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富士通、O-RAN仕様のマルチベンダー接続試験でAIの活用により従来比20%超の省電力効果を実証

 富士通株式会社は19日、O-RAN仕様に基づくネットワーク運用管理装置(SMO)「Virtuora Service Management and Orchestration(以下、Virtuora SMO)」に、ユーザーの位置情報の分布を元に通信トラフィックを推定する富士通のAI技術を適用した省電力アプリケーションを搭載し、RAN装置との接続試験を2023年11月に実施した結果、基地局ごとにトラフィックを推定する従来手法に比べ、20%以上の省電力効果を実証したと発表した。

 合わせて、大手通信ネットワーク測定器ベンダーである米VIAVI Solutions(以下、VIAVI)のO-RAN仕様に基づいたRAN装置との接続試験も行い、有効性を検証している。

 接続試験は、「O-RAN ALLIANCE Global PlugFest Fall 2023」の北米のホストかつ認証機関であるラトガース大学 COSMOSラボ(米国ニュージャージー州)で、11月17日に実施。O-RAN ALLIANCEが定めた仕様(O-RAN仕様)に基づき、富士通のSMOであるVirtuora SMOと、VIAVIの検証装置との相互接続試験を実施し、マルチベンダーでの相互接続、およびエンドツーエンドでの接続評価を実施し、有効性を検証した。

 Virtuora SMOには、通信トラフィックを推定する富士通のAI技術を適用した省電力アプリケーションを搭載し、消費電力評価試験で、従来手法と比較して20%以上の省電力化を実証した。

 接続試験では、省電力アプリケーションをはじめ、Closed RAN(O-RANに準拠していない固有インターフェイスを使用した無線基地局)や、Open RAN、マルチRAT(LTE、3G、GSMなど)の共存を可能とする、RAN統合制御機能「Virtuora Mobility Controller」などを搭載したVirtuora SMOと、Open RAN RIC(RANのパラメーター設定や運用の最適化を自律的に実行・制御するコントローラー)、xApps(各種情報の分析や制御ポリシーに基づいて、RANデバイスを高速かつ最適に制御する機能を提供するアプリケーション)、rApps(リソースの最適化やRANからの運用データに基づくRANの運用管理を高度化および自動化するアプリケーション)を検証するためのAIトレーニング、テスト、測定を提供するVIAVIのRIC Tester「TeraVM RIC Test」からなる検証設備を構築した。

 富士通は、マルチベンダーでの接続評価、VIAVIはRANシナリオの生成と省電力の分析監視を主に担当し、検証にアドバイザーとして参画したAT&T Communications(以下、AT&T)などのオペレーターは、オペレーター視点でのテスト項目や運用観点でレビューを行い、AT&Tなどの評価のもと、接続試験を実施した。

 接続試験で使用したVirtuora SMOには、富士通のAI技術を適用した省電力アプリケーションを搭載した。適用したAI技術は、ユーザーの位置分布データを元に、100m四方の細かいエリア単位で通信トラフィックを時系列に予測するアンサンブル時系列予測技術と、エリア単位ごとにカバーしている複数基地局の中から、スリープするセルと起動するセルの組み合わせを選択し、最も省電力効果の高い組み合わせを迅速に切り替える組み合わせ最適化技術で構成している。

 このAI技術を適用した省電力アプリケーションを使用することで、数百mから数km四方を単位とする基地局ごとのセル単位でトラフィックを推定する従来手法と比較して、20%以上の省電力化を実現した。

 富士通は今後、マルチベンダー対応によるOpen RANのエコシステム形成および高度化をグローバルに推進し、通信キャリアの運用維持費の削減や新規サービス展開の早期化に貢献するとともに、さらなる省電力化を実現することで、カーボンニュートラルなネットワーク運用を目指していくとしている。

省電力アプリケーションに搭載したAI技術の概要