ニュース

日立の2019年度上期連結業績、ITは好調も上場子会社がいずれも減益に 通期業績見通しを下方修正

 株式会社日立製作所(以下、日立)は30日、2019年度上期(2019年4月~9月)連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比6.0%減の4兆2213億円、調整後営業利益は同13.8%増の2972億円、EBITは同17.5%減の2905億円、継続事業税引前利益は同18.1%減の2889億円、当期純利益は同1.9%減の1892億円となった。

2019年度上期(2019年4月~9月)連結業績

 日立 代表執行役執行役専務兼CFOの西山光秋氏は、「ITおよびインダストリーセグメントが増収となったが、事業売却影響があったライフセグメントに加えて、モビリティセグメントが減収。また半導体や自動車市場の悪化の影響を受けた日立金属、日立化成などが減収となった。本体の5つのセクターは為替の影響を吸収し、計画以上の業績であったが、上場子会社がいずれも減益になっている」と総括した。

日立 代表執行役執行役専務兼CFOの西山光秋氏

Lumadaの事業成長は着実に進んでいる

 なお、Lumada事業の売上収益は前年同期比12%増の5580億円となった。

 Lumadaコア事業の売上収益は同27%増の1660億円(通期見通しは3700億円)。Lumada SI事業の売上収益は同6%増の3920億円(同8000億円)となっている。

Lumada事業の進捗

 Lumadaに関しては、2020年1月に、日本ヴァンタラと日立コンサルティングを統合し、フロント機能およびデリバリー機能の中核として、グローバルでLumada事業をけん引する体制を強化するほか、エレベータの遠隔監視、保全サービスをアジアで提供を開始。住友ゴムおよびPTCジャパンと、AIやIoTを活用した高品質、高効率のタイや生産システムの構築に向けた協創を開始し、住友ゴムの世界12拠点に導入する予定などの成果を示した。

 このほか、人間中心のスマートシティ構築に向け、フレイザーズ・プロパティとアジア太平洋地域における街やビルのデジタル化での協創に合意したことや、日立ヴァンタラがディズニー・パークスとショーやアトラクションの運営効率化に向けた戦略提供を発表したこと、自動車向け安全システム事業の強化に向けたオランダChassis Brakes International(シャーシ・ブレーキ・インターナショナル)の買収を10月1日付けで完了したこと、さらには、10月30日に発表した日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業の経営統合も一例に挙げた。

 「ディズニー・パークスとの協創は、まずは設備のメンテナンスやアトラクションの稼働率向上を目指すが、毎年、数千万人が訪れるひとつのスマートシティのようなものであり、日立が持つソリューションポートフォリオを生かして、スマートシティ関連事業を拡大する狙いもある」とした。

 また、「Lumadaの事業成長は着実に進んでいると考えている。ソリューションを拡充し、これを横展開していくことで、N倍化させていくことになる。いまは、ITが中心だが、ほかのBUと組んで、Lumadaを適用することが大切である。鉄道分野などでも取り組みを加速している。さらに、国内が中心になっているものを海外でもN倍化していくことも大切だ。海外でも活用できるソリューションコアを拡充するとともに、デリバリーをきちっと行い、フロント人材の強化も必要である。社員のトレーニングのほか、提携、M&Aも強化策のひとつになる。日本ヴァンタラと日立コンサルティングとの統合もその手だてのひとつである」と位置づけた。

 国内売上収益は前年並の2兆1259億円、海外売上収益は12%減の2兆953億円。海外売上比率は50%となった。

事業部門別の業績

 事業部門別では、ITの売上収益は前年同期比2%増の9952億円、調整後営業利益は前年同期から108億円増の1091億円、EBITは同175億円増の1058億円となった。

 「システムインテグレーションが増加するとともに、国内でのストレージおよびPCサーバーの販売が増加した。第2四半期の営業利益率が11%となっており、これは過去最高になる」とした。

 しかし、デジタルソリューション事業拡大に向けた戦略投資の増加により、営業利益にマイナスの影響があったという。

 一方、エネルギーの売上収益は前年同期比9%減の1616億円、調整後営業利益は前年同期から51億円減の2億円。

ITとエネルギーの業績

 インダストリーの売上収益は前年同期比2%増の3667億円、調整後営業利益は前年同期から2億円増の138億円。モビリティの売上収益は前年同期比9%減の5299億円、調整後営業利益は前年同期から1億円増の386億円。

 ライフの売上収益は前年同期比12%減の7089億円、調整後営業利益は前年同期から103億円増の288億円。その他部門の売上高は前年同期比19%減の2363億円、調整後営業利益は前年同期から59億円減の118億円となった。

 上場子会社では、日立ハイテクノロジーズの売上収益は前年同期比5%減の3463億円、調整後営業利益は前年同期から48億円減の308億円。

インダストリーとモビリティの業績
ライフと日立ハイテクノロジーズの業績

 日立建機の売上収益は前年同期比2%減の4805億円、調整後営業利益は前年同期から83億円減の444億円。日立金属の売上収益は前年同期比12%減の4568億円、調整後営業利益は前年同期から271億円減の59億円。

 日立化成の売上収益は前年同期比8%減の3166億円、調整後営業利益は前年同期から79億円減の168億円となった。

日立建機、日立金属、日立化成の業績

通期業績見通しを下方修正

 なお同社では、2019年度の通期業績見通しを下方修正した。

 売上収益は前回見通しから3000億円減の前年比8%減の8兆7000億円、調整後営業利益は前回見通しから800億円減となる前年比9%減の6850億円、EBITは前回見通しから1450億円減とし、前年比17.1%増の6050億円、継続事業税引前利益は前回見通しから1470億円減、前年比14.8%増の5930億円、当期純利益は前回見通しから750億円減、前年比61.8%増の3600億円とした。

2019年度の通期業績見通し

 「下方修正の主要な要因は、為替と上場子会社の業績悪化である。半導体や自動車の事業環境を下期も継続するという前提であり、また為替レートを見直したことも反映した」という。

 ITについては、売上収益、調整後営業利益ともに据え置いた。為替レートの変更影響はあるものの、電力、交通などの社会インフラ分野を中心にIT投資が堅調に推移。計画通りにデジタルソリューション事業拡大に向けた戦略投資を推進することになるとしている。