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日立の2020年度上期連結業績は減収減益、年間見通しの営業利益は上方修正

 株式会社日立製作所(以下、日立)は28日、2020年度上期(2020年4~9月)連結業績を発表した。それによると、売上収益が前年同期比10.9%減の3兆7600億円、調整後営業利益は同39.2%減の1807億円、EBITは同32.9%増の3862億円、継続事業税引前利益は同33.0%増の3842億円、当期純利益は同32.5%増の2507億円、調整後営業利益率は4.8%となっている。

業績ハイライト

 日立の河村芳彦執行役専務CFOは、「ITセグメントが全体の業績をけん引した。また、モビリティセグメントにおけるビルシステム事業、ライフセグメントにおける計測分析システム事業が高い収益を確保。7月に取り込んだ日立ABBパワーグリッド事業も順調に成長しており、スマートグリッドやe-モビリティなどのデジタルおよび環境関連の受注が伸びている」とした。

日立の河村芳彦執行役専務CFO(中)
ITセグメントが全体の業績をけん引

 また、全体の業績が減収減益になった点については、「日立化成の売却や市況の悪化によるものであり、ライフセグメント、日立建機、日立金属を中心に減益になった」とする一方、「IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5セクターは増収であるほか、第2四半期の調整後営業利益は1224億円となった。第1四半期比で583億円の利益であったことに比較しても2倍以上に増加している。また、EBITDA、営業キャッシュフローなど、キャッシュ項目は大幅な改善になっている」などと総括している。

 なお、新型コロナウイルスの影響については、「半年を経過し、どこまでがコロナの影響なのかがわからなくなってきており、今回から数字を控えた」とした。

 さらにLumadaについては、「経営資源を集中しているLumadaソリューションは加速しており、特にITを中心としたLumadaコア事業は売上収益が9%増となっている。またLumada関連事業は、新型コロナウイルスの影響により減収となったが、事業拡大に向けた投資を継続していく」と話す。

 Lumadaの事業売上は前年同期比1.6%減の4890億円で、そのうちLumadaコア事業は同9.1%増の2990億円、Lumada関連事業が同14.8%減の1900億円となった。2020年度通期見通しは、Lumada全体で前年比6.1%増の1兆1000億円とし、うちLumadaコア事業が同11.3%増の6600億円、Lumada関連事業で同0.9%減の4400億円を見込んでいる。

Lumadaソリューションの展開を加速

 「Lumadaコア事業では、金融、公共、社会インフラ分野向けのデジタルソリューション事業が伸びている。一方で、Lumada関連事業では、鉄道事業で新型コロナの影響があったこと、日立建機では市況の悪化が影響している」としたが、「ITセグメントにおいて、いよいよ5Gとのコラボレーションが始まった。また、モビリティセグメントでは、コロナ禍において、タッチレスソリューションが注目を集めている」と説明。

 5Gでは、日立アメリカ社R&Dセンターと東京・国分寺の中央研究所に5Gネットワークを構築し、DXに向けた新たな5Gソリューションの創出を開始する。またタッチレスソリューションでは、建物内での非接触の移動や生活を実現するソリューションを展開。インダストリーセグメントでは、医薬品流通のアルフレッサなどとの協創によって、再生医療製品などをバリューチェーン全体での細胞・トレース情報として統合管理するプラットフォームを、国内で初めて構築したという。

 このほか、ガートナーのマジッククアドラントのIIoT(Industrial IoT)プラットフォームにおいて、Lumadaがリーダーの1社に選出されたことを示しながら、「ユースケースの多さ、展開のフレキシビリティが高く評価された」と述べた。

セグメント別の業績

 セグメント別業績では、ITの売上収益は、前年同期比5%減の9474億円、調整後営業利益は前年同期から10億円減の1080億円となった。

 ITセグメントでは、第2四半期実績で、調整後営業利益率は13.5%となっており、「ここ数年で最高のレベルに到達している。同業他社やIT専業企業と比べても、倍ぐらいの収益率を誇っている。上期でも11.4%となり、2桁台をコンスタントに計上している」と語った。

 また、「国内フロントビジネスは新型コロナの影響で売り上げが減少しているが、プロジェクトマネジメントをしっかり行うとともに、継続的なコスト削減などにより、増益となったことで、高い利益率につながっている。サービス&プラットフォームは、減収減益だが、構造改革の成果が出ている」と説明。さらに、「リモートやタッチレスといった新たなアプリケーション分野で受注が取れている」とした。

ITセグメントの概況

 エネルギーセクターの売上収益は前年同期比147%増の3988億円、調整後営業利益は前年同期から73億円減で70億円の赤字。インダストリーセクターの売上収益は前年同期比1%減の3625億円、調整後営業利益は前年同期から1億円増の139億円。モビリティセクターの売上収益は2%増の5387億円、調整後営業利益は12億円増の398億円。ライフの売上収益は前年同期比12%減の9308億円、調整後営業利益は前年同期から323億円減の273億円。その他部門の売上収益は前年同期比12%減の2086億円、調整後営業利益は前年同期から43億円減の75億円だった。

 上場子会社の業績は、日立建機の売上収益が前年同期比25%減の3609億円、調整後営業利益が前年同期から340億円減の104億円。日立金属は売上収益が前年同期比25%減の3408億円、調整後営業利益が前年同期から182億円減の123億円の赤字となった。

 なお、海外売上収益は1兆9264億円で、構成比は51%となった。「中国は前年同期比7%増となっており、すでに回復し、経済が回っている。北米や欧州、ASEAN・インドは、引き続き厳しい状況になっている」とした。

2020年度の連結業績見通しを修正

 一方、2020年度の連結業績見通しを修正した。売上収益は7月公表値に比べて600億円増となる前年比9.4%減の7兆9400億円。調整後営業利益は公表値から280億円増の前年比39.5%減の4000億円、EBITは公表値から200億円減の219.1%増の5860億円、継続事業税引前利益は280億円減の217.3%増の5720億円、当期純利益は公表値から350億円減の242.5%増の3000億円を見込む。

 河村執行役専務CFOは、「EBITでは、4023億円増の5860億円、EBITDAでは4339億円増の1兆530億円を見込んでいる。また、ITセグメント、インダストリーセグメント、モビリティセグメントは見通しを上方修正している」と述べた。

見通しハイライト