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アシスト、生成AI搭載Insight Engine「Glean」を国内で販売 社内システムを横断検索・個別最適化した結果を提供

 株式会社アシストは30日、生成AI(ジェネレーティブAI)のユニコーン企業である米Glean Technologies(以下、Glean社)と代理店契約を締結し、エンタープライズ向けInsight Engine「Glean(グリーン)」の取り扱いを同日付けで開始したと発表した。アシストは、Glean社にとって国内初のリセラーとなる。同日には、「Glean」を取り扱う背景や日本市場での展開、製品概要などについて説明会が行われた。

 「Glean」は、生成AIを活用した次世代型社内検索エンジンで、社内の情報やナレッジにたどり着く時間を短縮し、業務の生産性を向上する。企業ごとに学習したデータから深層学習ベースのLLM(大規模言語モデル)に対するベクトル検索によって、文脈理解が可能になる。例えば、企業には社内特有の頭字語や短縮語、コード名などが存在するが、これらの用語の認識は一般的に難しく、望ましい検索結果が得られない可能性がある。「Glean」では、最先端のAI技術によって、導入企業に合わせた最良のパフォーマンスを実現するという。

「Glean」のトップページ

 アシスト DX推進技術本部 本部長執行役員の田畑哲也氏は、「当社は、コロナ禍の2020年に、『知識』が『人とのつながり』を進化させる『Internet of Knowledge』というソリューションコンセプトを提唱した。この第1弾として動画管理プラットフォーム『panopto』、第2弾としてデジタルアダプションプラットフォーム『Techtouch』をリリースしており、今回、第3弾としてInsight Engine『Glean』の取り扱いを開始する。企業内のあらゆる情報を横断的に検索しパーソナライズされた結果を提供するとともに、ナレッジを持つ人(Know Who)を特定して表示することができる『Glean』によって、これまでのエンタープライズサーチでは得られなかった気付きや知識の獲得、および従業員同士の新たな結びつきをサポートしていく」と狙いを述べた。

アシスト DX推進技術本部 本部長執行役員の田畑哲也氏

 「また、当社は昨年創立50周年を迎えたが、次の50年間を見据えて、今年から3か年の中期経営計画『超サポ-25』をスタートした。この計画の重要課題の一つ『新しい事業への挑戦』の目玉商材として位置づけているのが『Glean』である。今回が日本初上陸となるだけに、Glean社としっかりタッグを組みながら、自社での先行導入で得られた知見や活用ノウハウを生かし、国内企業のカスタマーサクセスを支援していく」との考えを示した。

 説明会にオンラインで参加した、Glean社 Founder and CEOのArvind Jain氏は、「私はもともとGoogleで検索エンジンのエンジニアをしていた。当時、多くの従業員が、仕事のために必要な情報やデータを社内で見つけるのが非常に難しいと感じており、どこを探したらよいのか、誰に聞けばよいのかもわからず、生産性にも影響を及ぼしていた。そこで、この問題を解決する製品を探してみたのだが、市場の中に見当たらなかったことが、Glean社を起業するきっかけとなった。今回、アシストとパートナーシップを締結し、日本市場に参入できることをうれしく思っている」とコメントした。

米Glean Technologies Founder and CEOのArvind Jain氏

 そして、この発表に合わせて来日したGlean社 APAC統括責任者のWilliam Hierbert氏が、グローバルにおけるビジネス状況について説明。「当社は、GoogleのDNAを受け継ぐエンジニアにより2019年に設立され、現在では、サーチ分野でリーダーシップを担う専門エンジニアを多く抱えている。生成AIスタートアップの企業価値ランキングではトップ5にランクインし、企業価値は10億ドル以上となっている。また、従業員数は200人以上、顧客数は125社に達しており、米国を中心に、インドやオーストラリアなど世界各地域で導入が広がっている」と、生成AIのユニコーン企業として急成長していると強調した。

米Glean Technologies APAC統括責任者のWilliam Hierbert氏

 日本市場への参入については、「日本で最初のカスタマー企業であったアシストとパートナーシップを組み、日本市場での本格的なビジネスを開始する。日本市場に向けては多くの投資を行っており、すでに『Glean』の検索機能とUIの日本語化に対応している。また、チャット機能の『Glean Chat』についても日本語対応版を正式リリースする準備を進めている。今後は、アシストと協力しながら、日本企業への導入拡大を推進していく」と意欲を見せた。

