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オムロン、「仮想化制御プラットフォーム」のPoCコンセプトモデルにRed Hat OpenShiftを採用

レッドハットがオムロンとの取り組みやエッジ・OT向けの取り組みなどを説明

 レッドハット株式会社は27日、オムロン株式会社による産業用システムおよびプロセスの管理と制御を強化するための「仮想化制御プラットフォーム」のPoCコンセプトモデルに、Red Hat OpenShiftが採用されたことを発表した。スペインで開催中の「MWC Barcelona 2023」での発表となる。

 オムロンはすでに、主要な産業分野を中心に、既存顧客に対して「仮想化制御プラットフォーム」のPoC提案を開始している。将来的には産業用PC向けにコンテナ化ソリューションのコンポーザブル・サービス化を支援する予定という。

 第1弾は、大量のオムロン社製PLC(Programmable Logic Controller、制御装置)を活用している業界大手企業が対象。それを皮切りに、インフラや交通、ヘルスケア事業など、広い産業分野への展開を目指す。

PLCによる制御を産業用PC上のコンテナで動くソフトウェアで実現

 同日開催されたレッドハット株式会社の記者説明会では、発表されたPoCコンセプトモデルについて、レッドハット株式会社の森須高志氏(テクニカルセールス本部 エコシステムソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクト)が解説した。

 今回のPoCは、2022年4月よりオムロン製産業用PCへの実装を開始し、9月にインストールテストを完了した。

 従来、例えば工場の生産ラインを制御する場合には、それぞれの要求ごとに開発したファームウェアをPLC(Programmable Logic Controller)に書き込み、制御箇所ごとに複数台のPLCを設置する。そして、その間をネットワークで配線する。

 この構成では、要求ごとにファームウェアを用意したり、複雑なネットワークを組んだりする必要があり、初期構築や組み換えに多くの時間がかかっていたという。さらに、工場で作るものが多種少量になっているため、生産ラインをすぐに組み換えられることが求められる、と森須氏は言う。

 この問題を解決するために今回のPoCでは、各機能をソフトウェアとして実装してOpenShiftのコンテナ化し、1台の産業用PCで動作させることで、構築をシンプルにする。さらに、産業用PCからのネットワークから制御箇所までの間は、高速フィールドバスにより複数のデバイスを数珠つなぎで接続することで、ネットワーク構成もシンプルにする。これによって、システムがシンプルになり、工場の柔軟性とアジリティが向上するという。

 OpenShiftなどのコンテナ基盤はもともとWebアプリケーション向けに開発された。レッドハットにとっては、今回のPoCの構築により、EtherCATプロトコル(イーサネットによるリアルタイム制御プロトコル)や、ソフトウェアPLC(ソフトウェアとして動作するPLC)がOpenShiftの上で問題なく動作することを確認できた、と森須氏は語った。

レッドハット株式会社 テクニカルセールス本部 エコシステムソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクト 森須高志氏

 OpenShift上のコンテナでシステムを構成することにより、運用の自動化・管理が強化され,「仮想化制御プラットフォーム」をクラウドから一元管理可能となる。コンテナ上のpodを入れ替えるだけで、制御機器の動作を変更できるようになり、メンテナンスも容易となる。また、各種マシンデータの収集や分析もクラウド上で実現できるようになる。

 説明会では、クラウドと組み合わせたPoCデモの動画も上映された。人間が手でジェスチャーをすると、それを撮ったカメラの画像からクラウド上で動作を認識し、ジェスチャーに応じてEtherCAT経由で実機を操作するというものだ。

PoCデモの概要。手によるジェスチャーで実機を操作する
PoCデモの動画。ハンドサインにより奥のLEDが点灯

 レッドハットでは、今後もオムロンとの協業を続けていき、ハイブリッドクラウドと産業用エッジを融合させたソリューションを提供していく、と森須氏は語った。

クラウドネイティブ技術のエッジコンピューティングへの適用を支援

 レッドハットのエッジとOT(Operational Technology、産業機器の運用・制御技術)への取り組みについては、レッドハット株式会社の小野佑大氏(クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト)が解説した。

レッドハット株式会社 クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト 小野佑大氏

 例えば製造業では、PLCなどのOTの機器から収集したデータを活用して、分析やAIで利用するような取り組みを行っている。「その中で、工場でさまざまなメーカーのPLCが展開されていたり、特定の製品を導入することから進めてしまって、なかなか先に進まないという問題が起こりうると認識している。内製化がエッジコンピューティングでも必要」と小野氏は言う。

 「そこで、レッドハットが強みとするクラウドネイティブ開発のテクノロジーをエッジコンピューティングにも適用し、内製化に取り組めるようにするソリューションを提供する」と小野氏。具体的には、人材育成および開発プロセス変革といったコンサルティングと、オープンソフトウェア(OSS)活用のアプリケーションプラットフォームを提供する。

レッドハットのエッジのアプローチ

 小野氏は、エッジへのOpenShiftの展開の4パターンを紹介した。OpenShiftのフルクラスタを扱えないハードウェアにRed Hat Device Edgeを展開するパターン、OpenShiftを1ボックスで展開するOpenShift Single Node、工場の生産ラインに近いところなどにOpenShiftのワーカーを置いて中央にコントロールプレーンを置くOpenShift Remote Worker Node、コントロールプレーンとワーカーノードを同一ノードに常駐させ3台のサーバーで冗長化するOpenShift 3-Nodeだ。

 そのためのプロダクトの1つとして、小野氏は、10月に発表された「Red Hat Device Edge」を紹介した。軽量Kubernetes「MicroShift」と、RHELを元にエッジに最適化されたLinuxをパッケージにしたものだ。

 さらにレッドハットのエッジ向けのカバー範囲として、エッジデバイス向けのRed Hat Device Edgeや、オンプレミスサーバーのOpenShift、その上のアプリケーション開発基盤のRed Hat Application Foundationsなどを紹介した。

エッジへのOpenShiftの展開の4パターン
Red Hat Device Edge