ニュース

十勝農協連と富士通、AIを活用した病害虫診断システムを構築へ

 十勝農業協同組合連合会(以下、十勝農協連)と富士通株式会社は12日、生産者がスマートフォンで撮影した甜菜(てんさい)の写真をもとにAIが病害虫を特定し、十勝農協連が病害虫および農薬の散布方法などの情報を生産者に提示する病害虫診断システムの構築に4月より着手し、2021年度からシステムの運用を開始すると発表した。

 同システムでは、病害虫を判別するAI学習モデルを、十勝農協連が収集した病害虫の画像データをもとに富士通が開発し、甜菜に発生する褐斑病(かっぱんびょう)およびヨトウムシの特定を実現する。

 北海道十勝地域は、一経営体あたりの経営耕地面積が約41.6haと、全国平均の約23倍の規模を誇る一方で、農業従事者の減少や高齢化問題がより深刻な状況で、経営の効率化や競争力強化が急務となっているという。その対策として、十勝農協連は富士通と連携し、病害虫診断システムの構築に着手する。

 システム構築に先立ち、一般社団法人農林水産業みらい基金(以下、みらい基金)の助成を受け、2019年に両者が実施した実証実験では、病害虫を特定するAI学習モデルの平均適合率90%以上を達成したという。

AI病害虫診断システムイメージ

 システムでは、生産者がスマートフォンで撮影した甜菜の画像データをもとに、AIが甜菜に発生する確率が高い褐斑病とヨトウムシを特定。病害虫の発生状況を集約し、発生場所、発生日時を俯瞰的に把握することで、十勝全域で効果的な農薬散布を可能とする。

 また、十勝農協連の営農技術情報と病害虫情報をひも付けて、散布するべき農薬と散布方法を生産者に提示することで、生産者における作業負荷の軽減や農薬などのコスト削減および競争力強化を支援する。十勝全体で散布回数を1回分減らすことにより、年間約1億円のコスト削減が見込めると試算されている。

 十勝農協連は、畑などで特定対象の病害虫である褐斑病やヨトウムシ、類似した病害虫である斑点細菌病やシロモンヤガ、シロシタヨトウなどの病害虫の写真を撮影し、画像データを収集。富士通は、画像データを教師データとし、病害虫を判別するディープラーニングによる学習済みAIモデルを構築。AIモデルのチューニングを行い、平均適合率の向上を行う。