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日本マイクロソフトが描く業務プロセス変革と最新セキュリティ戦略――津坂美樹社長が2027年度戦略を説明
2026年8月4日 11:44
日本マイクロソフト株式会社は3日、最新の取り組みについて、同社の津坂美樹社長が説明。「2023年2月に、日本マイクロソフトの社長に就任したときに生成AIブームが始まった。Copilotもまだ3歳である。だが、業界がこれだけ変化するとは思っていなかった。特に、日本でのAI普及は世界的に見ても加速している段階にある」と述べた。
そしてその具体例として、「日本における生成AI利用率が世界平均の3倍を超えるペースで成長していること、日経225企業のうち87%がAIエージェントを活用し、その100%がカスタムエージェントを市民開発によって実現している」といった調査結果を公開した。
また、「Microsoftは、日本のAIインフラなどに対して、2026年までの4400億円を投資したのに続き、2029年までに1兆6000億円を投資することをコミットした。ここでは、官民連携によるセキュリティ強化、人材育成の拡大にも注力することになる」とも述べている。
日本マイクロソフトは2026年7月から、同社2027年度(2026年7月~2027年6月)をスタートしている。2027年度も、AIの加速が重点施策になることは間違いない。
また、セキュリティに対する取り組みについても言及した。
津坂社長は、Microsoftの全世界22万人の社員のうち、3万5000人がセキュリティに専業で従事し、組織的にも最大の陣容となっていること、顧客やパートナーだけでなく、Microsoft自身のセキュリティを守っていることを紹介。新たにProject Perceptionを発表し、8月3日から日本でもパブリックプレビュー版の提供を開始することにも触れた。
「Project Perceptionは、Redチームが攻撃し、Blueチームが検知して守り、Greenチームが治すというサイクルを実現する。これはMicrosoft社内でも活用してきた仕組みである。いよいよ、皆さんに提供できるようになる。マルチモデルやマルチエージェントを活用する環境においても、コストを抑えながら、最先端の技術を活用して、自らを守ることができる」と述べた。
また、Microsoftが目指すAIの基本方針として、「Intelligence」と「Trust」を挙げた。
津坂社長は、「Intelligenceでは、組織の中のデータだけでなく、Microsoft IQによって、組織に関わるすべてのIQを活用できる。例えば、Work IQは、私が『どんな仕事をしているのか』『どんな情報を見ているのか』『どういう意思決定をしているのか』といったことを蓄積している。また、Web IQでは外にあるどんなデータを持ち込んで、意思決定をしているのかといったことを蓄積する。Foundry IQでは、それらのデータをもとにどんなアプリを作り、どんな新たなシステムを作っているのかがわかる。そして、Fabric IQによって、社内外のどんなデータを活用しているのかを理解し、蓄積することになる」と説明。それらの基盤を活用することで、Intelligenceという観点からAIを進化させることができるとした。
また、Trustに関しては、「信頼のプラットフォームを構築するのは、複数のエージェントをしっかりと守りながら稼働させるためのAgent 365、AI開発者がツールを活用し、Trustを実現できるFoundry、セキュリティ担当者向けのMicrosoft Defenderの3つである。これらのすべてをMicrosoft Azureで動作させることができる」と述べた。
その上で、「これらのツールをすべて使いこなす最先端企業を、『フロンティア組織』と呼んでいる。日本でも『フロンティア組織』が増えている。『フロンティア組織』になるためには、従業員のエクスペリエンスを変え、顧客との接点やビジネスプロセスそのものを変える必要がある。『AIふりかけ』をパッパッとかけるだけでは、物事はよくならない。『AIファースト』で考え、イノベーションのスピードを上げなくてはならない。Microsoftは、そこに注力している。日本マイクロソフトでは、『あなたのCopilotとして成長を支える』ことを宣言している。すでに、日経225企業の94%が、Copilotを使っている。仕事をサポートするテクノロジーとして、Copilotを浸透させ、世の中への貢献を図る」と述べた。
