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日本の中堅企業を5つの施策で支援――、デルテクノロジーズが事業方針を説明

 デルテクノロジーズ(デル株式会社、EMCジャパン株式会社)は、従業員100人~1000人未満の中堅企業向けビジネスを加速している。それに向け、同社2021年度の事業方針を打ち出した。

 中堅企業向けビジネスの担当者を大幅に増員するほか、これまで手薄だった地方都市での展開を加速し、全国のパートナー企業との連携を強化するという。また、「共有」「学習」「育成」「実践」「支援」という5つの観点から、中堅企業のデジタル化を支援する考えを示した。これらの取り組みにおいては、新たに奈良先端科学技術大学院大学との連携も図る。

5つの支援策

 デル 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏は、「2020年は、中堅企業がデジタル化元年を迎える。一方でデルテクノロジーズにとって、中堅企業向けビジネスは屋台骨。中堅企業がデジタル化を進める上での障壁や課題を解決することで、中堅企業向けビジネスを成長させたい」と意気込む。

 あわせて、Windows 7の延長サポートが終了した現時点でも、すべてのPCを移行または入れ替え済みとした企業は26.5%と、4分の1強にとどまっていることを指摘。これらの企業に対する、Windows 10搭載PCの導入提案を継続的に進める。

デル 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏

中堅企業向けビジネスが2年間で約2倍に拡大

 デルの日本国内における中堅企業向けビジネスは、この2年間で約2倍に拡大しており、2020年2月から始まった同社新年度においても、高い成長を目指す考えだ。

 同社によると、デジタル化への投資が「増加傾向」「増加計画あり」とする中堅企業は48.8%と、約半数を占めている一方で、「他社と比べてある程度進んでいる」「かなり進んでいる」としている企業は20.0%にとどまり、デジタル化への遅れに対し危機感を持っている企業が多いことがわかった。

 こうした動きをとらえて同社では、2020年を中堅企業における「デジタル化元年」と定義。中堅企業のデジタル化を支援する姿勢を打ち出した。

 デル 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏は、「デジタル化に着手したいと考えている中堅企業が大幅に増加しているものの、なにから始めればいいのかわからない、技術を学んだり技術を実装したりする人材やスキルが足りない、従来型IT資産の運用に時間が取られてしまう、といった課題がある」という点を指摘。

 「また、新たなビジネスモデルで新たな価値を生み出すデジタルトランスフォーメーション(DX)にはなかなか着手できていないのが現状。むしろ、現場においては、従来のビジネスモデルを効率化および高度化することで、新たな価値を生み出す実務的なビジネスモデルが求められている。デルテクノロジーズでは、こうした中堅企業の実態をとらえた施策を展開することで、中堅企業のデジタル化を支援していくことになる」とする。

 また、デル 広域営業統括本部 デジタルセールス本部長の木村佳博氏は、「中堅企業におけるデジタル化では、DX人材の不足に加え、投資対効果が見えづらく予算化が難しいこと、ソリューションの多くが大規模であるため高価であり、スモールスタートができないといった課題がある。ライブラリーやパーツを組み合わせ、容易に構築できる提案を行ったり、デル自らがDXを実践した事例を紹介したりすることも大切だと考えている」と述べた。

デル 広域営業統括本部 デジタルセールス本部長の木村佳博氏

デル自らの成果を“共有”する

 デルが2020年2月からの同社新年度において打ち出した、中堅企業向けの具体的な施策は、前述の通り「共有」「学習」「育成」「実践」「支援」といった5つの支援策で構成される。

中堅企業デジタル化元年に向けたエコシステム

 このうち「共有」では、「中堅企業DX分科会」を新設して、AIやディープラーニング、IoT、音声マイニング、ブロックチェーンといった技術ごとにテーマを設定して活動を実施。中堅企業同士がDXに関する情報交換を行えるようにする。

 ここでは、デルの広域営業統括本部で実施しているデジタルセールスの仕組みを、中堅企業に対して事例として紹介。マーケティング活動と営業活動を連動させたり、営業活動をデジタルによって視覚化したりするとともに、セールストークの音声データの分析によって、リアルタイムに営業活動のフォローアップを行っている成果などを公開する。

 ヘルプデスクにおいては、かかってきた電話の内容をリアルタイムにテキスト変換し。AIを活用して質問の意図を判断し、データベースから解決策を検索した上で、音声化して解決策を読み上げるといったことも行っているという。

 さらに、東京・三田および大阪・堂島の同社オフィスを活用して、PCやサーバーなどの実機に触れるとともに、専任担当者から説明を行うことで、製品やサービスへの理解を深める「オープンオフィス・ソリューションディ」、オンラインを活用した技術セッションの動画配信や、オンラインサロンを通じたエンジニアによるQ&A、ホワイトペーパー調査レポートによる情報発信などを行う「バーチャルオープンオフィス」を用意する。

