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日本マイクロソフト、小売業および消費財製造業のDX支援策を解説

 日本マイクロソフト株式会社は16日、小売業および消費財製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する取り組みについて説明会を開催した。

 日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括本部長の山根伸行氏によると、ここ数年マイクロソフトでは、顧客との関係において、従来のベンダー対顧客といった関係を超え、中長期で戦略的パートナーシップを締結するケースが増えてきたという。

 「2018年のWalmartとの5年間におよぶ戦略的パートナーシップを皮切りに、特に小売業や消費財製造業においてこのようなパートナーシップを結ぶ事例が多く見られるようになった。海外が先行しているが、日本の顧客との提携も増えており、今後は世界に誇れるような戦略的事例を日本の顧客と構築していきたい」と山根氏は述べている。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括本部長 山根伸行氏

 DXを推進する企業の支援にあたり、マイクロソフトには次のような特徴があると山根氏は語る。それは、世界規模のインフラストラクチャーと各業界に対する深い知見があること、顧客データやセキュリティに対し明確にコミットしていること、そして、あくまでもプラットフォーマーとして顧客を支援する立場となり、顧客と競合する事業は行わないことだ。

 「こうしたマイクロソフトの方針が市場からも評価されている」と山根氏は主張。今後もデジタル化が加速する中で、小売業や消費財製造業への支援を強化するとしている。

DX支援におけるマイクロソフトの方針

小売業では「業界」と「企業」それぞれを支援

 小売業向けの取り組みについては、日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 流通業施策担当部長の藤井創一氏が説明、「小売業界という業界全体に向けた活動と、小売企業という企業向けの活動に取り組んでいる」とした。

 業界向けの活動としては、「小売業界のIT活用活性化に向け、小売業界団体のDX推進活動に参画しているほか、マイクロソフトがリーダーシップを取って国内のITベンダー約500社と協力し、店舗システムを中心としたIT国際標準仕様の策定にも取り組んでいる」という。

 また、今年3月に日本小売業協会が発行した「日本の小売業CEO、CIOへの提言書」というドキュメントの作成にも参加しており、藤井氏は「日本の小売業界がDXを強力に進めるタイミングが来ている」としている。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 流通業施策担当部長 藤井創一氏
小売業向けの取り組み

 企業向けの活動としては、「ここ数年『Enabling Intelligent Retail』をテーマに、インテリジェントなリテーラーを目指す企業にデジタルテクノロジーを提供し、顧客のビジネスの成功に寄与することを目指している」と藤井氏。具体的には、「顧客、従業員、サプライチェーン、新ビジネスという分野にフォーカスし、DX化に向けた支援を加速させたい」としている。

 マイクロソフトでは今年1月、小売業に特化したクラウド「Microsoft Cloud for Retail」のプレビューを発表していた。6月21日より開催される小売業界向けイベント「NRF Retail Converge 2021」では、同クラウド製品の最新情報が公開される予定だという。

小売業企業向け施策方針

 藤井氏は、小売業界における事例も一部紹介。海外では、Walgreensがビッグデータを活用して顧客の嗜好(しこう)を把握しているほか、IKEAがデジタルコラボレーションを推進して生産性を向上、ワークライフバランスと接客力の向上を実現しているという。日本でも、CCCマーケティングがクラウドで消費者のペルソナを分析して消費者とのつながりを強化するなど、さまざまな事例が登場しており、「これまで日本の小売業はアメリカより10年遅れているといわれていたが、最近では日本の小売業でもDX化が迅速に取り入れられ、グローバルに先行するような取り組みもある」としている。

 その一例が、株式会社三越伊勢丹だ。同社では、Azureをベースとした仮想都市プラットフォームを立ち上げ、仮想伊勢丹新宿店で買い物ができる空間を用意した。

 三越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタル事業運営部 計画推進 仮想都市プラットフォーム事業の仲田朝彦氏は、「何でもスマートに購入できるのではなく、あえてアナログ的なDXを実現している。アバターを使って友人や家族らとコミュニケーションしながらわざわざ店内に入り、歩き回って思わぬものに出会うといったアナログな体験をバーチャルでも楽しんでもらいたい」と語る。

三越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタル事業運営部 計画推進 仮想都市プラットフォーム事業 仲田朝彦氏

 また、イオン株式会社では、スーパーマーケット担当付チームリーダーの北村智宏氏が個人で始めたデジタル化の取り組みが、全社に広がったという。同氏はマイクロソフトの協力の下、デジタル勉強会などを企画していたが、「コロナ禍でそれまでの勉強会ができなくなり、自宅から無料でウェビナーや情報発信していたところ、グループ内でまたたく間に広まった。今年からは社内の正式な企画として進めている」と話す。

 「組織や役割に関係なく、やりたい人や気づいた人が始めるという手法は、デジタルと相性が良い。誰でも簡単に情報発信してつながることのできるDX時代では、今後新しい会社の動かし方が多数登場するだろう」(北村氏)。

イオン株式会社 スーパーマーケット担当付チームリーダー 北村智宏氏

消費財製造業向けには「顧客と伴走する」

 消費財製造業向けの施策については、日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 技術戦略責任者の越田陽一氏が解説。同業界のDXを支援することで、「消費者とブランドのつながりを強化し、アジャイルで持続的な製品ライフサイクルを実現するためオペレーションの最適化を進める。また、取引先との連携強化とイノベーションの加速も目指す」とし、「DXの着想からサービス開発までを支援する」としている。

 「顧客のDX推進に向け、IT部門への支援だけでなく、ビジネス部門へのアプローチも含め、マイクロソフトが共に伴走する」と越田氏。その中で、ビジネスモデルや働き方、文化も変革するという。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 技術戦略責任者 越田陽一氏
消費財製造業向けの施策

 この取り組みでは、マイクロソフト自身の成功体験であるデジタルフィードバックループも取り入れる。これは、「部門間をまたいださまざまなデータをひとつのデータプールに集約し、そこから気づきを得てアクションに移す。その結果をフィードバックし改善していくというコンセプトだ」と越田氏は説明する。

 グローバルでの事例として越田氏は、工場でデジタルツインを活用し、データから洞察を得ているUnileverや、生産性向上ツールで自己改革し、グローバルイノベーションで製品の市場投入リードタイムを短縮したL'Orealをなど紹介した。

 日本でも、株式会社資生堂のDX化を支援。同社がアクセンチュア株式会社と7月に設立する合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」における生産領域のモダン化や、顧客および従業員向けDXをサポートする。資生堂 執行役員 CITOの高野篤典氏はビデオメッセージにて、「マイクロソフトの持つ最先端テクノロジーや、スキルセットを備えたエンジニアが、世界各国どの国からも支援してくれる。マイクロソフトに伴走してもらいつつ、共に資生堂のデジタル戦略を実現したい」と述べた。

資生堂 執行役員 CITO 高野篤典氏