 アシストが日本初のリセラーとなって「Glean」のビジネスを支援する理由について、同社 DX推進技術本部 部長 Glean製品責任者の佐子雅之氏は、(1)「Internet of Knowledge」コンセプトに合致、(2)SaaS導入加速やサイロ化の課題に合致、(3)「Insight Engine」の価値提供、(4)「自社利用」からのノウハウ提供--4点を挙げた。

アシストが「Glean」ビジネスを始める理由

 「『Glean』のコンセプト『Know what your company knows, instantly.』が、当社の提唱する『Internet of Knowledge』構想のコンセプトに合致し、組織内の知識資産を横断的につなぐことで、部門を超えたナレッジ共有の文化醸成に貢献できると考えた。また、『Glean』は、SaaS導入拡大にともなうシステムと組織のサイロ化という課題を解決できるソリューションでもある。そして、日本ではまだ普及していない『Insight Engine』の体験価値と効果を、当社が自社利用で得たノウハウとともに日本企業に届けていく必要があると判断した。これに加えて、Glean社の将来性や雰囲気、対応スピード、高い技術力、従業員同士のつながりを重視する姿勢に共感したことも決め手になった」としている。

アシスト DX推進技術本部 部長 Glean製品責任者の佐子雅之氏

 「Glean」の具体的な特長については、アシスト ビジネスソリューション本部 アシストマイスターの松山晋ノ助氏がデモを交えながら説明した。「Glean」は、クラウド・ネイティブ・アーキテクチャによりMicrosoft 365、Box、Slack、Google Workspace、Salesforceなどのさまざまなアプリケーションと接続し、社内の情報を横断的に検索することが可能。アプリケーションを切り替えずに、あらゆるサービスを1つの検索窓から検索でき、該当する文書やファイルだけでなく、検索ワードに関連したナレッジをまとめて表示する。

アシスト ビジネスソリューション本部 アシストマイスターの松山晋ノ助氏

 所属部門、文脈、言語、行動、他者との関係性を理解し、検索履歴を学習したAIアシスタントにより、検索者ごとにパーソナライズされた最適な検索結果を生成する。検索者のスケジュール、おすすめ情報や最近使用したファイル、検索者がメンション(宛先として指定)されたドキュメントなど、検索者との関係性の高い情報を優先的に表示する。また、企業特有の情報やナレッジとLLMを融合させ、Glean ChatおよびAI Answerが望ましい回答を生成する。なお、Glean Chat機能はβ版の段階であり、精度やスピードの改善を通して近日、日本語対応版を正式リリースする予定。さらに、関連性をAIが判断し、検索ワードに関連したナレッジを持つ人(Know Who)を特定して表示する。これによって、検索者の想定を上回る回答や気付きを提供する。

検索ワードに関連したナレッジを持つ人を表示

 松山氏は、「サイロ化した社内システムでは、横断的に検索ができず、システム内にある情報資産を有効活用することができない。これに対して『Glean』は、1つの検索窓から社内システムを横断検索し、知りたい情報を瞬時に見つけることができ、生産性の向上にもつながる。また、従来のエンタープライズサーチでは、社内で誰がその情報に最も詳しいかを知る術がなかったが、『Glean』では、検索ワードに関連したナレッジを持つ人を表示してくれる。これにより、システムと組織の壁を越えた新たなシナジーの創出に期待できる。さらに、AIが企業内の情報を学習し、『その人にとって最適な結果』を返すことで、これまでに体感したことのない検索体験を提供する」と、「Glean」の導入メリットをアピールした。

「Glean」の特長とメリット

 アシストでは、年内は直販での活動に注力し、「Glean」の価値を最大化できるユーザー層として、クラウド指向が強くBoxやMicrosoft 365を利用中の従業員が数千人以上の企業を中心に販売していく。自社で蓄積されたノウハウや経験を基に、PoCや製品サポートをはじめ、顧客企業の生産性向上、業務改革、企業力向上などに寄与する支援活動を行っていく。

 ライセンスは年間サブスクリプション方式となり、価格はアシストのプロダクトサポート料を含め、年額3900万円(税別)。