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HPE、サーバーの管理負担軽減と強固なデータ保護を支援する2つの新サービスを提供

 日本ヒューレット・パッカード合同会社(以下、HPE)は24日、分散型エンタープライズIT管理向けクラウドサービスとして、サーバー管理コンソール「HPE GreenLake for Compute Ops Management」と、データのバックアップと復旧を実現する「HPE Backup and Recovery Service」の提供を開始すると発表した。いずれも、HPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォームを通じて提供される。

 新サービスのうちHPE GreenLake for Compute Ops Managementは、エッジ環境やデータセンターに分散したサーバーの導入・監視・管理を行う、クラウドネイティブな統合管理コンソールだ。

 あらゆる場所にあるオンプレミスのサーバーをクラウドから一元管理できるサービスで、管理対象となるサーバーの設置場所は問わず、管理者はどこにいても、ブラウザさえあればアクセスが可能になる。管理サーバーが不要になり、導入コストや運用に関わる工数がなくなるため、「管理のための管理から解放される」としている。

あらゆる場所にあるオンプレミスのサーバーを一元管理
管理サーバーをメンテナンスフリー化

 このほか、導入から運用、監視までのサーバーのライフサイクルをクラウドから一貫して管理できる点も特徴。大規模なシステムや分散化システムの管理を、APIを利用して自動化できる。

 日本ヒューレット・パッカード コアプラットフォーム事業統括 サーバー製品本部 カテゴリーマネージャーの日野創氏は、「金融や保険の店舗や営業所といったサーバーを複数箇所にてオンプレミスで利用している環境、通信分野の基地局の統合管理、小売店舗や流通倉庫、工場、病院などの拠点ごとに分散したサーバーの管理のほか、サーバー管理者が足りない大規模サービスプロバイダー、管理コストや管理者のスキルが限定的な中堅・中小企業にもメリットがある。従来のデータセンター環境だけでなく、エッジや中堅・中小企業におけるサーバー管理の課題を解決できる」とした。

 また、日本ヒューレット・パッカード プリセールスエンジニアリング統括本部 コンピュート技術部 シニアソリューションアーキテクトの辻寛之氏は、「ファームウェアの管理においては、不具合や脆弱性の把握の際には、手作業でWebなどの情報を収集するため、手間と時間がかかり、漏れが発生したり、アップデート作業も手作業によってダウンロードやアップデートを行う手間や、数GBにも達するため時間がかかったりといった課題があった。HPE GreenLake for Compute Ops Managementでは、これらの作業を自動化することができるため、管理者の工数を飛躍的に削減できる」と述べた。

導入から運用、監視までサーバーのライフサイクルをクラウドから一貫して管理

 米Kimley-Hornでは、約100カ所に分散するオフィスのサーバーに対し、HPE GreenLake for Compute Ops Managementを導入することで、複雑化するシステム管理を簡素化および効率化でき、夜間のサーバー更新にかかっていた時間を4時間から45分に短縮。システムダウンタイムの大幅な削減とともに、ワークライフバランスの改善にも貢献したという。

 国内では、SCSKおよび横河レンタ・リースが検証済み事例として紹介された。SIerにとっても、顧客ごとに個別に構築された数百件のサーバーを一元的に管理できるメリットがある。今後はマルチテナントの機能も強化していくことになるという。

米Kimley-Hornの事例
SCSKおよび横河レンタ・リースの事例

 なお、HPE GreenLake for Compute Ops Managementはサブスクリプションで提供される。最低契約年数は1年間で、中小規模システム向けのStandard Tierが1サーバーあたり月額1000円から、大規模システムや分散化されたシステム向けの高度な管理機能を提供するEnhanced Tierは月額2400円からとなっている。

ハイブリッドクラウドのデータバックアップ/復旧を実現するクラウドサービス

 一方のHPE Backup and Recovery Serviceは、ハイブリッドクラウド環境のために設計された、データのバックアップと復旧を実現するクラウドサービスだ。データ保護のクラウドサービスであるHPE GreenLake for Data Protectionの一翼を担う製品と位置づけられている。

HPE Backup and Recovery Serviceの位置付け

 日本ヒューレット・パッカード コアプラットフォーム事業統括 ストレージ製品本部カテゴリーマネージャーの関根史和氏は、「従来は、データセンターにまとまっていたデータが、エッジからクラウドへ分散し、管理がより複雑になっている。またデータの種類も多岐に渡っている。ランサムウェアからデータをどう守るかという課題もある。だが、バックアップに人を避けないのが実情であり、管理を簡素化したいというニーズがある。HPE Backup and Recovery Serviceでは、こうした課題に対応し、設定した共通の保護ポリシーをもとに、高いコスト効率でデータを保護できる」とした。