なお、同社では、Microsoft 365 Copilotの導入に関するデータについても公表。有償シート数が3000万を突破。前四半期に比べて2倍以上に拡大しており、個人の業務支援ツールから、業務プロセス全体を担う存在に進化していることを強調。5万シート以上のMicrosoft 365 Copilotを導入した企業は、前年同期比で7倍以上に増加。過半数の従業員にMicrosoft 365 Copilotを展開している企業数は、前四半期比で約75%増加しているという。
また、Microsoft 365 Copilotとのユーザー1人あたりの対話回数は、前年比で約2倍に増加し、複数の機能を利用するユーザー数は、前年比で3桁成長を記録。Microsoft 365 Copilotの平均週間利用率はOutlookやTeamsと同等水準に到達しているという。
「人的資本×トークン資本」で企業の“知”を競争力へ変革
日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏は、「人的資本×トークン資本――お客様の知を競争力にするマイクロソフトの最新技術」と題して、最新技術について説明した。
岡嵜執行役員常務は、「AIは、企業の変革を加速する原動力になるが、それを支えるのは人的資本とトークン資本である」と定義。「変革の中心となるのはあくまでも人である。人は、判断力、専門性、注意力で力を発揮することになる。また、生成AIやAIエージェントを活用しながら、企業の知のトランスフォーメーションを加速することができる存在でもある。人的資本もトークン資本も、『資本』と称しているように、これらは有限である。企業の大切なところで、これらのリソースを活用することが大切である」とした。
その上で、企業の競争力につなげるための3つのチャレンジとして、「モデルの進化とコモディティ化」、「大量のコンテキストとプロンプトの限界」、「AIを前提としたシステムモダナイゼーション」を挙げた。
「こうした課題を解決するために、AIを活用しながら継続的に学習させ、進化させるループを、企業自らの仕組みとして持つことが大切だと考えている。AIを成果につなげていくために、自らの組織に合致した独自の評価環境を持つ『コントロール』、企業をAIと連携させる力や、AIエージェントを自ら開発する力などの『能力』、複数のモデルを使いこなす力を持つ『選択肢』、人でやった方が安く済むといったことがないように、適切なAIの費用で実現する『コスト』、それらによって実現する『複利的成果』が大切である。この中心にあるのが『Intelligence』と『Trust』になる」と語った。
また、AIは技術進化に伴って、持つ能力が変わっていくことも指摘する。
人に当てはめれば、当初はインターンであったものが、新卒社員となり、専門家やチームメンバーへと育ち、組織のベテラン社員になっていくというように、AIも進化することになると比喩した。
「組織におけるAIは、外の知識を持つだけではだめで、ベテラン社員のように、自らの組織に関する知識を持つ必要がある。組織知を取り込んだAIエージェントを作る必要がある。さらに、組織知を取り込んだAIエージェント同士が連携しながら、さらに進化していく仕組みを作らなくてはならない。それを果たすのが、Microsoft IQである。マイクロソフトでは、仕事のコンテキストを提供するWork IQ、社外にある世界の情報を取り入れるWeb IQ、ビジネスのデータ基盤を整備するFabric IQ、エージェント向けのナレッジ基盤であるFoundry IQを提供している」などと述べた。
説明では、自然言語の応答とシンプルなタスクを実行するための目的に特化したエージェント群であるCopilot Chat、クラウド環境で、複数にわたる工程の作業を実行できるCopilot Cowork、ローカルとクラウド環境を横断して、自律的にタスクを実行するMicrosoft Scoutを活用した業務プロセスの変革をデモンストレーションして見せた。
ここでは、室長、課長、社員の3人が会議を行い、AIが作成した議事録をもとに、必要なアクションをCopilot Chatが整理。この結果をプロンプトとしてCoworkに投げて、複数のタスクを実行する様子を見せた。さらに、プレビュー版を提供しているMicrosoft Scoutでは、出張の経費精算を自動的に行える様子も紹介した。
岡嵜執行役員常務は、「最初はCopilot Chatでのやりとりのように、人とアシスタントの関係だが、Coworkによって、人がAIエージェントに依頼して、現場作業を実行する環境に進化することになる。さらに、Microsoft Scoutでは、AIエージェントが役割を持ち、人と協調しながら動作する世界がやってくる。ここまでくると、AIを『デジタル社員』と呼べる存在になる。『デジタル社員』は、組織の一員として行動するAIエージェントであり、組織内で自分のIDを持ち、社員のように存在する。また、社内のやりとりをつなぐ橋渡し役も担う。そして、組織の知を継続的に蓄積して、自律的に自己改善し、成長していくことになる」とした。
