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SMBCグループ、日本総研、NEC、量子アニーリングの業務活用に向けた共同研究を実施

 株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)、日本電気株式会社(以下、NEC)の3社は22日、量子アニーリングの業務活用に向けた共同研究を実施していることを明らかにした。

 3社では、量子コンピューターはさまざまな方式のハードウェアやアルゴリズムの研究・開発が進展しており、ビジネス利用に向けた実証実験も活発に行われていると説明。中でも、主に組み合わせ最適化問題を解くために特化した量子コンピューターの実現方式である量子アニーリング方式は、技術的な実用化の目途が立ちつつあることもあり、金融をはじめ、製造・交通・化学など多くの産業における解析業務で、これまで膨大な変動要素のために解けなかった問題に対処できるようになるなど、大きなインパクトをもたらすことが期待されているとしている。

 SMBCグループ、日本総研、NECの3社は、2020年2月から共同で量子アニーリングの実用性検証を行っており、機械学習や組み合わせ最適問題への応用に関する成果を確認した。

 機械学習についての検証では、金融取引における正常/不正を識別するAIモデルを構築。こうしたモデル構築には、正常に取引が行われた学習データと、不正が行われた学習データが必要となるが、不正の事例は実際にはほとんど存在しないことから、不正が行われたデータは少量しか取得できないという課題がある。

 こうした課題に対して、量子アニーリングは規則性のない数値を生み出せるという特性を活用することで、統計的に確からしいデータ生成器を開発し、実在しないが確からしい学習データを機械的に生成可能であることを確認。検出できた不正取引の割合が3~6%向上した。

オーバーサンプリングのイメージ/不正検知の再現率の向上効果

 また、ストレステストについての検証も実施。SMBCグループの業務戦略策定に際しては、重要なリスクを織り込んだシナリオに基づいてストレステストを行い、資本の健全性を検証している。このシナリオに含まれる経済指標は数理モデルを活用したソフトウェアによって推計するが、専門家などの人的判断による推定も勘案しているため、推定した一部の指標とその他の関連指標が整合的になるように手作業で調整を行う必要があり、この作業に多くの時間が費やされるという課題がある。

 検証では、この調整を最適化問題として定式化し、量子アニーリングの手法を用いて解くことで、調整作業を効率化。その結果、実務で使用可能な精度の解を得るために必要な時間が、従来の方法に比べて約6分の1に短縮されることを確認した。

量子アニーリングによる調整イメージ

 3社では今回の技術的成果について、関連する学会・研究会への発表を行い、量子ソフトウェア開発の発展にも貢献していく予定。また、引き続き、機械学習への応用や金融資産の価格変動リスク予測など、量子コンピューターの業務活用に直結する重要性が高いテーマに取り組み、量子ソフトウェア開発と検証を通じて、さらなる顧客へのサービスの向上を目指すとしている。