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NTT東日本が2022年度決算を発表、11期連続の増益で営業利益は過去最高を更新

NTT西日本の2022年度決算は減収減益に

 東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は12日、2022年度(2022年4月~2023年3月)決算を発表した。それによると、営業収益は前年比0.9%減の1兆7022億円、営業利益は同2.3%増の2854億円、当期純利益は同3.1%増の2024億円となった。11期連続の増益となり、営業利益および当期利益は過去最高を更新している。そのうち、SI・通信機器販売の売上高は前年比4.5%減の1327億円となった。

2022年度決算の状況

 NTT東日本 代表取締役社長 社長執行役員の澁谷直樹氏は、「営業収益では、固定音声関連の減少に加えて、東京オリンピック/パラリンピック関連需要の反動減、Wi-Fiの大口解約が影響した。営業費用では電気料金が187億円増加したが、販売経費の効率化、DXの推進効果もあり、営業利益は増益になった」と総括した。

NTT東日本 代表取締役社長 社長執行役員の澁谷直樹氏

 NTT東日本では、DXを通じて2万人の効率化を目指してきたが、2023年度までに2万4000人の効率化を実現。さらに、クラウドやSI、アグリ(農業)などの成長戦略分野(非回線ビジネス)へのシフトを加速。回線ビジネスに依存しない収益構造に移行する。

 成長戦略分野への人員および設備投資はすでに50%を超えているほか、2025年度には、同分野の売上高を、現在の38%から50%以上に拡大する。「成長分野を50%以上に高めるのはチャレンジングな目標である」と位置づけた。

 また、2023年度(2023年4月~2024年3月)の業績見通しは、営業収益は前年比0.2%増の1兆7050億円、営業利益は0.2%増の2860億円、当期純利益は0.3%増の2030億円とした。12期連続の増益と増収増益を目指す。

 「政府のデジタル化推進の動きなどを背景に、クラウドやSIが伸長。コールセンター受託をはじめとしたBPO事業も成長している。また、フレッツ光クロスによる10Gbpsインターネット接続サービスも好調である。2022年度をボトムに増収に転じたい」と述べた。

2023年度業績予想

 一方で、テレワークの普及拡大や、映像系サービスおよびIoTなどの利用拡大により、固定通信トラフックが5年間で3倍に増加していることも示し、「NTT東日本では、光ネットワークに対して、累計で2兆8000億円の投資を行い、コロナ禍においても安定した品質のネットワークを提供できた。今後、デジタル社会が進展するなかで、固定通信ネットワークはますます重要になる」と述べた。

固定通信ネットワークの重要性の高まり

2023年度は「デジタル社会を支えるアクセスネットワークの進化」など4点に注力

 2023年度は、「デジタル社会を支えるアクセスネットワークの進化」、「お客様のオンプレミス環境を支える統合マネージドサービス」、「地域社会のレジリエンスを支えるエンジニアリング」、「日本のインフラを支えるネットワークの更なる信頼性向上」の4点に取り組む。

地域循環型社会を支える取り組みの強化

 「デジタル社会を支えるアクセスネットワークの進化」では、2023年3月に提供を開始した「ひかり電話ネクスト」に続き、2024年3月にはワイヤレス固定電話を提供し、メタルサービスのマイグレーションを推進する計画を示したほか、高速化ニーズへの対応として、フレッツ光クロスを2022年12月から政令指定都市でサービスを開始。企業や自治体を対象に、フレット光と無線を組み合わせたインターワーク機能の提供に加え、地域エッジでは閉域網ならではのセキュリティを実装して、リモートワークに最適化した「シン・テレワークシステム」の提供を進める。

 さらに、2023年3月からスタートしたIOWNのオールフォトニクスネットワーク(APN)サービスを、データセンター事業者などにも提供。今後は、レディメイド型による即時開通などのデータセンター利用者向けサービスの拡充を図る。高信頼性を実現する光ファイバーのダブルループによるサービス提供も検討しているという。

 IOWN APNサービスについては、「受注には至っていないが、20件以上の引き合いがあり、手応えがある。学術界や研究所のほか、eスポーツや芸術などの先端的な取り組みを行っている企業が中心になっており、APNの実力値を試したいという段階にある。一緒になってニーズを作り上げ、社会実装の準備を進めていく必要があると考えている」と述べた。

デジタル社会を支えるアクセスネットワークの進化

 「お客様のオンプレミス環境を支える統合マネージドサービス」では、オフィス内でのメニューを強化。IT管理者が不足している中小企業を対象に、総合マネージドサービスを提供する。

 具体的には、有線と無線を含めたさまざまなアクセスサービスやデバイスなどのLAN環境を一元的に管理する「マネージドLAN」を2023年6月に提供。トラブルの未然防止などを行うプロアクティブサポートや、LAN環境を可視化し、管理業務の稼働を削減する統合ダッシュボード、SaaSに関わるIDの一元化を行う機能なども提供する。「現場密着の現場力を生かしながら、高度化するデジタル環境を支えていきたい」と述べた。

お客様のオンプレミス環境を支える統合マネージドサービス

 「地域社会のレジリエンスを支えるエンジニアリング」では、現場のエンジニアリング力を活用して、地域社会のレジリエンスの貢献することを目指す。具体的には、これまで分散していた技術力やエンジニアリング力を結集した全国1万人規模の総合エンジニアリング会社を、NTT-MEを中心に、2023年10月に設立。設備アセットの運用で培ったスキルや経験、DXの知見を生かして、スマートインフラ、防災、脱炭素といった観点から、地域課題の解決に貢献するという。

