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大成建設など4社、BIMに基づく仮想空間上で情報の一元管理を実現する「建設承認メタバース」の開発に着手

 大成建設株式会社は8日、株式会社日立コンサルティング、GlobalLogic Japan株式会社、株式会社日立社会情報サービスの3社と共同で、「生産プロセスのDX」の一環として、建築計画における次世代の業務スタイルへの変革を推進するシステム「建設承認メタバース-CONSTRUCTION CONTRACT(略称 C2QUEST)-」の開発を開始すると発表した。

 開発では、建築物の意匠・構造・設備などのデジタルデータが統合されたBIM(Building Information Modeling)を基に、クラウド上に建築物のメタバース(3次元の仮想空間)を構築する。このメタバース上に、発注者などへの説明から仕様の決定といった承認までの情報をはじめ、プロジェクトをめぐる関係者(発注者・設計者・施工者など)間での合意形成に必要な、データや建設承認に至る議事録など、あらゆる情報を一元管理し、施工現場における業務の効率化や働き方改革に貢献することを目指す。

「建設承認メタバース」イメージ

 大成建設では、近年、建設業においてBIMの活用が急速に拡大しており、国土交通省によるBIM活用の標準化に向けた取り組みや、一般社団法人日本建設業連合会(日建連)によるBIM中心の業務スタイル定着へのロードマップ策定など、デジタル化のメリットを生産性向上や課題解決に生かそうとする動きが活発となっていると説明。また、コンピューターやネットワーク上に構築された仮想空間であるメタバースの活用も始まっており、身近な例では不動産の内覧や住宅展示場において3次元仮想空間に再現された建物の内部を実際に歩き回るかのような感覚で、建物の完成形イメージを体験することに役立てているという。

 一方、施工現場では、紙図面での資料作成や目視重視の確認作業など、慣習に基づく業務様式が継続していることや、デジタルに習熟した作業員などの人材不足といった背景もあり、一部ではBIMの3次元データを併用しながらも、各種データ連携による業務効率化や働き方改革といった観点からは、いまだに多くの改善すべき課題が残されている。特に、建築プロジェクトにおいては、手戻りや工程の再調整を減らし、業務の効率化を図る上で、関係者間での合意形成の円滑化が重要項目となっており、発注者などへの説明や仕上げの仕様決定など「建設承認」を得る過程で、関係者相互の認識の相違をなくし、速やかな合意形成につなげるために情報の一元管理が求められている。

 そこで、大成建設は3社と共同で、計画されている建築物に関するデジタル情報の一元管理により、発注者などへの説明から承認までをシステム上で完結させ、建物の完成形に関する詳細イメージを関係者間で共有し、建築プロジェクトにおける業務効率の大幅な向上を実現する「建設承認メタバース」の開発を進めるとしている。

 システムは、VR(仮想現実)との融合や承認プロセスのデジタル化、議事録の自動作成などにより、プロジェクトの立ち上げから建設承認までの流れを詳細に把握できる。確定情報の明確化により、バーチャル上で早期に建築物を竣工でき、事業推進に大きく寄与できる。また、BIMに不慣れであっても、システムの活用により仮想空間上で容易に詳細を確認でき、相互にイメージを共有してコミュニケーションの円滑化が図れるため、効率的にプロジェクトを推進できる。

 今後、大成建設と3社は、他の建設企業やIT企業などのさまざまなパートナーとも連携・協調を図りながら、BIMやメタバースに基づき、生成AIやゲームエンジンなどの先進技術を活用したシステムのさらなる技術開発を進め、施工現場での生産プロセスのDXを通じて、建設業の次世代の業務スタイルへの変革に積極的に取り組んでいくとしている。