熊谷組、京セラ、NECの3社が実証実験、ローカル5Gを用いた建機の遠隔操作と自動運転を検証

　株式会社熊谷組、京セラ株式会社、日本電気株式会社（以下、NEC）の3社は22日、熊谷組技術研究所屋外実験ヤードにて、ローカル5Gを活用した無人化施工の実証実験を6月に実施したと発表した。

　近年では、建設現場にてICTを全面活用することにより、建設生産システム全体の生産性向上を図る「i-Construction」に関する取り組みが進んでいる。その中で、災害補修時における二次災害予防のための無人化施工技術に注目が集まっており、その高度化には、4Kによる車載カメラ映像の高品質化や、建機の傾き・振動といった現場情報のフィードバックが必要となることから、従来よりも高速・低遅延で伝送可能な無線通信システムの適用が必要とされているという。

　このため3社では、地域や産業の個別ニーズに応じて地域の企業や自治体が構築可能なローカル5Gに注目し、今回、熊谷組技術研究所の屋外実験ヤードにローカル5Gシステムを構築して、実証実験を実施した。加えて、ヤード内を移動する建機の位置と通信速度の情報を組み合わせることで、通信状況を視覚化する方法を確認したとのこと。

　具体的には、技術研究所の本館および土質実験棟にNEC製ローカル5G基地局を設置し、アンテナを屋外実験ヤードに向けて調整した。基地局ユニットから土質実験棟内のサーバーを経由して遠隔操作室の通信機器まで回線接続が行われている。

　建設機械上には受信電力情報をリアルタイムで取得できる等の運用自由度の高い京セラ製ローカル5G対応デバイス「K5G-C-100A」を設置。車載カメラの映像をIPネットワークの上り回線を通じてパケット伝送を行い、遠隔操作室のモニタに表示する。

基本構成図

　実証実験では、屋外実験ヤード内でのスループットや遅延時間測定に関する基礎実験が行われ、基地局間のハンドオーバー機能（移動端末接続する基地局のスイッチ機能）を通じて、屋外実験ヤード内での高い上りリンクスループット、低遅延を達成可能なことを確認した。

屋外実験ヤード内移動時の上りリンクスループット（左）と遅延特性（右）

　今後は、複数の建設機械にローカル5G対応デバイス（K5G-C-100A）を接続し、遠隔操作を実施する際の操作性を調査して、現場環境での実験試験運用を行う予定。免許による周波数帯域の占有可能な特長を生かして、他端末からの帯域内干渉が発生しやすい無線LANとの特徴の差異を把握しつつ、複数の無線通信システムを併用しながら、建機の遠隔操作と自動走行を高度化可能な、ローカル5Gの本番導入に向けた取り組みを加速するとしている。