 このHPE Backup and Recovery Serviceは、データ保護のモダナイゼーションを実現する柔軟性を提供し、データ保護要件を満たす迅速なデータ復旧とデータの長期保存を可能にするという。

 3つのシンプルなステップで、5分以内に仮想マシン(VM)を保護。さらに、ハイブリッドクラウド全体でランサムウェア攻撃からの保護を行える。従量課金制での利用に加えて、クラウド運用の効率化や重複排除技術も利用できるため、データ保護にかかるコストを抑制できる。

 「クラウド管理ツールで一元管理できることや、保護ポリシーを数クリックで設定できるシンプルさが特徴であるほか、一定期間変更できないデータの不変性を維持し、ランサムウェア対策を行える安全性を実現。従量課金や重複排除バックアップによる効率性も特徴となる。HPE Catalyst技術の活用により、ストレージの効率化も実現しており、他のソリューションに比べて、バックアップに使用する領域を半分から5分の1にまで削減でき、これも大幅なコスト削減に貢献する」という。

卓越したストレージ効率

 また、日本ヒューレット・パッカード プリセールスエンジニアリング統括本部ストレージ技術部部長の岡野貴広氏は、「データバックアップの3-2-1ルールが簡単に作成でき、バックアップのリストアも簡単に行える。データを安全に管理できるサービスになる」と自信をみせた。

 VMware仮想マシンに対応したサービスの提供を国内で開始。今後、Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)インスタンスと、Amazon Elastic Block Storage(EBS)ボリュームを対象としたサービスを追加する。課金単位はVM単位とGB単位を用意するほか、90日間無料提供する評価版も用意している。

 HPE GreenLake edge-to-cloud体感センターでの試験的な利用や、HPE Pointnextのコンサルタントによるグローバルでの実績に基づいたベストプラクティスの提案なども行う。

HPE Backup and Recovery Serviceの提供形態

 なお、2021年にHPEが買収したディザスタリカバリ製品のZertoの機能も、HPE GreenLake for Data Protectionに統合。Data Services Cloud Consoleに追加していくことにも言及した。

 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏は、「今回の製品は、Edge-to-Cloud戦略を実現する上でも重要な発表になる。従来型のハードウェアやソフトウェア、保守の売り切りと、すべてをAs a Serviceで提供する『Managed for Customer』に加えて、今後は、一部の製品やサービスだけをas a serviceで提供し、顧客のセルフマネージで提供する『Managed by Customer』を強化する。今回の製品は、『Managed by Customer』に含まれるものであり、すべてをHPEに任せるのではなく、一部の機能だけをHPEのサービスとして利用したいというニーズに対して、小回りが利くサービスとして提供することになる」と述べた。

新たなサービスの位置付け
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏

 また、2022年6月に開催した年次イベント「HPE Discover 2022」において、同社のアントニオ・ネリCEOが、2022年末までに、すべてのポートフォリオをEverything as a Serviceにするという目標を達成したとの宣言にも触れ、「HPE GreenLakeの進化の旅路は第2章へ突入した」と位置づけた。

 HPEでは、エッジ、クラウド、データをメガトレンドにとらえている。本田執行役員は、「さまざまな場所でデータが発生し、それを計算し、これらを結びつけるネットワーキングが常に変化しつづけることで、分散型エンタープライズの時代に入ることになる。そこで求められるITの姿がas a Serviceである」とし、「すべてをas a Serviceで提供するために、HPE GreenLakeを投入し、CAPEXからOPEXへ変え、過剰投資を抑制し、テクノロジーリフレッシュにも活用できるようにしてきた。2022年にはHPE GreenLake Cloud Platformを発表し、as a Serviceを束ねる基盤の強化を図った。これによって、HPEはas a Serviceカンパニーになった」と、これまでの取り組みを振り返った。

 その上で、「だが、ビジネス面で考えると、第2章がスタートしたところである。これまでは、販売してきたものをGreenLakeとしてラッピングして、as a Service化してきたが、今後は、製品部門が提供する製品およびソリューションを、あらかじめas a Service化して投入していくことになる。その中核になるのは、HPE GreenLake Cloud Platformであり、コンピュート、ストレージ、ネットワーキング、GreenLakeの機能を提供することになる」と語った。

as a Service化の第2章

 同社が発表しているクラウドネイティブストレージのHPE Alletraは、クラウドから管理することを前提とした設計になっており、これがあらかじめas a Service化したストレージサービスの第1弾となる。こうした製品を、さまざまなポートフォリオに展開することになるという。