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DNP、ロボットとRFIDの活用で蔵書点検の作業時間を削減する図書館向けサービスを提供

 大日本印刷株式会社(以下、DNP)は16日、全国の図書館に向けて、RFID(ICタグ)を活用した蔵書点検サービスの提供を10月24日に開始すると発表した。蔵書点検に関して、富士物流株式会社と共同で独自のロボットやシステムを開発し、作業時間を削減する。

 図書館運営において、蔵書点検は「所蔵資料があるべき場所にあるか」「行方不明の資料はないか」を確認する年に一度の大切な作業となる。この点検は、本に付与したバーコードやRFIDを手作業で読み取ることが多く、数カ月前から計画を立て、1週間程度休館して作業を行うが、休館による利用者への長期の利用制限の発生とともに、作業者の作業負荷や臨時雇用が必要になるなど、効率性の向上が課題となっているという。

 こうした課題の解決に向けて、DNPは富士物流と共同で、RFIDを用いてさまざまな厚みや大きさの資料でも、作業時間を大幅に短縮する蔵書点検サービスを開発した。

蔵書点検のロボット

 RFIDを活用した蔵書点検サービスでは、図書館への事前調査、作業設計と準備作業(蔵書点検ルートや手順などの設計、作業員や機材の確保など)、実際の蔵書点検作業の代行(蔵書点検作業~蔵書点検データ作成、不明本リストに基づく現物確認など)を実施し、図書館ごとのRFIDの利用状況に応じて、効率的なスキャニング手法を提案する。また、RFID未導入の図書館に向けた導入支援も行う。

 DNPはサービス構築や機器仕様設計を行い、DNPのグループ会社である株式会社図書館流通センターと丸善雄松堂株式会社を通じてサービスを提供する。富士物流は、作業検証、点検作業、機器開発を行う。サービスの参考価格は、初期費用が作業設計費30~50万円、作業費が3.5円/冊。

 HF帯RFID対応のパッケージサービスでは、高出力ハンディリーダーを使用した読み取りシステムを提供。派遣した作業員が読み取り作業を行う。これにより、作業員1人の1時間当たりの読み取り数が、1000~1200冊から5000冊~1万冊に拡大する。

作業用専用キットでの作業の様子

 UHF帯RFIDタグ対応のパッケージサービスでは、高出力リーダー搭載の蔵書点検ロボットとハンディリーダーのシステムを提供。派遣した作業員が読み取り作業を行う。これにより、作業員1人の1時間当たりの読み取り数が、2000~1万冊から6万~7万冊に拡大する(ロボット1台とロボットの操作員1人、作業員1人によるハンディリーダーでの作業の場合)。ロボット重量は60kg程度で、多層階でもエレベーターで移動できる。

蔵書点検ロボットの作業の様子

 DNPはサービスを通じて、図書館職員の蔵書管理業務を効率化し、本の仕入れの最適化や利用者の利便性・満足度の向上を支援すると説明。近年の図書館では、地域の人々をつなぎ、創発的な活動を生み出す場としての価値提供が図書館に求められており、そのための職員の教育やサービスの開発などにつなげていくとしている。

 DNPはまた、UHF帯RFIDを活用し、図書館内の閲覧履歴を自動的に取得するシステムの開発も進めており、これにより館内でよく読まれる本のジャンルやテーマを可視化し、選書の効率化などにつなげられると説明。さらに、書店でのRFID導入の実証実験にも活用していく予定で、DNPはRFIDを活用した蔵書管理関連サービスで、2027年度までに累計10億円の売り上げを目指す。