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米Red Hat、RHELやOpenShiftの軽量版をエッジデバイス向けに提供する「Red Hat Device Edge」などを発表
2022年10月31日 06:15
米Red Hatは、コンテナ技術のイベント「KubeCon North America 2022」(10月24日~28日)と、構成管理ツールAnsibleのイベント「AnsibleFest 2022」(10月18日~19日)に合わせて、両分野でいくつかの新発表をした。
例えば、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)とOpenShiftの軽量版をエッジデバイス向けに提供する「Red Hat Device Edge」が発表された。
またAnsibleでは、イベントからAnsibleのプレイブックを実行する「Event-Driven Ansible」や、Ansibleの設定を編集するときに説明をもとにAIがタスクの内容を提案する「Project Wisdom」もアナウンスされた。
日本で10月27日に開催されたイベント「Red Hat Summit: Connect | Japan」のために来日した、米Red HatのAshesh Badani氏(製品統括 シニアバイスプレジデント)が、これらの発表について報道陣に紹介する場がもたれた。その内容をレポートする。
OpenShift関連の新発表
まずはKubeConにおける、OpenShift関連の発表をBadani氏は紹介した。
エッジデバイス向けの「Red Hat Device Edge」
「Red Hat Device Edge」は、ロボット、IoTゲートウェイ、POSなどの小型機器に、従来型またはコンテナ化されたワークロードを柔軟にデプロイするためのソリューション。OpenShiftのエッジ機能を元にした軽量Kubernetes「MicroShift」の、エンタープライズ対応およびサポート付きディストリビューションと、RHELを元にエッジに最適化されたLinuxを提供する。
それによって、エッジデバイスへのソフトウェアやAIモデルのデプロイやアップデートを迅速にするのが目的だという。
Badani氏はRed Hat Device Edgeについて、「とてもエキサイティングな内容でたくさんの注目を集めている」と語った。
Lockheed Martin社などエッジ分野での事例や協業
続いて、Red Hat Device Edgeなどのエッジ技術について、顧客企業との協業や事例をBadani氏は紹介した。
まず今回、航空機会社のLockheed Martin(ロッキード・マーティン)との協業がRed Hatから発表された。軍用の無人航空機システム(UAS)においてRed Hat Device Edgeを採用し、小型のプラットフォームで大規模なAIワークロードを処理できるようにするという。
またスペインの顧客企業では、風力発電設備に飛んでくる鳥を監視している。スペインの法律では絶滅危惧(きぐ)種を殺してしまうと罰金が科せられるため、監視動画から鳥をパターン認識し、一定のパターンが合致すると稼働を止めるという。特に、AIによってさまざまな鳥を検知するため、ルールやソフトのアップデートする必要があるため、Red Hat Device Edgeが採用されたとBadani氏は説明した。
7月に発表された、スイスのABB社とのパートナーシップも、Badani氏は紹介した。ABBは大規模製造業向けのソフトウェアを開発しており、RHELとOpenShiftによって、産業用AIのデプロイの柔軟と拡張性を向上させるという。
「エッジやIoTのユースケースが増えることで、それぞれに最適化した応用がこれからも増える」とBadani氏はコメントした。
ACSマネージドサービスなどセキュリティ分野の新発表
Kubernetes関連のセキュリティについても新発表があった。
「Red Hat Advanced Cluster Security for Kubernetes マネージドサービス」は、コンテナ向けセキュリティ製品「Red Hat Advanced Cluster Security for Kubernetes(ACS)」のマネージドサービス。ACSはRed Hatが2021年に買収したStackrox社に技術が元になっている。どのような形で動いているKubernetesに対しても、ACSをマネージドサービスで利用できるようにする予定だとBadani氏は語った。
また、Red Hatも開発に参加しているオープンソースの「sigstore」がバージョン1.0になったこともBadani氏は紹介した。sigstoreは、ソフトウェアに署名して真正性を検証できる機能を提供するものだ。
以上のKubeCon North America 2022での発表について、Badani氏は「エッジやセキュリティが関心を集めていた」と語った。
Ansible関連の新発表
次に、AnsibleFestでのAnsible関連の発表をBadaniは紹介した。
AWSやAzureのマーケットプレイスからAnsible Automation Platformを提供開始
まず、AWSやAzureにおいて、マーケットプレイスからのAnsible Automation Platformの提供を開始した。利用者は、自らデプロイして管理する負担なしにAnsible Automation Platformを利用できる。なお、課金は各クラウドプラットフォームから行われる。
Event-Driven Ansibleが発表
新しい「Event-Driven Ansible」も発表された(デベロッパープレビュー)。名前のとおり、イベントを起点にプレイブックなどのアクションを実行するものだ。
例えば、ルータがダウンしたらまず再起動するというルールを定義して、人手を介さずに解決できるようにするとBadani氏は説明した。
説明文からAnsibleのタスクを作成する「Project Wisdom」
Red HatとIBM Labsの共同開発による「Project Wisdom」も紹介された。AIによる自然言語処理を自動化に使うものだという。
IBMによる紹介動画では、Visual Studio Code上でAnsibleのYAML形式のプレイブックを編集していて、タスクの名前(説明文)に「Install nginx and nodejs 12 Packages on RHEL」と自然言語で入力すると、タスクの実行内容の設定が提案されるところがデモされている。いわば、GitHub Copilotがプログラミング言語のコードを提案するものの、Ansibleプレイブック版といえる。
Project WisdomについてBadani氏は、「より多くの人がAnsibleを使えるようにする取り組み」と説明した。例えば、まだAnsibleのプレイブックに慣れていない新入社員が、書き方を一から学ぶのではなく、AIに助けられてプレイブックを書けるようにする、というケースが考えられるという。
さらにBadani氏は、「Ansibleという限られた分野でスタートして、より広い用途への応用をIBMとともに考えていく」と語った。