地域社会のレジリエンスを支えるエンジニアリング

 「日本のインフラを支えるネットワークの更なる信頼性向上」においては、2023年4月3日に発生した通信障害について陳謝しながら、「ネットワークの信頼性をさらに高めるには、業界横断での取り組みが必要である。通信機器メーカーと一体となり、リスク項目の洗い出しを行うほか、AIなどを活用した保守・運用の強化、外部専門家によるクオリティアシュアランスの強化を進めていく。得られた知見やノウハウは業界団体などを通じてオープンにし、インフラ業界全体の信頼性向上に貢献したい」と述べた。

日本のインフラを支えるネットワークの更なる信頼性向上

 また澁谷社長は、NTT東日本として、パーパスを初めて制定したことに言及。「これまでは光ネットワークを敷設することがミッションであったため、パーパスは制定してこなかった。パーパスは、地域の未来を支えるSOCIAL INNOVATION企業を目指すものであり、地域循環型社会の実現に向けて、さまざまなお手伝いをする姿勢を示した。地域の人たちとともに、夢や希望が感じられる循環型社会づくりに挑戦していきたい」と語った。

 パーパス(存在意義)は、「地域循環型社会の共創」とし、ビジョン(なりたい姿)は「SOCIAL INNOVATIONパートナー」とした。また、ミッション(使命)として、「地域の課題解決と価値創造、レジリエンス向上」を掲げ、バリュー(価値観・行動基準)も、Passion、Professional、Self-realizationの3点から制定した。

NTT東日本グループのパーパス

NTT西日本も決算発表、今期は減収減益

 一方、西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)の2022年度(2022年4月~2023年3月)決算は、営業収益は前年比0.8%減の1兆5016億円、営業利益は同16.2%減の1349億円、当期純利益は同15.7%減の932億円となった。また、2023年度(2023年4月~2024年3月)の業績見通しは、営業収益は前年比0.9%増の1兆5150億円、営業利益は同20.1%増の1620億円、当期純利益は同19.1%増の1110億円とした。

2022年度決算概況及び2023年度業績予想

 NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の森林正彰氏は、「2022年度は残念ながら減収減益になった。電話のトラフィックが想定よりも少なかったこと、SIが思ったような収益を得られなかったことが要因となっている。2023年度は、チャレンジングではあるが、2021年度の水準に戻すことに、決意を持って取り組んでいく」と述べた。

NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の森林正彰氏

 2023年度は、ソリューション事業や新領域事業などの成長分野でのビジネス拡大、全社ワーキンググループの発足を通じたコスト構造の抜本的な見直しによって、目標達成を目指すとしている。

 成長分野においては、サービス提供エリアを順次拡大しているフレッツ光クロスによるネットワークサービスの強化のほか、地域エッジおよびデータセンター事業、コンタクトセンタービジネス、バックオフィスコンサルティング、サポート・セキュリティの強化に取り組む。

 「教育DX、地域創生事業、業務DX、整備インフラビジネス、カーボンニュートラルなどの成長ビジネスを通じて社会課題の解決に貢献する」という。具体的な事例として、カーボンニュートラルの領域においては、2022年10月から、自治体や企業向けのEV化ソリューションのN.mobi(エヌモビ)サービスの提供を開始していることを紹介した。

 ソリューション事業では、地域創生クラウド基盤を活用した自治体向け「地域創生クラウド」の推進、現在、約1000万IDが連携しているエルIDを起点とした大学向け「教育DX」の推進のほか、コンタクトセンターのデジタル化を実現するDX基盤を活用し、EXの向上やCXの創出を実現する「顧客接点コンサルティング」などを通じて、トータルソリューションの提案を加速させる。

お客様へのトータルソリューション提案

 さらに、約600社のスタートアップ企業などや、約1万人の個人が参加するQUINTBRIDGE共創プログラムを通して、ビジネス共創ピッチや未来共創プログラムを展開。「プログラムの成果として、2023年4月からは、自治体向け防災DXサービスの提供を開始している。QUINTBRIDGEは中長期に向けた先行投資だが、想定以上の成果があがっている」とした。

QUINTBRIDGE 共創プログラム

 IOWN APNサービスについては、低遅延ネットワークを活用したいという顧客を対象に提案。今後、訴求活動に力を注ぐという。

 また、NTT西日本において、2022年8月と2023年4月に通信障害が発生したことについて陳謝。オペレーションの高度化やネットワークの冗長化および強靭化、通信機器メーカーなどとの連携強化、リスク強化体制の強化に取り組んでいることを示し、「重要インフラである通信サービスを提供する企業としての社会的責任を果たしていく」と述べた。

ネットワークの信頼性向上に向けた取り組み

 NTT西日本では、「『つなぐ』その先に『ひらく』。あたらしい世界のトビラを」をパーパスに掲げたことを示した。また、2025年に開催される大阪・関西万博については、「将来にどんなサービスが可能になるかを見せる場になる。夢のある技術を見せたい。IOWNを中心にした技術やサービスをアピールして、将来のビジネスにつなげたい」と語った。