHOと連携する工程's Orarioを開発するウェッブアイの森川勇治社長は、「工程's Orarioのユーザーの68%が建設業界だが、2016年まではわずか2%にすぎなかった。この7年間で一気に増加している。その背景にあるのは、建設業界の人手不足であり、安全を阻害するレベルにまで課題が顕在化していることの裏返しである。そのため、工程管理が急速に広がったといえる」とし、「工程's Orario とeYACHOは相性がいい。短期間で連携が行えたのは、SaaSプラットフォームであるOCP(Orario Cloud Platform)により、デジタル化した工程情報を、つながりデータベースとして、サイバー空間で流通できるようにし、ほかのサービスと連携することを設計コンセプトにしていた点が大きい。工程情報は、現場で活用してこそ利益が生まれる。今後は工程管理分野でのAIの活用も進めていく。今回のeYACHOとの連携はプロローグにすぎない。期待を超える成果を発表したい」と述べた。
「GEMBA Talk」は、ビデオ電話機能であり、シェア機能から簡単に会議を立ち上げて、必要な時に、必要な人に、簡単にコールができるようになっている。現場と事務所間の移動を行わずに、動画や画像、音声によって、迅速に、正確に、状況を確認できることから、現場への移動時間の削減だけではなく、判断を速めることができる。
「GEMBA Talkは、先行ユーザーに利用してもらっている。現場に行かなくてはわからなかったことが映像と音声で理解でき、無駄な移動がなくなり、短時間に対策を終えることができるというメリットが生まれている」という。
「生成型安全AIソリューション」は、2023年7月に提供を開始した「安全AIソリューション」に、生成AIによるリスク予測を追加したものになる。19種類の安全関連法令に基づき、AIがリスク予測を行い、経験の浅い若手の管理者であっても、適切なリスクアセスメントを実行できるよう支援する。
「顧客が独自に蓄積した災害事例テータや、厚生労働省の事故データなども活用し、AI技術によって、災害リスクを予測することができる。施工計画からKY(危険・予知)活動、巡回、教育まで、あらゆる施工シーンで、AIが安全リスクアセスメントを支援することになる」とした。
「eYACHO 建設業BPOサービス」は、事務所での書類作成作業などの施工におけるノンコア業務を外部委託できるサービスとなる。まずは、施工体制台帳・体制図作成、作業員名簿作成、協力会社安全衛生計画書作成、工事安全衛生計画書作成、配筋検査元帳作成の5つのサービスを提供する。
「BPOサービス提供企業との協業を通じて、eYACHOの機能では減らすことができない書類作成の準備作業および情報収集作業を、アウトソーシングできる。この結果、現場管理者は、施工管理のコア業務に集中することができる」した。
サービスはキャスターが提供し、販売パートナーを通じて、製品ライセンスと一緒にワンストップで提供することになる。
BPOサービスで協業するキャスターの執行役員 CROである清田尚志氏は、「2014年の創業からフルリモートを活用し、居住地に左右されない採用を実現し、BPOサービスを提供してきた。累計導入社数は4700社以上に達している。バックオフィス業務を中心にサービスを提供してきたが、今回、新たに建設業界向けBPaaS(ビジネスプロセス・アズ・ア・サービス)を提供することになる。建設業における労働時間規制による2024年問題を、BPaaSで解決したい」と語った。
eYACHOでは、今回の新製品から、新たなライセンス体系を導入。ベーシック版(年額2万8800円)、スタンダード版(同3万7800円)、プレミアム版(同4万6800円)の3つの製品を用意。初期導入費用は30万円となっている。また、12月31日までの期間限定で、新製品発売キャンペーンを実施。初年度に限り、スタンダード版をベーシック版の価格で利用できたり、安全AIサーバーのライセンス費用が50%オフになったりする。
地方ゼネコンや地場ゼネコンからの引き合いが圧倒的に増加
なおMetaMoJiでは、建設業を対象にした「2024年問題解決セミナー」を開催しているが、参加者にアンケートを採ると、前年度に比べて、地方のゼネコンの参加者が2倍以上に増加していること、導入に向けた相談やデモをしてほしいという具体的な提案への要求が3.4倍に増加していること、半年以内に具体的な取り組みを実施したいという声が1.5倍に増加している、といった結果が出ているという。
このような結果を示しながら、MetaMoJi 法人事業部長の植松繁氏は、「地方ゼネコンや、地場ゼネコンからの引き合いが圧倒的に増加している。また、試験的な導入や、小規模での導入から始めたいといったこれまでの動きとは異なり、短期間に導入したり、すぐに全社に大規模展開したり、当初の予算額に関係なく実行するといった動きもある。建設業界においては、2024年問題の解決が、待ったなしの状況になっていることがわかる」と指摘した。
こうした動きをとらえて、販売面やサポート面においては、これまでの大手ゼネコンや中堅ゼネコンを中心に展開していた体制を再編。「地方の顧客に対しても、地元で丁寧に、ひとつの窓口で問題解決を支援していく体制を整える。そのために、全国の販売パートナーやサービス提供パートナーとの協業を進めていく。IT系販売パートナーたけでなく、建設機器のレンタル会社にも協業の幅を広げたい」(MetaMoJiの今西部長)としている。
販売パートナーであるキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ) マーケティング統括部門 ソリューションデベロップメントセンター長の寺久保朝昭氏は、「キヤノンMJでは、現場のプロセス改革とDXを支援するためにデジタルドキュメントサービスなどを提供してきたほか、中小企業のIT活用とDX推進を得意な領域として販売活動を推進している。今回、新たなソリューションパッケージとして、建設業向け現場書類デジタル化パックを用意した。eYACHOとiPad、モバイルデバイス管理ツール、サポートセンターを組み合わせた提案を行う。直販体制に加えて、全国4000社のパートナー企業とともに、2024年問題の早期解決をIT活用とDX推進によって支援したい」と述べた。
AIの適用範囲を広げていきたい
一方、MetaMoJi 代表取締役専務の浮川初子氏は、同社のAI戦略について説明した。「MetaMoJiのAIは、専門家の知識を具現化した知識型と、生成AIによる生成型のハイブリッドシステムで構築することになる。知識型は、労働安全衛生総合研究所のIMTOCにより、再発防止の観点から活用できる。また、生成型は、安全関連の法令に準拠したデータを学習させ、未然防止の観点から活用できる。ハルシネーションを抑制するためには専門家の知識も活用し、統合的なAI技術を活用することで適応力を向上させている」とした。
このほか、「eYACHOでは、法律や規制などの業界知識、組織のなかに蓄積されている組織知を対象としたAI活用を推進する。また、技術者が手書きした個人知の情報も活用できるようにしている。これをもとに、適材適所のチェックリストを提示できるのが特徴である。いまは安全分野だけにAIを活用しているが、今後は、業務AIとして、品質や環境、生産設計などにも研究開発の範囲を広げたい。細かい技術伝承、知識伝承を支援することも可能になる」とも述べている。
さらに、「AIの適用範囲を広げていきたい。そのためには、MetaMoJiのITとAIの技術者の知見に加えて、現場の知識が必要である。共同研究を行う企業や、PoCを行う企業を募集したい」と呼びかけた。