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パナソニックHD、AIモデル学習時のデータ構築コストを半減する技術を開発

 パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)は23日、AIによる物体検出の精度低下を抑えながら、学習データ構築コストを半減できる技術を開発したと発表した。

 高性能なAIモデルを実現するには、データ収集とアノテーション(画像内の人、自動車などのラベル付け)により大量の学習データを用意する必要があり、多大な時間とコストを要する。

 少数のデータでも高精度なAIモデルを実現する技術の一つとしては、「少数のラベル付きデータに対するドメイン適応技術(Few-shot Domain Adaptation)」があり、これはあらかじめ公開されている多数のラベル付きデータ(ソースドメインのデータ)で学習したAIモデルの事前知識を、少数の現場データ(ターゲットドメインのデータ)の学習に利用することで、現場データが少数でもAIモデルを学習できるようにする。

 しかし、従来の方法では、例えばソースドメインがRGB画像で、ターゲットドメインが遠赤外線画像のようにデータの“見え”が大きく異なる場合、ソースドメインとターゲットドメインの知識差(ドメインギャップ)を埋められず、高い性能が得られないという課題があった。

 今回、パナソニックHDが開発した、少数のラベル付きデータに対するドメイン適応技術は、ドメインギャップの大きい条件下であっても、高性能な少数のラベル付きデータに対するドメイン適応技術を実現するため、複数の画像を合成するデータ拡張方法の考え方を応用した新たな手法を用いる。同手法では、単純に画像を置き換えるだけではなく、画像に写る物体(自動車や人など)の領域情報を利用して、同じ種類の物体同士を置き換えることで、画像中の物体位置や存在確率なども考慮した。

 また、各画素のドメインの識別を行い、わざとドメインの識別を失敗するようにAIモデルを更新する学習となる敵対的学習により、AIモデルが両ドメイン共通の特徴で画像を認識できるようにした。AIモデルはソースドメインとターゲットドメインの区別ができなくなるため、両ドメイン共通の特徴で画像を認識するようになる。

提案手法の構成((a)Object aware Cross-Domain CutMix(OCDC)、(b)OCDC-based Discriminator Label(OCDCDL))

 これらにより、従来法では対応が困難な、ソースドメインとターゲットドメインの見えが大きく異なる場合にも適用可能な、少数のラベル付きデータに対するドメイン適応技術を実現した。

 パナソニックHDでは、今回開発した少数のラベル付きデータに対するドメイン適応技術は、ドメインギャップの大きな環境に対しても、従来法より圧倒的に少ない学習データで高精度にAIモデルの他現場展開を実現し、くらしや社会の課題を解決するAI技術の社会実装を加速すると説明。学習データの取得条件をコントロールすることが難しいユースケースでも、短時間・低コストで高精度なAIモデルを提供できるため、例えば導入先ごとにセンシング対象・状況(外観、カメラ位置、照明条件など)が異なる現場系ソリューションの導入期間短縮や、赤外線カメラなどを用いた屋外/暗所向け認識技術の開発期間短縮への貢献が期待できるとしている。