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日立の2021年3月期連結業績は減収減益、ただし純利益は過去最高を達成

 株式会社日立製作所(以下、日立)は28日、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年比0.4%減の8兆7291億円、調整後営業利益は同25.2%減の4951億円、EBITは同363.1%増の8502億円、継続事業税引前利益は同368.4%増の8444億円、当期純利益は同472.6%増の5016億円、調整後営業利益率は13.2%となり、過去最高の当期純利益を達成した。

2021年3月期の業績ハイライト

 日立 執行役専務CFOの河村芳彦氏は、「2021年3月期は、新型コロナウイルスのパンデミックによる不透明な市場環境の中で、営業キャッシュフローに力点を置いて経営を進めてきた。この徹底したキャッシュフロー経営により、過去最高益となる5016億円を達成し、営業キャッシュフロー率も過去最高の9.1%となった。非常に厳しい経営環境ではあったが、引き続きITセグメントが好調で過去最高益となり、会社全体の業績をけん引した。さらに、日立ABBパワーグリッド、エレベーターを中心としたモビリティ、ホンダの3社を取り込んだ日立Astemoなどの大型事業が堅調に推移した。特に、日立ABBパワーグリッドでは、脱炭素社会に貢献するエネルギー・ソリューション事業を展開し、受注残高は約120億米ドルとなっている」と述べた。

日立 執行役専務CFOの河村芳彦氏(中央)

 事業ポートフォリオの改革については、「さらなる成長に向けて、2021年3月期も事業ポートフォリオを大きく入れ替え、日立化成と画像診断関連事業を売却した。今期は、日立金属の売却を予定している。一方、新たに日立ABBパワーグリッドと日立Astemoを設立し、今期には米GlobalLogicの買収を完了する予定。また、コスト構造改革も継続的に進めており、前年度比1200億円超の原価低減を実現している」とした。

 Lumada事業の売上収益は、前年比7%増の1兆1000億円。うちLumadaコア事業が6720億円、関連事業が4380億円となった。

 「2021年3月期は、Lumadaコア事業が拡大をけん引した。主な取り組みとしては、米GlobalLogicの買収を決定し、5セクター(IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフ)および日立Astemoとのシナジー創出などでLumadaの世界展開を加速する。また、『Lumada Innovation Hub Tokyo』を開設。多様なステークホルダーとバーチャルでつなぎ、アフターコロナ時代の新たなイノベーション創生を活性化する。このほかエネルギーセクターでは、スマートデジタル変電所ソリューションを提供。インダストリーセクターでは、ワークマンとの協創を実施する。日立Astemoでは、自動運転レベル3を実現したホンダの新型レジェンドにオートマティックドライブのエンジンコントロールユニットとOTA(Over the Air)ユニットを納入した」と説明した。

Lumada事業の概況

セグメント別業績

 セグメント別業績では、ITセクターの売上収益は、前年比2%減の9兆487億円、調整後営業利益は前年同期から200億円増の2694億円となった。北米やインドなどにおいて、新型コロナウイルスの影響による減収の中、デジタルトランスフォーメーション(DX)需要への早期対応とコスト・コントロールの徹底により、過去最高益を達成した。

ITセクターの概況

 エネルギーセクターの売上収益は前年比178%増の1兆1079億円、調整後営業利益は前年から612億円減で477億円の赤字。インダストリーセクターの売上収益は前年比1%減の8301億円、調整後営業利益は前年から91億円減の455億円。モビリティセクターの売上収益は前年比5%増の1兆1996億円、調整後営業利益は前年から175億円減の747億円。ライフセクターの売上収益は前年比3%増の2兆2403億円、調整後営業利益は前年同期から48億円減の1141億円。その他部門の売上収益は前年比7%減の4490億円、調整後営業利益が前年から11億円減の212億円だった。

 上場子会社の業績は、日立建機の売上収益が前年比13%減の8133億円、調整後営業利益が前年から439億円減の316億円。日立金属は売上収益が前年比14%減の7616億円、調整後営業利益が前年から193億円減で49億円の赤字となった。

 海外売上収益は4兆5743億円で、構成比は52%となっている。「日本とASEAN・インドが厳しい状況となっている一方で、中国は前年比20%増と大きく回復した。米国は横ばい、欧州は同10%増となっている」とした。

 なお、2022年3月期の連結業績予想は、売上収益が前年比8.8%増の9兆5000億円、調整後営業利益は同49.4%増の7400億円、EBITは同3.6%減の8200億円、継続事業税引前利益は同5.3%減の8000億円、当期純利益は同9.6%増の5500億円を見込んでいる。

2022年3月期の見通しハイライト