人とAIエージェントが、自然言語で会話をしながら、社員の予定をもとにして、会議の予定を決めたり、それを別の社員に通知をしたりといった調整を自律的に行い、カレンダーに表記し、さらに必要な社員の会議への参加を促し、会議を実施する様子も紹介した。
「人とAIエージェントが、組織知を共有して動くだけでなく、安心安全に動かす仕組みも必要である。マイクロソフトでは、人とAIエージェントが、安心して協働できる環境を実現できる。人々が実現したいことを実現し、企業の変革を加速する役割を担っていく」と述べた。
中堅中小企業の強みを生かすAI活用とエコシステム
一方、日本マイクロソフト 執行役員常務 コーポレートソリューション事業本部長の小林治郎氏は、中堅中小企業向けのAI活用の実態について説明した。
小林執行役員常務は、「中堅中小企業には、労働力不足、低い生産性、育成コストの増加といった課題があるが、意思決定スピードの速さと機動力、現場や顧客との近さ、独自ノウハウを蓄積しているという強みを持つ。AIは、中堅中小企業ならではの強みを生かす部分に活用することで、さらに利用が加速されることになる」と切り出した。
Vanguard Tokyo法律事務所では、企業のコンテキストを理解して、英文メールのドラフトを作成して、月25時間の削減を実現。青山財産ネットワークス金沢では、暗黙知をエージェント化して形式知化。若手育成期間を3年短縮し、顧客面談時間を1.2倍に増やしたという。NGBでは、AIの活用により、属人的なIT運用を標準化して、サーバーを80台から60台に削減。グローバルエンジニアリングでは、電力需要AIを内製化し、予測時間の短縮と、予測誤差を40%も低減したという。
また、国内の数千社のパートナーが、中堅中小企業のAI活用を支援する環境を整えていることを強調。青森から沖縄まで27拠点を展開しているMicrosoft Baseを通じて、AIよろず相談所を設置したほか、競い合いながらAIを楽しく学べるAI実践学習機会のMicrosoft 365 Copilot Cupは、すでに3回開催し、約1000人が視聴していることも紹介した。
「Microsoft IQの活用が、中堅中小企業における効率化を推進するだけでなく、能力を拡張することを期待している。AIは、日本の中堅中小企業こそ必要である」と述べた。
自律型AIエージェントでセキュリティ運用を自動化する「Project Perception」
さらに、日本マイクロソフト 技術統括室/チーフセキュリティオフィサーの河野省二氏は、セキュリティの最新情報について説明。Microsoft Securityとして提供している自律型AIエージェントの「MDASH」と「Project Perception」について紹介した。
河野CSOは、「MDASHは、開発ライフサイクルにおいて、AIエージェントを活用し、脆弱性を管理するものであり、Project Perceptionは、セキュリティ運用での課題を、自律型AIエージェントを活用して、管理していくものである。これにより、DevOpsの両面にわたってセキュリティを強化し、組織のビジネスインテリジェンスの成長とともに、目的遂行型セキュリティの管理精度が高まることになる」とした。
また、企業におけるセキュリティを取り巻く環境で、最も大きな課題は人材不足であり、スキルアップに時間がかかっていること、システムの複雑性により、セキュリティ課題を特定するのに時間と工数が取られていることを指摘。さらに、EDRやXDRでは、あらかじめ決められた手順での対応しかできないという課題があり、これも人手をかけることや、迅速な対応面での課題につながっていることを指摘した。
「オンプレミスからクラウドにまで広がるシステム全体をカバーするには、もはや人手では限界がある。Project Perceptionでは、AIエージェントを活用することで、セキュリティオペレーションを自動化し、これらの課題を解決できる」と述べた。
Project Perceptionは、攻撃、対応、修復を行う3つのAIモデルで構成。リアルタイムモニタリングを行い、異常を検知するとともに、AIエージェントがシステムに攻撃を行い、自ら最適な解決策を模索して、実行する。また、この活動の成果を、Graphに蓄積するとともに、Microsoft IQの基盤を活用することで、AIが使いやすくするようにデータを再構成。ラーニングループによって、Project Perception によるAIエージェントをさらに進化させ、常に安全な状態を構築できるようになる。
「8月3日から、日本でもパブリックプレビューの提供を開始する。ぜひ日本の企業にProject Perceptionを使ってもらいたい」と述べた。


















