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シャープと鹿島建設、動画と静止画を組み合わせた工事現場向け遠隔コミュニケーションシステムを開発

山岳トンネル工事などに適用し、確認・評価プロセスの生産性・安全性を向上

 シャープ株式会社と鹿島建設株式会社は27日、山岳トンネル工事などにおいて、通信状況に応じた画質に調整した現場状況の動画をタブレット端末から配信しつつ、高解像度の静止画を適宜送信する「ハイブリッド遠隔コミュニケーションシステム」を開発したと発表した。

開発されたシステムによる、トンネル坑内での撮影(左)と遠隔臨場の様子(右)

 今回開発されたシステムは、トンネル工事などの現場と遠隔地を結び、動画と高解像度静止画を組み合わせたハイブリッド配信を行うことで、遠隔地からの確認・評価を実現するもの。

 具体的には、タブレット端末に装着した高解像度カメラで撮影し、通信状況に合わせて動画と静止画を切り替えながら配信する仕組みを備えているので、確認・評価者が遠隔地にいても、動画で全体状況を把握した後、確認対象である切羽(トンネルの掘削面)などの詳細な状態を、高解像度の静止画で確認して、適切な評価を行えるようになったという。

 なお確認用の画面は、Webブラウザ上の大きなメイン画面1つとサブ画面で構成されており、動画と静止画を切り替えながら、遠隔参加者側から音声や操作画面のポインタなどで指示された箇所を正確に撮影して、データ送信することが可能。静止画については、地質の凹凸や輪郭などを、シャープが培ってきた画像処理技術で視認性を高めた上で伝送している。

遠隔端末による切羽映像とポインタ表示画面例

 こうしたシステムの導入により、山岳地でのトンネル工事現場など、高速通信環境の構築が困難な現場でも遠隔確認が可能になるため、関係者が現地に集合する必要がなくなり、日程調整の手間が軽減されるほか、現場の撮影者も切羽から離れた安全な位置から撮影できるので、落石などによる災害遭遇リスクを大幅に低減するとのこと。

 なお今回は、新名神高速道路大津大石トンネル工事(以下、大津大石トンネル工事)において、同システムを用いたトンネル切羽の遠隔臨場を実施し、遠隔地のモニターにて、切羽の地質状況を詳細に目視判定できることを確認した。

 両社では今後、動画・静止画送信の手法やユーザーインターフェイスを中心にシステムの改良を進め、山岳トンネル工事における遠隔臨場のさらなる高度化を図るとともに、トンネル坑内のみならず、高速通信環境の構築が困難な山間部や沿岸部などの現場についても、適用拡大に取り組むとしている。