日立とNTTドコモ、5G SAとARを活用した組み立て作業支援の実証実験を実施

　株式会社日立製作所（以下、日立）と株式会社NTTドコモは30日、製造業や社会インフラ分野でのDX推進に向けたユースケース創出のため、SA（スタンドアローン）方式の5G環境下で、AR技術を活用した組み立て作業支援のアプリケーション（以下、AR組み立てナビ）が安定稼働できるかを確認する実証実験を、2022年3月1日～29日に実施したと発表した。

　AR組み立てナビは、作業現場の映像データをAIでリアルタイムに分析・判断し、作業台上にプロジェクターから作業者がとるべき行動をプロジェクションマッピングで表示することで、的確な作業支援を行うアプリケーション。

ARを活用した組み立て作業支援実証

　実証実験では、AR組み立てナビを、ドコモ網内の設備にクラウドコンピューティング設備を構築した「ドコモオープンイノベーションクラウド」上で稼働させ、日立の中央研究所内に開設した研究開発拠点「協創の森」の実証環境とドコモオープンイノベーションクラウドを5Gサービスで接続した。

　また、高い信頼性や安定性を確保するため、日立が開発した5Gハンドリングミドルウェアを用いて、パケットを複製してメイン回線のSA方式の5Gと、バックアップ回線のNSA（Non-Stand Alone）方式の5G双方で伝送し、二重化した。

実証実験の構成イメージ

　実証では、AR組み立てナビを稼働させ、前工程の作業完了を検知してから次工程の作業指示を投影するまでの応答時間を測定することで、アプリケーションが実用に耐えられるか検証した。具体的には、組み立て業務に支障を与えない応答時間として3秒以下を目標として設定したが、応答時間は目標値以下の1.5秒となり、実用に耐えられることが確認できたという。

　この結果は、4G LTEを使った評価の4.2秒に比べると2.7秒の応答時間の短縮となり、さらに複数の作業指示からなる工程全体では40％の生産性向上にあたると説明。また、5Gハンドリングミドルウェアを用いることで、SA方式の5G通信に遅延があった際も、バックアップ回線であるNSA方式の5G通信からデータが届くので、通信が途切れることなく、AR組み立てナビを安定稼働できることが確認できたとしている。

　日立とNTTドコモは、今後も連携し、今回の実証実験の成果も活用しながら、さまざまなアプリケーションを活用した実証を積み重ね、高信頼で安定したパブリック5G環境およびその環境を生かした効果的なユースケースの確立により、製造業や社会インフラ分野のDX実現を支援していくとしている。