 「ROIの最適化、働き方改革の提案や、社内プロセスの標準化、サイバーセキュリティの見直しなど、実務的な支援を行う」(デルの木村本部長)としている。

中堅企業DX分科会

NAISTと連携し学習の場を提供、エンジニアの育成にも力を入れる

 また「学習」では、VMwareエンジニアによる「VMware技術勉強会」に加えて、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)との連携により、AI、ブロックチェーン、IoTなど、DX関連技術の概要や活用方法などを学習できる場を提供する。

 ここでは、「DX Tech Play」と呼ぶ学習プログラムを6月からスタート。「最新の技術を研究するNAISTの研究員を講師に迎え、DX関連技術を学ぶことができる。座学だけでなく、ハンズオンを交えながら学べる」とする。

 具体的には、AIの動きを体感できる「人工知能-AIハンズオン予測モデル構築実践」、どのような社会問題の解決にブロックチェーンが有効なのかを学べる「ブロックチェーン 書き換え不可能な記録によって、社会はどう変化するか」、IoT技術が働き方をどう変えるのかについて理解できる「IoTで変わる働き方 スマートオフィスの現在と未来」といったテーマで実施する予定だ。

VMware技術勉強会
DX Tech Play

 3つ目の「育成」では、「中堅企業 DXエンジニア養成講座」を6月から開催し、Pythonを活用してAIやディープラーニングの実装ができるエンジニアの育成を行う。同講座もNAISTと連携して実施。「自社内でDX関連技術を習得して実装の内製化を目指す、IT担当者や事業部門の人たちが対象となる。全8回で講座を実施し、プログラミング未経験者でもディープラーニング活用に向けた演習を行うところまで育てる」という。

中堅企業 DXエンジニア養成講座

 「実践」においては、中堅企業のDX支援に特化した総合プログラムとして、「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」を実施。中堅企業のDXにかかわる技術の実装、定着化を支援する。

 同プログラムは、プロジェクト開始から1年程度で実装可能なビジネスプランを対象に行うコンテストで、AI、IoT、ブロックチェーンの各カテゴリーの上位入賞者に対して、NAISTの研究員がメンターとして支援。カゴヤ・ジャパンのAI開発向けGPUサーバーや、ミライコミュニケーションネットワークのクラウドサーバーをそれぞれ1年間無償提供する特典が用意されている。4月30日がプログラム参加への提出期限となっており、6月3日に本選が行われる。

中堅企業DXアクセラレーションプログラム

 最後の「支援」では、デジタル化支援パッケージとして、「Windows 10導入・移行支援」「インフラ運用支援」「情報系インフラ導入支援」「クライアント仮想化・移行支援」「サーバー仮想化統合移行支援」「ストレージ統合・データ保護支援」「オフィスネットワーク最適化」「業務ヘルプデスク支援」「DX導入支援」の9つの支援策を提供。構築/保守運用業務の外部活用における課題に対応し、中堅企業のデジタル化のスモールスタートを支援するという。

 ここでは、全国や広域、関東、東海、関西、九州といった6つのエリアで、23社のパートナー企業と協業して、デジタル化支援パッケージを提供することになる。

9つの支援策を提供
デジタル化支援ソリューションの提供パートナー

中堅企業の経営者にIT投資の必要性を訴求する必要あり

 一方、デルの瀧谷上席執行役員は、「デルの中堅企業向けビジネスは、前年比50%増という高い成長を遂げたが、これはWindows 7から移行による特需だけに支えられたものではない」と説明。

 最も高い成長を遂げているのはバックアップアプライアンスで、前年比約2.5倍となっており、続いて、Windows 7からの買い換え需要が見られたPCで前年比2倍、HCIが前年比1.5倍となっていることを示した。

 また、すべてのPCをWindows 7から移行または入れ替え済みとした企業は26.5%と、4分の1強にとどまっていることに触れながら、Windows 7からの移行の投資が続くこと、ここにも引き続きビジネスチャンスがあることを指摘した。

 同社は、従業員100人~1000人未満の企業を中堅企業と定義しており、そうした企業は、国内には4万2935社があるという。そのうち73.4%にあたる3万1500社とすでに取引があるとのこと。

 デルの瀧谷上席執行役員は、「IT投資に対して消極的な中堅企業の経営者に対して、IT投資の必要性を訴求しなくてはならない。中堅企業のデジタル化元年を迎えるなかで、それを加速するために、日本の中堅企業向け市場に対して、継続的な投資を行っていく」と述べた。

 なお、米Dell Technologiesが発表した2020年1月期の業績では、中堅企業向けビジネスが全世界で2けた増となっていることに触れている。