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シャープや東芝インフラシステムズなど9者、ローカル5Gを活用した放牧地管理の実証実験

新冠町のビッグレッドファーム明和で課題実証と技術実証を実施

 シャープ株式会社、有限会社ビッグレッドファーム、北海道新冠町、東芝インフラシステムズ株式会社、エクシオグループ株式会社、株式会社調和技研、ヤンマーアグリ株式会社、名古屋テレビ放送株式会社、株式会社道銀地域総合研究所の9者は16日、2022年11月から2023年2月の約3カ月にわたり、ビッグレッドファーム明和(新冠町)にて、ローカル5Gを活用した放牧地管理の実証実験を行ったと発表した。2022年8月に採択を受けた総務省の開発実証事業として実施されたという。

ローカル5Gを活用した広大な放牧地管理作業の様子(左:草刈り、右:除雪)

 この実証実験のテーマは、1)ローカル5Gを介した無人ロボットトラクターの遠隔操作による、軽種馬用放牧地の管理作業の省人化に向けた課題実証、および2)広大な放牧地での分散アンテナによるローカル5Gエリアの柔軟な構築に向けた技術実証――から構成される。

 軽種馬育成は、広大な放牧地管理や突発的な業務に伴う長時間労働に加え、牧場設備の老巧化や従業員の高齢化、熟練者不足などの課題を抱えており、労働環境の改善や、新技術導入による省人化が求められているとのこと。そこで今回の実証実験の課題実証では、ローカル5Gを活用して、ロボットトラクターの作業領域の様子を4K高精細映像で伝送することにより、リアルタイムに遠隔操作できるシステムを構築。軽種馬育成において重要な、放牧地管理作業の省人化に向けた実証を行った。

ロボットトラクターによる放牧地管理作業の構成

 一方で、ローカル5Gの電波は直進性が高い高周波数であるため、電波の反射が少ない広大なエリアでは、障害物があると通信障害が生じる恐れがある。そこで、小型アンテナを複数設置する分散アンテナシステムを採用。広大な放牧地でローカル5Gエリアを柔軟に構築する技術の実証に加え、基地局設備を搭載した可搬型システムを活用し、複数の分散アンテナと接続することにより、1基の基地局システムで複数のエリアに対応できるようにした。

分散アンテナシステムによるローカル5Gエリア構築
実証実験での通信システム構成図

 なお、全体取り纏め、ローカル5G関連設備・システム検討、技術開発、評価、他地域への横展開をシャープが担当。東芝インフラシステムズが分散アンテナに関するシステム・エリア構築支援を、ヤンマーアグリがロボットトラクターの自走制御システム開発、放牧地走行テスト実施をそれぞれ担当している。

 参加各者は今後、本実証実験での技術蓄積をもとに、広大な農用地や牧草地での効率的なローカル5Gエリア構築による作業の省人化や、高精細映像伝送を用いた顧客ニーズへの対応などを図る考え。また、他分野への展開も積極的に進め、ローカル5Gによる地域産業の発展に貢献するとしている。