ニュース

神戸大学、ファーストパーソン、CTCの3者、細胞培養実験のデジタルツイン環境を共同開発

 国立大学法人神戸大学、株式会社ファーストパーソン、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)の3者は27日、メタバース技術を活用して、細胞培養の作業手順を学ぶデジタルツイン環境を共同開発したと発表した。

 3者は、次世代バイオ医薬品の製造技術基盤開発の一環で、神戸大学に設置されたGMP(Good Manufacturing Practice、薬品の製造業者および製造販売業者に求められる適正製造規範)に準拠した細胞培養の実験施設を、デジタルツイン環境上に再現した。医薬品の初期の製造プロセスである培養工程の一部を、実際の実験室での作業をメタバース上で模倣することで、作業を繰り返し試すことができ、習熟度を上げ品質の維持につなげる。

 レーザースキャナーで360度撮影した実際の実験施設のデータを取り込んで、実物と同様の実験室をデジタルツイン環境上に構築し、2Dの画像と図面から培養装置の3Dデータを生成して、装置の見た目や奥行きを再現して実験室内に配置した。細胞を培養する作業をメタバース上で体験して、間違った作業手順や培養品質に影響のある操作を行った場合には、正しい操作の説明を確認できる。

 デジタルツイン環境は、NVIDIAが提供する仮想空間の開発プラットフォーム「NVIDIA Omniverse(以下、Omniverse)」を活用した。Omniverseは、物体の形状、位置、表面の質感や光源などを精緻に表現することが可能で、リモートアクセスや複数人での同時操作でも3Dやアニメーションをスムーズに表示する。

 共同開発では、ファーストパーソンのプロジェクト管理のもと、神戸大学が培養工程と装置の作業手順を監修した。CTCはOmniverseライセンスの提供、実験施設の3D空間の構築と3Dデータの生成、デジタルツインの環境への取り込み、作業工程のシナリオ化やアニメーションの制作を担った。

 開発した環境は、神戸大学が提供する社会人向けのリスキリング講座に導入し、細胞培養に関わる研究者の育成を図り、創薬や再生医療などの分野における研究開発の高度化に貢献すると説明。今後も3者は、デジタルツイン技術について製造プロセスにおける他の工程での活用も検討し、創薬や再生医療などの研究開発の高度化に貢献していくとしている。

細胞培養の実験施設 デジタルツイン環境